71話 手に入れたものをどう扱っていくかを考えていく
その日から更に忙しくなっていく。
村の復興を進めていく上で、どうしても稼ぎが必要になる。
当たり前だが、村を立て直すのには時間がかかるし、当面の資金も必要になる。
その資金を村人が持ってるわけがない。
田畑をなおして収穫を得るにしても、まだまだ先の話になる。
そもそも、荒れた農地を元に戻すには時間も手間もかかる。
おいそれと出来るものではない。
それでも先立つものがなければ何も手に入らない。
春日家も善意で寄付をしてるわけではない。
将来の利益を期待しているのは確かだが、さりとて無担保で金を貸すわけもない。
どうしても村人は選択を突つけられる。
「モンスター退治をして金を稼ぐか?
それとも、俺らの泊まる場所を提供するか?」
大雑把に言えばそうなる。
すぐに金を稼ぐとしたらそれしかない。
村の者で、働ける者はそのどちらかを選んでいく事となった。
当然のことながら、場所を貸す事を選ぶのが圧倒的多数になる。
それで良かった。
モンスター退治は春日家の者達でやっていく。
村の者達がわざわざやる必要はない。
むしろ、村にてそれなりの仕事をしていてもらいたかった。
「つまり、彼等には生活空間の構築をやらせると」
「そうなりますね」
父の言葉にヒロタカは頷く。
「レベルも上げてない人達が戦闘しにいっても死ぬだけです。
それよりも、まずは生活する場所を作ってもらわないと」
「そして、金は我々相手の商売でまかなってもらうと」
「ええ。
幸いモンスター退治から帰っていく場所はあちこちの村になります。
その村で寝泊まりするだけでなく、飲食とかもやってくれれば良いんです。
それに、稼ぎから支払う税金を村長に納めれば、当座の資金も多少は手に入るでしょうし」
「なるほど。
村と我々で境界線を引くと」
「そういう面もあります。
彼等は我々の一部ではありません。
その逆もです。
お互い親密でいても、同一ではない。
それをはっきりさせておきたい」
「なれあうわけにはいかん、という事か」
「そういう事です」
下手にくっつきすぎるとどこかで妥協などが発生する。
それらが良い結果をもたらす事もあるが、悪い方向に物事が向かう可能性もある。
今の段階でどちらに向かうかは分からないが、村人達と春日家でははっきりと違うという事を強調しておきたかった。
「当面は、俺達相手の商売に専念してもらいましょう。
その間に田畑の回復とかもしてもらいたいですし」
「人手は割けないな、それだけ忙しいと」
「ええ。
そもそも、逃げ出してきてから今までの間に人口がかなり減ってますし。
それを回復してもらわない事には」
「そうすると、結婚をかなりしてもらわないといかんぞ」
「その辺りは母さんに任せます」
ここでヒロタカはため息を吐いた。
「こっちの方でもかなりノリノリでやっているようですし」
「確かに。
水を得た魚とはああいうのを言うのだろうな」
母がどれだけ精力的にお見合いの場を設け、出来るだけ多くの者達を結び付けてるか。
それは春日家の館にいる者ならばほぼ誰でも知っている。
「その手腕に期待しましょう」
呆れながらもそちら方面ではがんばってもらおうと思った。
適材適所である。
「それはそれとして、奴隷の買い取りや人手の確保。
これらも引き続きお願いします。
村の回復に人手が全然足りてませんし、モンスター退治の人員も増やさなければなりません」
「そうだな。
作業員として可能な限り雇っておこう」
「それと奴隷は出来るだけモンスター退治にまわしてください。
危険な作業なので、絶対に裏切らない者でないと困ります」
「優先敵に回す事にする。
だが、その為に資金も稼いでもらわんと困るぞ」
「分かってます」
奴隷はやすい買い物ではない。
雇用期間を考えれば十分にやすいが、初期投資で一気に支払うのは大変だ。
その分の金はヒロタカが稼いで来なければならない。
「それと、周旋屋の方はどうなってますか?」
目先の問題で一番の懸念事項について尋ねていく。
「手に入るとやはり便利だと思うのですが」
「作業を進めてるところだ」
父はニヤリと笑った。
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「転生したけどウダツの上がらない冒険者は、奴隷を買う事にした」
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