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第109話 勇者のパレード


 俺たちは目も眩むような魔法都市の道を行った。



 プップー!……プー!……ガヤガヤ、ガヤガヤ……



 ザハルベルトの街には6階だてや7階だてのビルが密林ジャングルのように林立している。


 大通りには多くの馬車や魔動車がガンガン走り、あちらにはよく絵ハガキなんかにもなっている『マジカル・スクエアガーデン』が見えた。


 見るモノ、聞くモノ、すべてがスタイリッシュに感じられ、『世界の中心にいる感』で腹の底がふわふわしてくる。


「わぁー! すげーな! すげーな!……」


「旦那ぁ、あんまりキョロキョロしないでくださいッスよー」


 隣のガルシアがため息をついた。


「田舎者だと思われるじゃないッスかー」


「いなか……」


 俺はほっぺたから火を吹くのを感じる。


「べ、別にちょっとくらい高い建物がたくさんだからってウキウキなんてしてないんだからな!」


 勘違いしないでよね!


「それに田舎者でなにが悪い。田舎者には田舎者の矜持きょうじってもんがあらぁ。ねえ、五十嵐さん。……五十嵐さん?」


 気づくと五十嵐さんの姿がない。


 辺りを見渡すと……あっ、いた。


 交差点のところで3人の男たちに話しかけられている。


「ねーキミ。すげー綺麗な髪だねー。超サラサラ」


「はっはっは、そんなににらまなくていいじゃん。オレら怪しいもんじゃねーから」


「そうそう。ちょっと2、3時間、楽しいことするだけ」


 つーか、ナンパじゃねーか。


 五十嵐さんは、何故こんなふうに知らない人から話しかけられているのか意味がわからないようで、鋭い目でにらみつつ頭上に??を浮かべていた。


「おーい! すいませーん!」


 俺はあわてて交差点の方へ走っていく。


「ぁあ? なんだテメー」


「いや、彼女うちのかみさんなんですけど、コイツがなにか失礼でもしましたか?」


 ウソも方便、そう言ってみせるとナンパ師たちは「ちぇ、旦那かよ」「オレは人妻の方が燃えるけどな」などと吐き捨てて去っていった。


 やれやれ。


「ダメだぞ五十嵐さん。知らない人に話かけられていちいち答えてちゃ」


「?」


「……田舎者だと思われるだろ」


 そう小声で言うと女秘書は鋭い目つきをハッと見開き、白いほおをポッと赤く染めた。


「田舎者の矜持きょうじはどこ行ったんス?」


「……るせーよ」



 さて、そんなこともありつつドタバタと歩いて行ったのだが、ふと、大通りなのに車も馬車も通らないが、どこまでも人であふれている不思議な道に行き着いた。


「おお? なんだこれ!?」


「パレードがあるみたいっスね。ザハルベルトは国民の『冒険』に対する関心も高いんで、人気パーティが魔王を倒したりすると凱旋パレードが開かれるんスよ♪」


 うん、それは知識としては知っていた。


 しかし聞くのと見るのとでは大違い。


 交通規制で道の真ん中はガランとしているが、そのぶん道の両サイドはお祭りのように人でごったがえしている。


 その混み合いが、ずっとずっと向こうの道まで続いているのだ。


 まるで世界中の人をすべてここに集めたみたいだった。



 ガヤガヤガヤ……



「……すごい人ですね」


「五十嵐さん。騙されちゃいけない。これはみんなエキストラだから」


「エキストラ?」


「雇われてここにいるってことだよ」


「……なぜそのようなことをするのですか?」


「決まってるだろ。ザハルベルトを都会に見せるためさ」


「っ! なるほど……さすがエイガ様です」


「旦那ぁ。五十嵐さんにテキトーなこと吹き込まないでくださいッス」


 などと話していると、むこうからパレードの馬車がやってきた。


 ドッとわき起こる歓声。


 人々の多くは小さなザハルベルトの旗を持ち、思い思いに旗を振ったり、万歳をしたりしている。


 ずいぶん人気があるんだな。


 どんなパーティなんだろう?


 そう思いつつ、次第に近づいてくるそのパレード馬車に乗っていたのは……


「クロス?」


 そう。まぎれもない。


 パレードの主役は、奇跡の5人だったのである。


 アイツらは馬車のオープンカーの上で、先頭にクロス、次にデリー、エマ、モリエ、ティアナと並び、それぞれ剣を蒼天へ掲げていたり、ただ黙って遠くを見つめていたり、大衆をあざけるように鼻で笑っていたり、可愛らしく手を振っていたり、眼鏡を正しながらツンっと胸をそむけたりなどしていた。



 ピューピュー……ドンドン!


 ワー! ワー!



 つーか活気がヤベー。


 すげー人気だ。


 特にデリーとモリエへの歓声は熱量が違った。


「な……なあ、おじさん」


 俺は近くで「モリエちゃーん!」と叫んでいたオッサンに声をかけてみる。


「奇跡の5人は多忙で調子を崩していたんじゃないのか?」


「ぁあ? ははーん、さてはあんた、田舎者だな?」


 ギクッ……!?


「勇者パーティは見事『2年目のジンクス』を克服して結束したんだ。そうなりゃ彼らに敵はいねえ。すぐさま第4魔王パニコスを倒してきちまったもんだからこうして凱旋パレードが催されたってわけよ。ザハルベルトの冒険者ファンならもうみんな知ってるぜ」


「そうか……」


 パレード馬車は次第にこちらに近寄り、辺りの旗もますます勢いづく。


 まぶしい……


 黒塗りに金銀の縁取ふちどりのされた馬車は光を盛んに照り返し、太陽の黄金おうごんすら勇者の栄光をたたえているかのようであった。


 ……なんつーかさ。


 俺は領地を強くして、自分自身も限界と思っていたラインを超えて、やっとS級にまで昇格してアイツと対等になれたと思ったんだけどな。


 当たり前だけど、俺が俺の努力をしている間、アイツはアイツの努力をしていたのだ。


 追いついたと思っても、ほら、もう遥か先に行っている。


 でもそれは……


 全然(いや)なことじゃなかった。


 アイツらがすでにずっと先に行っているのなら、また追いかければいい。



「よし、もう行こうぜ」


「え? クロスさんたちのパレード、最後まで見ていかないんスか?」


「ああ。俺たちは俺たちでやることやらねーとな」


「……はい」


「そっスね!」


 こうして俺たちはパレードの人混みを離れ……


 まずは【冒険者ギルド本部】へ向かった。




お読みいただきありがとうございます。

次回もお楽しみに!




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― 新着の感想 ―
[良い点] 特になし [気になる点] 内容が薄い [一言] もっと密度の濃い物語を描いて欲しい
[気になる点] なんというか、登場人物が『ワザとやってんの?』って位どっちつかずな台詞や態度しか残さない状態でストレスが溜まって物語に集中出来なくなってきた。 物語上、一途?な主人公の敵を増やしてヒ…
[一言] 多分この回は袂を解った親友でライバルもまた大きくなっていたと感慨深くなる場面なんだと思う でも全然そんな風に思えない ここまでクロスに何度も上っ面のカタログスペックだけの薄っぺらい奴だという…
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