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ウィザーディング・オブ・ウォー  作者: 九蓮 開花
序文 プロローグ『オリジン』
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プロローグ 『オリジン』


 その日、俺は死んだ。


 理由は何者かに、わき腹を包丁かナイフかの刃物で刺されての失血死だ。


 まあ、振り返ってみれば悪くない人生であったとは思う。イヤ、やっぱり悪いのかな。そこらへんは今わの際になっても分からないものだ。人生ってのは生きている内も分からないことだらけだが、死んでも分からないものだな。案外、これは真理なのかもしれないなあ。


 そんなことを思いながら、同時に、俺の脳裏にはこれまでの人生が走馬灯となって駆け巡って来る。


 俺は、23歳の交番勤務の警察官だ。

 もしも俺の中学の頃を知っている人間がそれを知れば、恐らくは目を剥いてその事実に驚くことだろう。


 なぜならば、当時の俺はとんでもなくヤバい奴で、家族からさえも禄に話しかけられた記憶がないからだ。一応、俺と会話して呉れる他人が居なかったわけでは無いが、それは凄く偏った人種だけになる。

 

 前科者か、警察官だ。


 すごく極端な二択だが、それくらいの奴でなければ当時の俺とまともに話してくれる奴が居なかったのだ。


 俺がグレた、というよりも頭のねじが一本飛んだのは、中学一年生に上がってすぐの事だった。


 それは、偶々購買に行ったときに、上級生の不良生徒が如何にも気弱そうな生徒を相手にして、勝手に割り込みを働いたことが原因だった。


 その当時の俺は、まあ、今も変わっていないとは思うが、ムカつくことには噛みつくガキだったから、当時の青臭い正義感に則って、割り込んだ上級生に対して軽く注意をした。


 次の瞬間だ。


 俺はその上級生に殴られ、そいつが引き連れていた仲間に全裸に剥かれて校門前に全校生徒に晒された。


 全治一か月。別に体の傷自体は大したものでは無かったが、当時学校のアイドルとされていた校内で一番かわいい女子生徒に、汚物でも見られるような視線で蔑みの視線を投げつけられたのは、未だにトラウマになっている。


 別に好きでも何でもなかったが、それでも可愛い女の子に意味も無く蔑まれるのは色々と心に来るものがある。


 中にはこの状況でドMに目覚めるような変態がいるのかもしれないが、俺は残念ながらそうじゃなかった。

 その代わりに、俺の中で別の何かが目覚めた。


 思えばこの瞬間かもしれない。俺の人生が変わったのは。


 その後、俺は上級生のパシリになって睡眠薬入りの焼きそばパンを喰わせて眠らせた後、廃工場で拾った鉄パイプをその上級生に叩き込んで顔面をぐちゃぐちゃにして二度と立てない位に全身の骨を折ると、そのまま偶然近くにいたトラックの下にその上級生を括りつけて、一キロメートルほど公道を引きずらせた。


 それ以降、その上級生は半身不随となって二度と歩くことができない身体になった。


 それ以降、俺は俺に手を出して来る人間全員に対して、加減も容赦もない攻撃を加えるようになった。


 時には理科室で洗剤を使っての毒ガスを発生させて半殺しにしたし、

 時にはパソコンで遠隔操作できるように改造した車に乗せて電車の踏切に突っ込ませたし、

 時には改造した協力スタンガンを使って相手の心臓を止めたこともある。


 兎に角情け容赦もなく、洒落や冗談で済まない程に本気で殺す気で敵対者をぶちのめす俺を見て、周囲は恐怖からを俺を避けるようになり、やがて俺は『凶人』と呼ばれるようになり、代わりに警察関係者とよく話すようになった。


 警察の中も、俺と今までの周囲の人間と同じで、俺からできる限り距離を取ろうとするものモ多かったが、中には良くも悪くも俺と距離を縮める奴もいた。

 中には何かにつけて俺に冤罪を懸けて俺を捕まえようとする刑事や、純粋に職務に忠実な刑事など、様々な奴と俺は縁を結ぶことになり、やがて俺は警察を志すようになっていた。


 其のころには完全に俺の事を見限っていた家族から距離を置きたいという思いもあったのかもしれないが、高校を卒業するとすると同時に家を出た俺は、そのまま警察学校に入り、そうしてノンキャリアの交番勤務の巡査として配属されることになった。


 その後の俺の警察官としての経歴は、特に変わったところは無い。


 中学高校時代の経歴が嘘のように平穏で平和な警察人生を歩み、忙しい生活の中で貯金をしつつ趣味にひた走りながら生きていただけだ。まあ、強いて言えば、今この瞬間に俺の命が終ることが、俺の経歴最大のエピソードなのかもしれない。


 そんな人生だったから、今こうして死ぬことには未練はあっても悔いはない。まあ、義務教育時代の悪行のツケだろうな。しゃあねえかなって思いは湧き上がるのに、不思議とチクショウとか、クソッタレと罵る気が起きない。まあ、そんなものなんだろう。


 そうこうしている内に俺の意識は完全に暗闇へと落ちていき、





 そして、気付いた時には転生していた。





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