1-6 入学の儀式
明るめに……
入学式。
その言葉は、新鮮であり、聞いたときは驚いた。
学校に入る際の儀式だとか。そんな体験は初めてだったので少なからず緊張していた。
「今回の入学生は、四十名」
上級生は「おー」と、感嘆の声を上げている。
聞くに去年は、入学試験で落ちた者が多く二十数人。今年は、レベルが高いそうだ。
僕は実感が沸かないが、強い者が多いらしい。
正直、驚きが大きい。
「ミスラ? 起きてますか?」
シャルロット姫は、優しく尋ねてくる。
考えてただけなので、返事はすんなりと出てくる。
「はい、起きてますが……」
「そうでしたか?」
と、いたずらっぽく聞いてくる。
「はい」
「それなら良いです」
そして、耳元で呟いた。
「ミスラは護衛なんですよ。しっかりしてくださいね」
「すいません」
姫様は隣の席に座っているため、話しができる。
僕が護衛するためである。
不必要な考えを排除し、警戒をする。
「さて、入学式を終わるにあたって、最後に儀式を行います」
と、教官の一言。
儀式――と言っても、形式的なものだと、説明された。今、自分が使える一番強い魔法を天に向けて発動する、と言うもの。
一年後、自分がどのくらい成長したのか、どのくらい強くなったのかを知るためでもある、とも、説明された。
なるほど、一年後の強くなった自分か……
未来の自分は、どのくらい強くなっているのだろうか? あのときのミスを帳消しにできるような、そんな働きができるだろうか?
未来を作るのは、弛まぬ努力だ、と、確信している。
「ミスラ! どんな魔法を放ちますか?」
「僕は……」
と、考えても、思いつかない。
強すぎたらまずいし……
「良かったら、同じ魔法を使いませんか?」
予想外なことを言われて、困惑する。
「え? あっ? わ、分かりました。良いですよ」
「良かったです」
明るく微笑む。
ほんと、姫様は良く笑うなぁ、と思った。
どの笑顔も違った、美しさを感じさせる。
「インフィニティ•エクスプロージョンを使いましょう‼」
「シャルロット様? 使えるのですか?」
驚きに驚きを重ねて、問う。
姫様は、爆発系最強の魔法を使おう、と、言ってきたのだ。
もしかしてとは思うが……毎年、王国誕生祭のときに、毎年僕は、陛下に依頼され、隠れて、この魔法の改良版を打っている。
――――祭りを盛り上げる名物として……
それを上げてほしいと、言うことか……
もしかすると、陛下にそのことを聞いて、いるのではないかと、思った。
「あら、バレてしまったようですね」
姫様は、うふふ、と楽しそうに、笑いながら、そう言った。
「祭りには、あの名物がないと盛り上がりませんよね」
まるで、心の中を読んだような、的確な言葉。
その魔法は、僕が止めるまで、永続的に続く。
その爆発は、使用者の意識しだいて、爆発の際に出てくる火や煙の色を変えられる。それだけでなく、形も自由自在だ。
そんな魔法を作るために、一ヶ月丸々潰した、と、過去の記憶を思い返す。
「それなら、無難に、私も使える、ノーザンライトは、どうでしょうか?」
火力ゼロのその魔法は、相手を死の光で、包み込み、瀕死される光系魔法の高位の魔法。
しかし、そう、鑑賞用に使えば、その光はとても幻想的で綺麗だ。
たぶん、この魔法は知名度が低いから使っても良いかな、と、思う。
しかし、この儀式は成長を見るためである。
「シャルロット様? これは、成長を見るためなので――――」
「――――ミスラは本気を出さないじゃないですか‼」
僕の言葉を遮り、姫様は飽和膨らませ、詭弁を弄した。
こう言われると、言葉が出せない。
「分かりました……」
「はい、一緒に」
そうして、司会の教官の魔法発動までのカウントが始まり、十からどんどん減っていき、ゼロまでなると、二つのベールが空にかかった。
生徒全員が、その幻想的な今までで、数少ないものしか見たことのない光景を目にし、開いた口が塞がらない状態に陥っており、違和感しか抱かせない不思議な状況になった。
その魔法は、誰が使ったんだ? と、後日、最大の話題に成り果てた。
※前の話の姫様の描写を足しました。