74話 それはそれとして今後どうするかについてである
行き当たりばったりである事が発覚した、
『経験値を手に入れて学術関連の技術レベルを上げよう』
という思惑が露見した。
これによりミサキのヒロタカへの印象はかなり悪くなった。
しかしそれで今の現状を捨てる事も出来ない。
確かにそれはミサキを引きずり込む為の方便でもあったが、全てが嘘というわけでもなかった。
経験値でレベルを上げられるなら、それで学力を手に入れようというのはヒロタカの本心でもあった。
出来るかどうか分からなかったので、博打の要素がかなり高かっただけで。
それが可能であるならば、学術や学問に関わる技術を上げる事はやぶさかではなかった。
「というわけで、今後もモンスター退治を頑張っていこう」
そんなヒロタカの声にミサキはため息を吐く。
一緒にいるアオイとミズキが気の毒に思うくらいに長々と。
「それって、学校に関係する技術を手に入れるため?」
「概ねは。
もちろん、モンスター退治に必要な技術も成長させるけど。
でも、そっちは大体今の常態でも十分でしょ」
「まあ、そうだけど」
レベル10近くの技術を持つに至ってる今、冒険者としては十分な能力を持っている。
更なる成長も目指したいが、ここで横道にそれたとして、それが成長の足を引っ張るという事も無い。
それでも、今少し別の技術を手に入れて成長させたいとも思う。
モンスター退治が基本的な収入源である今、それは当然の考えではあった。
「気張って考えないでいこう。
学校の勉強に経験値を割くくらいの余裕はあるって」
どの程度必要なのかは分からないが、見聞きした話を聞いて必要な技術とレベルはある程度目星を付けている。
「一般教養でレベル3以上。
専門知識でレベル3以上。
それくらいは必要みたいだからそこを目指そう」
もちろんそこで止める必要も無い。
より一層向上させてもよい。
他の専門知識を身につけてもよい。
モンスター退治に直接関わる事はなくても、どこかで必要になるかもしれない。
少なくとも損はしないものである。
「それと、アオイもメイドに必要な技術を伸ばしていってくれ」
「はい?!」
いきなり話を振られてアオイが驚く」
「この前さ、メイド長に言われたんだ。
『そちらで必要なのは分かりますが、そもそもメイドなのでそちらの修行もさせてください』って。
まあ、使用人として雇ってるからその通りなんだけど」
今更だなとは思う。
ほとんど冒険者として能力を伸ばしてるのだからこれで良いのではと思った。
それを実際にメイド長に言ったら、
『女に殺伐とした作業をさせるのはいかがなものかと思います』
と窘められた。
確かにモンスター相手の作業だけ成長させるのもどうかとは思っている。
まず人として必要になる知識や技術を身につけさせねばならないという事も理解はした。
この前のゴブリン退治の時に見た、潜入、お呼び無音殺傷術の能力を思い出したのも大きい。
冒険者としては実に優秀で、今後の活躍も期待出来る。
しかし、人間としてそれだけというのはさすがにいただけない。
「今後は料理とか家事とかそういうのも伸ばしていってくれ。
家政とかもな。
将来メイド長とかになるなら必須だぞ。
家計とか帳簿とか子守とかも」
「はあ……そういうもんでしょうか?」
「あると便利だと思う。
礼儀作法とかも含めてな」
女性らしい体型も、と思うがさすがに口には出さなかった。
そのあたりは個人差があるし、経験値でどうにかなるものとも思えない。
そもそも人間として口出しするのがはばかられた。
ヒロタカにも人間としての良識や常識は存在する。
持って生まれたものかどうかは悩ましいが。
だが、技術として身につけた一般教養が、そのあたりは控えようという事を教えてくれていた。
「ミズキもな。
動物の世話とかも大事だけど、もうちょっと色々出来るようになっておけ。
魔術とかも増やしてくれればありがたいけどさ」
「そうですね。
良い機会だから、もう少したしなみをおぼえます」
それほど必要だとは思わなかったが、これも何かのきっかけだと思って考える事にした。
とは言っても、何から手を付けていけば良いのかが悩ましかったが。
「とりあえず、外での生活とかでもいいでしょうか?
野外活動とかも知っていれば結構便利みたいですし」
「いや、そういう発想から離れよう。
普通に家の中の事とか色々あるでしょ」
冒険者としての活動が身に染みてしまったせいか、発想がどうしても偏ってしまう。
そこを指摘したヒロタカは、人間としての幅を増やせる方向を求めていった。
「刺繍とか手芸とか、生け花とかお茶とか。
そういう事でも良いから。
芸事とかもいいと思うよ。
歌とか楽器とかでも良いし」
「いや、さすがに私には似合わないんじゃ……」
「そういう考えを打ち破ってみようよ。
何も今までの延長で全部やれば良いってわけでもないだろうし」
「はあ……」
言われてミズキも考える。
そういうのもあるのだろうかと。
しかし、言われたものを思い浮かべようとしても上手くいかない。
ヒロタカのあげたものが、いわゆる上流階級の趣味に属してるものだったせいもあるだろう。
庶民には馴染みのないものばかりである。
言われてもそれらを身につけてる自分が想像出来ない。
そもそも必要とも思えない。
生活に関わりがないのは確かなものだばかりだ。
「本当にそういうのが必要なんでしょうか」
「やってみれば色々と見えてくるものがあるかもよ」
「うーん」
どうにも想像が出来ない。
もう少し有用なものを身につけたいとも思う。
そんなミズキに、
「すぐに結論を出さなくてもいいよ。
そのうち興味が出たらやってみれば良いから」
と助け船を出す。
それならば、とミズキも納得した。
「とりあえずはもう少し自分のやりたいようにやってみますね」
「ああ、それでいいよ。
むしろ、その方がいい」
「では、お言葉に甘えて」
とりあえずは、植物との意思疎通の延長で、植物知識や園芸を身につけてみようと思った。
薬草なども良いかも、と思いながら。
そんなこんなで今後の方針が何となく決まっていった。
ちょっと考えてる事を活動報告に書いてます。
今度の土日でやれたらなと。
他の話もよろしく
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「転生したけどウダツの上がらない冒険者は、奴隷を買う事にした」
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