1-8 学校初日 2
明るく!!!!
教官の話が終わった。
ちなみに、話していた教官は、入学試験のときに話をした例の教官だった。
今日の予定、年間を通しての予定など、大雑把に説明をしていた。
滞りなく説明し終えた彼女は教卓から降り、移動するように促した。
場所は、またも実演場だ。
今から、上級生のありがたくも、レベルの高い戦いが拝見するそうようだ。
観客席は、ぎっしりと埋め尽くされており、僕たちもその中の、一席に座っていた。
この学校のレベルを知りたいと、思っていたので、ちょうどよかった。
「ミスラ! わくわくしますね!」
姫様のテンションも高く、興奮気味だ。
「姫様……落ち着いて……」
もう一人の護衛のシラも一緒にいて、心強く安心できる。
一人では、どうにもならないことが起こる可能性がある。
「そうですよ……抑えてください」
僕も姫様のテンションの抑制させるように言う。
祭り好きなのだろうか? 気になったので聞いてみることにした。
「姫様はこう言う盛り上がった祭りっぽいのが、好きなんですか?」
「うーん、私は参加できませんでしたから……」
頬に手を当て、過去を見つめながら答える。
姫様は、それに……と、さらに続ける。
「今、嬉しいのは、ミスラがいるから、です」
僕が答えられずにいると、シラが……
「姫様……この人、何者?」
と、突然、唐突に問いてきた。
やはり、とは思っていたが、この国の秘密主義には本当に驚かされる。同業者にも話さないとは……
「王城でも、見たことがない……」
それは当たり前だ。最重要の依頼しか依頼されないし、そして、今回が初めてだ。
見たことがないのも当然だ。
「そうでしょうね。ふふふ」
姫様はおかしかったのか、笑いながら、含みのある言い方をした。
「……そうで……しょうね……?」
シラは混乱しているようだ。頭にはてなを浮かべている。この情報量では無理もないと思う。
「もう始まりますよ」
急に姫様は話を戻し、見ようと、促した。
「はい、そうですね」
姫様も僕のことをできるだけ話さない方針のようだ。
「生徒が出てきましたね」
ゆっくりと生徒が出てきた。
聞くに、学校屈指の手練だそうだ。
どんな魔法を使うのか、どんな戦法なのか楽しみだ。
入学試験の模擬試合を思い出しながら見ると、その差がはっきりと分かるだろう。
一人は男、一人は女。
男はやはり、機動戦重視なのか、動きを大事にする戦士が着てそうな、軽い装備だった。
打って変わって、女は、ローブで魔法師の普通の装備であり、恐らく、長距離の戦闘でしたいだろう、と装備を見るだけで、軽く推測ができる。
「何か、両者とも弱そうですね」
姫様がそう呟いた。
「何処を見て判断しましたか?」
「うーん、雰囲気ですね。強者の堂々たる態度がまるでないです」
雰囲気で判断するのは、どうかと思い、少し否定しようとすると、突然、僕を指差し、シラが呟いた。
「あなたも……ない……」
「姫様の……護衛が弱い人とは……考えられない……」
シラは、でも、と続けた。
「あなたには……強さを感じさせる雰囲気がない……それよりも、逆に……弱々しく見える……」
「言われてますね、ミスラ」
んん……やはり、外見が問題なのだろうか? 先日も、大男に喧嘩売られたし……
「ミスラ……」
突然名前で呼ばれたので、シラを見る。
そして、続く言葉に絶句する。
「……女装すれば……カワイイ」
数秒の沈黙。それを打ち破るは、僕の間の抜けた声だった。
「はい?」
「そうですね! 似合うと思います」
姫様までもが、肯定した。
僕は言葉を失った。何を話せば良いのか、今言葉を発して良いのか、それすらも、分からない。
視界には白い世界が広がっていた。
「そのうち、私の服を貸してあげますね。身長は殆ど変わらないですし」
このままではまずいと、真っ白な頭をフル回転させ言葉を紡ぐ。
「え、遠慮します」
やっとのことで、否定ができた。
絶句から、開放された。
「絶対に嫌です」
さらに、否定の言葉を述べる。
「ふふふ、私、見たいです。依頼でやってもらうかもしれませんね」
姫様はいたずらっぽく笑った。
僕は、目を見開いた。起こるかもしれない未来の恐怖に向かって……