1-5 姫との会話 2
短いです。
話は終わり、部屋を出ようとした。
すると、姫様が……
「やはり、ミスラとは、初めて話した気がしませんね」
と、優しく呟く。
僕はその瞬間、一回「ドクッ」と心臓が跳ね上がるのを感じた。
しかし、姫様はさらに続ける。
「お父様が紹介して下さったときより、ずっと前に話しをしたような気がします」
その言葉は、僕の顔を凍らせた。
心臓の鼓動が速くなり、外に漏れ出すのではないかと思えるほど、大きくなり自分自身に聞かせている。
シャルロット姫。正解ですよ。
と、心の中で呟く。
僕が何もできなかったから……
その心の中の言葉の続きは出てこなかった。
今できるのは、精一杯の誤魔化しだ。
これ以上、思い出させないように呟く。
「僕も、そんな気がします」
何も悟られぬよう、表情の変化を押し殺し、声の震えを抑え込む。
ああ、これで良いんだ、と、自分に言い聞かせながら。
救えなかった自分への自戒だ、と。
真実を伝える日が来ないことを祈る。
「それでは、僕、行きますね」
ここに居続ければ、演技がバレかねない。
「はい。今日はありがとう」
姫様は満面の笑みでそう言った。
僕は、どうしようもない罪悪感に心を暗くした。
しかし、彼女のその顔を、その笑顔を曇らせたくないと、必死に笑った。
「こちらこそ」
扉の「カシャッ」と、閉じる音を聞き終え、僕は天井を見つめ、安堵のため息をつく。
一点の闇のない、白の天井は、今の僕と対比しているように少なからず、感じてしまう。
陛下、どうしたら、良いのでしょうか? 僕は答えの出ない問いの答えを探す。
次の土曜日更新します。
話が明るくなるはずです。