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第94話 艦(4)


 ゴーゴーゴー……!


 艦のスピードは通常航行で帆船はんせんの数倍あった。


 今回はサポートの帆船はんせんを一隻だけロープに繋ぎ、これを牽引けんいんして進んでいるのだが、魔鉱石の魔力エネルギーで回る魔動スクリューの動力はそれをものともしない。


「領主さま。ベアリング湾が見えて来ました」


 と、ナオ。


 今回のクエストはベアリング湾という海である。


 その湾口で俺は、牽引けんいんしてきたサポートの帆船はんせんからロープを離すよう命じる。


 帆船はんせんはモンスターと戦うようにはできていないからな。


 それでも牽引けんいんしてきたのは、大臣からいただいた『撮影機』を乗せていたからである。


 そう。


 あれから撮影機をいじってみると、これはなかなか素晴らしいモノだと理解できてきたのだ。


 素晴らしいというのは、育成においてな。


 つまり、戦闘領域の外に帆船はんせんを配し、そこから撮影して、その映像を後からみんなで振り返ってミーティング……という育成プランを考えていたのだった。


 戦闘の後でその客観的な映像を見られるだなんて、(俺の【憑依】も夢の育成スキルだと自負しているけれど、)こりゃまた最高の育成環境だな。


 うっふっふ……。


「これでよし。進むぞ」


 帆船はんせんに撮影機と撮影隊を配置すると、身軽になった艦でいよいよ湾へ侵入する。


「先生! 前方にモンスターが……47匹です!!」


 目の良い杏子きょうこが通常モンスターの来襲を報告してくる。


 指さす空を凝視していると、やがて俺の目にも見えてくる。


 鳥獣アルゲンタヴィスの群れだ。


 海上の空を俺たちめがけて滑降してくる。


「機銃で応戦だ!」


 そう命じると、魔法使いが弾へ魔力を込め、射手が機銃で鳥獣を狙い打つ。


 ピシュン! ピシュン! ピシュン!……ボボボボ、ボボン!


 機銃と言えど、それはトルド戦と同じく融合石の弾なので、レベル4級の火力を持っている。


 射手は艦へ迫りくる鳥獣アルゲンタヴィスを次々と撃ち墜とし、これをくぐり抜けてきたものはデッキで前衛剣士たちが剣や槍で応戦した。


 ギャーギャー!!……


 間近で見るとデカく、重量感のある鳥である。


 身長だけでも人と同じほどあり、翼を広げればぎょっとするほどのデカさを誇る鳥獣。


 前衛部隊がなんとか倒しているが、決して弱くなく、かなり厄介なモンスターだ。


 シーサーペントがあらわれる前になるべく全滅させておきたいと思うが、その時。



 ざっぷーん!! ざざざざざざ……



 青い海に黒い影が映ったかと思えば、巨大な蛇型の竜が、潮と共に海面へ姿をあらわした。


「なっ……」


「で、でた……!」


「……うう」


 経験を積み、近頃は敵を見て怯えるということも少なくなった領民部隊ではあったが、さすがシーサーペントの(まが)(まが)しい巨躯には後ずさる者もあった。


「ひるむな! 攻撃だ!!」


 そう命じると、射手がシーサーペントへ機銃を向ける。


 しかし、さすがにタフで、ヤツにはレベル4級の火力では大したダメージにならないようだ。


「領主さま。どうしましょう……」


 ナオが次の命令を仰ぐ。


「うん……ちょっと待て」


 艦の攻撃能力は、機銃のほかにあと2つある。


 一つは主砲。


 主砲は、融合石で5つの魔法を融合させた魔法を、さらに5つ融合させて放つ大技だ。


 開発者のリヴ自身『実際に使ってみなければその威力は計り知れないね』と言っていたほどの秘密兵器である。


 しかし、その弾はまだ一発しか作られておらず、しかも魔力の『タメ』で発射まで8秒のタイムラグがあるから、当てるのが難しい。


 そうやすやすと打てないのである。



 一方、攻撃能力のもうひとつはラムだ。


 船の先端に巨大な刃のような尖がりがあり、サイのように体当たりする武器である。


 リヴが言うには『シンプルだけど艦の馬力と突進力を利用した超強力な物理攻撃だよ。並の剣士の突きの、何万倍もの攻撃力になるだろうさ』とのこと。


 なるほど。


 そりゃこの艦の重さとスピードで尖ったラムを突き上げれば、すさまじい物理力になるだろう。


「よし、まずはラムで突撃してみよう」


「はい!」


 ナオはそう言うと各所に配置された支援系魔導士へトランシーバーで指示を送る。


 ほぼ同時にシーサーペントがこちらへ向かってくるが、艦もスピードを上げて向かっていった。


 それでヤツも面食らったようだった。


 ゴゴゴゴゴゴ……


 キシャー!!


 シーサーペントのどてっぱらに艦のラムが突き刺さる!


 硬い皮膚を突き破り、青い血が噴き出る。


「よっしゃ!……うおっ」


 攻撃は成功し、敵はダメージを負ったようだが、同時にシーサーペントの尾が艦のデッキをいだ。


「ぎゃー!!」


「うわー、痛ええ!!」


 デッキの上の数十名が大ダメージを負う。


 鍛えている部隊だけあって致命傷はないようだが、このままだとマズイ。


「か、回復班は回復! 機銃で牽制けんせいしながらいったん距離を取れ!」


 そう叫ぶと、艦は敵を通り過ぎて行き、半海里ほどの距離が開いた。



 キシャアアアア!!



 敵はえているが、追って来ない。


 あちらもラムでの攻撃が相当効いたのだろう。


 それでも致命傷にはまだまだ。


 今のを何回も喰らわせれば倒せるかもしれんけど、ヤツとの接近戦を繰り返せばこちらのダメージも大きいってこともわかった。


 やはり、なんとか主砲を喰らわせたいところだけれど……


「よし、それじゃあラム突撃との合わせ技で、確実に主砲を当てよう」


「合わせ技ですか?」


「ああ。距離を詰めるぞ。突撃だ」


 そう命じると、艦は再びシーサーペントへ向かってスピードを上げた。


 ゴゴゴゴゴゴ……


 艦内に緊張が走る。


 みんな先ほどのダメージを覚えているからだ。


 しかし、艦はぐんぐんシーサーペントとの距離を詰める。


 で、ある程度の距離まで詰まると、


「よし、主砲、準備だ!」


 と指示をした。


 主砲は5つの魔法を融合させた融合魔法を5つ同時に込める。


 だから、5×5で25名の攻撃系魔法使いが一斉に同じ魔法を使えなければならない。


 今回は融合しやすいように、属性を帯びない魔法エネルギー砲でそろえる。



 キュイーン……



 融合魔法が5つ照射され、ひときわ大きい主砲の砲弾へと魔力が集まっていく。


「8、7……」


 と射手がカウントダウンを始めた。


 融合魔法をさらに融合させるという超ヤバイ魔法操作には『タメ』の時間がかかり、さらにタメが済むと即魔力エネルギーが放出されるというキツイ制限がある。


 つまり、このカウントが0の時にちょうど砲口を敵へ向けていなければならないのだ。


 ゴゴゴゴゴ……


 で、それと同時に敵との距離も詰まる。


 うん。


 シーサーペントはラムでの突撃を警戒しているのだろう。


 海上で身をよじり、わずかにとぐろを巻いて、今度こそ当たり負けしないようにと力を入れている。


「6、5、4……」


 ドカーン! ガクン、ガクン!!


 そこで艦のラムが敵の首にぶち当たった。


 今度は身構えていたシーサーペントの体躯を貫くことはできず、艦は岩場へ衝突したように揺れる。


 さらにはシーサーペントの尾が、先ほどのようにデッキに襲いかかった。


「ぎゃー!!」


「わー!」


 二度目なので避ける者もあったが、またダメージを喰らった者もいる。


 しかし、これ以上にないほど接近している甲斐もあって、主砲の砲口は確実に敵を捉えていた。


「3、2、1……」


 キシャ?……



 キュイイイイイイイイイイイイイン……シュパアアアアアアアアン!!!!!



 瞬間。


 主砲から稲妻にも劣らぬ閃光がほとばしり、女神がくがごとき轟音ごうおんが蒼天へ反響する。


「は……????」


 断末魔もなく一瞬で消滅したシーサーペント。


 その後ろで、主砲の超エネルギーが海を二つに割り、はるか水平線を超え、青空のかなたへ昇ってきらめくのが見えた。





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― 新着の感想 ―
[一言] 巨大戦艦の比率は、『全長:全高:全幅=30:5:3』ですよ。 主砲は前後に四門、副砲は前後に二門、が大戦末期の考え方でした。
[一言]  5×3とか5×2とかも作成、使用してみて使い勝手の良い威力を見定めていくしかないですね。  
[一言] こりゃここ一番でしか使えないなw 船が多いときは使えなさそうだ
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