69話 先入観や思い込みを外せば、魔術の使い方が色々広がるかもしれない
投稿が遅れてしまった。
申し訳ない。
一方的な蹂躙と呼ぶしかない戦闘(?)が終わる。
二十体ほどを倒したところでゴブリンの突進が止まった。
でたらめにも程があるヒロタカの攻撃が数の優位を忘れさせた。
機能してないそのようなものをあてにしないだけの知恵はあるようだった。
それ以前に、本能が動きを止めた。
もともと小心者のゴブリンである。
勝てると思った数分前はヒロタカに襲い掛かったが、圧倒的な力の差を見てすぐに行動を変えた。
すなわち、逃走である。
命が惜しいゴブリンは、負けると思えばすぐに逃げる。
このあたり人間を見れば遅しかかるのが普通のモンスターらしくない。
そこは本能だけでなく知能があるからかもしれない。
それも含めてゴブリンの習性といわれている。
(予想通りだな)
事前に聞いていた通りの行動に、いささか拍子抜けというか呆気にとられる。
もう少し違った動きを見せるかもしれないと思っていたが、そうでもなかった。
おかげで次の動きがはかどる。
(うまくいってくれるといいけど)
そう思ってる博隆の目の前で、ゴブリンが次々と矢で貫かれていった。
共に来ていた冒険者達は、一人で進んでいくヒロタカとは別に、村を囲むように進んでいった。
逃げ場はない。
要所を包囲してる冒険者達を突破するか、ヒロタカを倒さない限りゴブリン達に先は無い。
どこを通るにしてもかなりの無理があるだろう。
冒険者達もそれなりの数がいるので、簡単には抜けられない。
そこで手間取ってる間にヒロタカがやってくれば一気に殲滅される。
かといってヒロタカの横を抜けようにも、村の敷地内に入ってるので難しい。
崩れた柵の間から入って行ったヒロタカは逃げ道を塞いだ形になっている。
簡単には通れない。
それでもまだ一人しかいないヒロタカの方面は抜けられる場所が多い。
どれだけ強くても、一人では広範囲をおさえる事は出来ない。
ゴブリンもそれくらいは考える事出来るようで、一気にヒロタカの横を通り抜けようとする。
柵を越えねばならないという手間はかかるが、それさえ切り抜けられればどうにでもなる。
その瞬間をくぐり抜けられるかどうかだけが問題で、遮る物のない場所を走り抜けていけばよい。
そちらの方にもミサキやミズキらがいるのだが、ゴブリンを止めるには数が足りない。
仮に立ちはだかったとしても、直接的な戦闘力を考えれば全く用を為さないだろう。
しかし、彼女らにはそれを補って余りある魔術がある。
ヒロタカの横を通り過ぎようとしたゴブリン達はそれを体で知る事となる。
抜けていこうとしたその時、見えない何かにぶつかった。
何事が起きたのか全く理解出来ないまま地面に落ち、どうにか立ち上がろうとする。
しかし、走る事で勢いをつけた後の衝突である。
軽く目眩をおぼえるほどの衝撃がある。
立ち上がる事が出来ても前後を確かめる事すら難しい状態に陥ってしまっている。
痛みで目がくらんでしまい、意識もそちらにとられてしまう。
それがほぼ全てのゴブリンに起こっていた。
倒すのは雑作もない事である。
「上手くいきましたね」
「そうね」
立ち上がっていこうとするゴブリンを切り伏せていくヒロタカを見て、ミサキとミズキが成果を確かめる。
全てはミサキが用いた魔術によるものであった。
「障壁ってこういう使い方があるんですね」
防御用にとミサキが身につけた魔術である。
目には見えないが、物理的な壁を作る効果がある。
一定以上の攻撃を受けたり、効果時間が切れると消滅する。
本来なら文字通り障壁として相手の攻撃を防ぐ事が目的で使われるものだ。
しかし、その効能に防御専用という使用条件があるわけではない。
文字通り障壁を作るだけのものである。
だから、今回のような使い方も出来た。
ゴブリンの逃走経路を塞ぐために。
壁であるので、移動を阻害する事くらいお手の物である。
それを村の周囲に張り巡らせていくだけで簡単に逃げ場を無くす事が出来る。
ミサキのレベルではそれほど強固なものも大きなものも作れない。
効果時間も限られている。
しかし、核を消費する事でそれらを補っていた。
おかげで、ほぼ継続的に障壁は作られていっている。
「牢獄よね」
「え?」
「まわりをこうして囲んでるんだから」
逃げ場などどこにもない。
もちろん障壁を発生させてるのはミサキがいる方面だけである。
それも見える範囲全部といったものではない。
ヒロタカを中心とした左右にそれぞれ十メートル余りがせいぜいである。
だが、足止めをするならそれで十分であった。
それと気づかずに障壁にぶつかったゴブリンは次々にヒロタカに倒されていっている。
それを見た残りのゴブリン達は足をすくませてしまったのか、全く動こうとしない。
しきりに左右を見渡して逃げ道を探してはいるが、どこに行こうか迷ってるようだった。
閉じ込められた囚人のように。
牢獄というのは、それを見たミサキの感想である。
そして、その中に進んでいくヒロタカは、ゴブリンを次々と切り倒していった。
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