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第90話 経験値を送れ(4)


「これが溶鉱炉ようこうろさ」


 と、リヴは煉瓦レンガ造りの細長い施設を見上げて言った。


 溶鉱炉。


 まず、この煙突のような口の上から鉄鉱石と木炭、石灰岩を入れる。


 次に、下部にレア魔石・赤玉を配した炉で【魔鉱石】の魔力エネルギーを放出させる。


 横からレア魔石・青玉で風を入れて温度を高めるのもおなじみ。


 これは今までの鍛冶工房のかまやゴーレムを倒す要領と基本的には同じだ。


 だけど、この【溶鉱炉】では魔鉱石の魔力放出の調節によって、ケタ違いの到達温度を実現できるのだと。


 その炉内の高温で鉄鉱石と木炭などが反応し、ドロドロに溶けた銑鉄せんてつが出来上がるというワケ。


「なるほどな。ヘンテコな形だから一体なんだと思ったよ」


「ヘンテコってこたぁないだろ」


 と、おっぱいをぷりぷりいからせて言う女鍛冶。


「ごめんごめん、カッコイイよな」


「へへっ、わかりゃいいのさ」


 褒めるとリヴはすぐにご機嫌になった。


 相変わらず竹を割ったような性格の女である。



 さらに聞けば、単に温度をあげるだけならば、(炉中の魔力量を増やせばいいだけなので)これまでもできたのだそうだ。


 しかし、この溶鉱炉で新たに取り入れられたのは、非常な高温にも耐えうる『耐火煉瓦(レンガ)』なのだった。


 そう。


 温度をあげることができても、施設がそれに耐えられなければ意味がないからな。


 で、その耐火煉瓦(レンガ)は、アキラの地質調査で領内の粘土や長石の分布をあきらかにしていたからこそ実現できたモノらしい。


 データを持っている吉岡将平と大工の棟梁が相談しながら作ったんだってさ。


「順調みたいだな」


「でもね……。ちょいと問題もあるんだよ」


 と、頭をかくリヴ。


「技術者たちが艦の細かな設計をしてくれてんだけど、その造営過程でもかなりの融合石が必要になってきそうなんだ」


「そりゃまたどういう?」


「うん。鉄の艦を造るにはボディの部分部分を別で形成して、後からドックでそれぞれを『溶接』していく必要があるんだよ」


 溶接……。


 鉄の部品と部品をくっつけるために瞬間的な高温で接合部を溶かす技術。


 大きな船体をいっぺんに鉄で型どることはできないので、この技術が必要なのだと言う。


 で、そのために必要な()()()な温度が、レベル4魔法【ドキラドン】級でなければならないというのである。


「なるほどな」


「アンタには負担をかけるけどねえ……」


「ふふっ、お互いさまだろ。任しとけって」


 そう言って俺は女鍛冶と腕をガシっとぶつけ合った。



 その後。


 一太郎くんへ付けておいたレシーバーを誰へ付け替えるか少し悩む。


 鍛冶系の育成も重要だけど、さしあたってまだまだ施設を作る必要があるみたいだ。


 それにドックの方も造営していってもらわなければならない。


 しばらくは『建設系』の育成を重視すべきだろう。


 という事で、レシーバーの浮動枠は大工の棟梁のところの若衆へ付け替えておいた。



 ヒヒーン!……


 さて、これだけ済ますと俺はすぐにトンボ帰りだ。


 再び黒王丸で飛んで、ラムーの町へ戻る。


 そして精鋭部隊を率い、片翼の塔で経験値ためを再開するというワケ。


 経験値を獲得し、領地へ転送し、融合石を集める。


 で、しばらくすると領地へ飛んで行ってレシーバーの付け替え。



 塔でゴーレム狩り→領地でレシーバー付け替え→塔でゴーレム狩り……



 これの繰り返しである。


 今のところは大工の若衆たちを重点育成だ。


「領主さま。アイテムが足りなくなってきています」


 しばらくするとナオにそう指摘される。


 ので、領地へ帰った時、残りひとつの帆船はんせんへ魔鉱石やレア魔石を積み、ミニ遠征部隊への補給に向かわせた。


 こうなってくると帆船はんせんが3隻あってよかったと思う。


 ひとつを補給船として使うことができるからな。


 精鋭部隊のアイテム補給を済ませると、その帆船はんせんには獲得した融合石を乗せ、領地へと送る。


 それが済むとこの船には鬼ヶ島へ向かってもらうのだ。


 アキラが掘削した鉄鉱石を船に積んでいるので、その船が領地へモノを輸送していくのと入れ替わりで島に停泊するというわけである。


 3隻の帆船はんせんはこのように輸送でローテーションしていくことになった。



 ◇



 塔と領地とを何度か往復していると、しだいと鍛冶工房の周りには奇妙な施設がポツリ、ポツリと建っていく。


 例えば、この卵型の施設。


 これは転炉と言って、溶鉱炉でできた荒い銑鉄せんてつへ強制的に空気を送り込む施設である。


 この過程によって、銑鉄せんてつは強固な『はがね』へと精錬されるのだ。


 その後、型に嵌めて冷やしてから、微妙な歪曲を付けたりなどして、武器や建造物、艦のパーツなどに仕上げていく。


 その形成が、鍛冶の腕の見せ所なんだろう。



 カンカンカンカン……!



 製鉄系の施設ばかりではなくドックの建設も進んでいった。


 ドックはかなり大きな空間を区画的に護岸しなければならないから、煉瓦レンガを用いることにしたんだって。


 製鉄のためのテクニックが、ドックの建設にも役にたったというわけである。


 黒王丸で領地へ戻るたびに、海岸にしつらえた窪地くぼち煉瓦レンガが整然と積み上がっていく。


 ある程度煉瓦(レンガ)が積まれると、鉄柱で足場のような骨組を組み立てていった。


 これは事実足場にもなるし、耐震補強の機能もある。


 また、鉄製品の試行トライアルにもなっているんだそうな。


「エイガさま……」


 こうして俺がドック造営の現場を見下ろしていると、いつのまにか背後にいた五十嵐さんが耳元でささやくので、ひさびさにビビった。


「な、なあに? 五十嵐さん」


「……中村の繁忙期は過ぎました」


「田植えが終わったってこと?」


「はい。まだまだ田んぼの管理は続きますが、一番忙しい時期は終わりです」


「そうか。じゃあ……」


「ええ」


 中村出身の部隊の者をクエストへ動員できる。


 つまり、部隊150人体制で経験値獲得ができるってワケだ。




先週の更新のすぐあとで。

書籍1巻の方が【重版】決定となりました。

都市部でも、地方でも買ってくれているそうで、たいへん嬉しいです。


それもこれも、これまで熱心に更新を追ってきてくれたみなさんのおかげだと思います。

引き続きがんばって書いてまいりますので、何とぞ応援のほどよろしくお願いいたします!

(今日マンガの方も更新日なのでぜひぜひ!)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しく読ませて頂きました。物語のアイデアはすごいと思いました。 [気になる点] 102話の製鉄法がメチャメチャで正しくない表記は避けるべきかと…
[一言] 重版めでたい!
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