66話 ちょっと手間取ったが問題無い
二つ目の村を開放し、そこにも資材を運び込む。
最低限の設備を調え、居住できる場所の設置が進んでいく。
護衛の冒険者も少しずつ増え、村への資材搬入なども進んでいく。
村人達も少しずつ帰還を果たし、失われた生活を取り戻そうとしていた。
その為にかかる資金はかなりのものであり、春日家としてもかなりの負担となる。
その投資に見合った回収も見込んではいるが、やはりまだまだ先の事となる。
村の復活もまだまだ先の事だし、何より収益になるようなものも生み出さない。
田畑が元に戻るまでに何ヶ月も、下手したら何年もかかるだろう。
あるいはもっと時間と労力と資金が必要になるかもしれない。
それでも、将来の収益を見込んで春日家は投資を続けていった。
とりあえずは、モンスターから回収出来る核を収益に出来れば良い、と考えて。
ヒロタカの考えは、活動拠点の確保である。
町の近くではモンスターをおびき寄せるにしても文句を言われかねない。
だが、村の方まで出てくればそこまでうるさく言われなくなる。
村の方も、今回ヒロタカ達の活動で回復した事を持ち出して多少は黙らせる事が出来ると見込んでいる。
他にめぼしい産業もなく、田畑も荒れてる状態の村なら、モンスターが稼ぎの主力になってしまう。
直接の稼ぎにはならなくても、ヒロタカ達を相手にした商売で当面やっていくしかないと思われた。
この先更に人を増やし、モンスターから核の回収を増やすつもりのヒロタカにとって、村が拠点となってくれるのはありがたい。
その為に、元村人である貧民街の者達を助けた。
土地の所有などの権利関係でうるさい事を言われないようにするためだ。
本来の住民が戻ったのだから、それらの意見を無視するわけにはいかない。
もし村人がいなければ、町の連中が何を言い出すかわからない。
特に貴族などの統治者は難癖をつけて介入してくる可能性があった。
それらを遮るために、優先されるべき権利者の存在は必要不可欠である。
更にそれを推し進めるために、功績を積み上げねばならない。
残る一つの村を攻略し、完全に村を回復する。
その先にある町への通路を確保する。
迂回せざるえなかった街道を元に戻し、その功績をあちこちに拡散していかねばならない。
決して良い評判だけが上がるわけではないのは分かってるが、それでも誰がやったのかをはっきりさせねばならない。
誰が何と言うと変わる事のない事実を。
その為にヒロタカ達は動いていく。
最初の村の開放から一週間。
予定より時間はかかったが、ヒロタカは最後の村に向かう。
物資輸送や作業中である村の護衛となる者達がようやく確保出来てきた所である。
まだ数は全然足りないが、ヒロタカが育てあげた者達が動きやすくなる程度には集まった。
冒険者の一団というよりは郎党と言った方がしっくりくる子飼いの集団。
それらを最後の村に連れていく。
人数を再編成し、二つに村に五人ずつ残した。
残り二十人近くを引き連れていく。
村への物資輸送の護衛は完全に冒険者に任せた。
また、解放直後に必要な最低限の作業と、それを為す職人と物資。
これらの護衛にも冒険者をつけた。
村の方の戦闘で郎党である者達を用いるために。
さすがに次はゴブリンが相手となる。
犬頭よりも格段に手強い。
そんな連中相手に少人数であたるわけにはいかない。
なるべくレベルの高い者を数多く揃え、それで攻撃を仕掛けねばならない。
村一つを制圧してるゴブリンは結構な数がいる。
蹴散らすのは結構な手間がかかるはずである。
レベルは高くなったとはいえ、まだまだ不安は大きい。
負けるとは思わないが、それなりの出血は覚悟せねばならなかった。
(でも、どうにかしないと)
その為に、可能な限り万全な体制をととのえた。
レベル5以上の者達を数多く揃えた精鋭である。
どうにかしてやれるはずだった。
最後に残った村を遠くに見据えながら、ヒロタカは突入の機会をうかがっていく。
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