60話 ようやくここまで来たよ、長かったよ大変だったよ
明けても暮れてもモンスター退治。
そんな日々が続く。
一ヶ月が終わる頃にはレベル2がちらほら見えてきた。
二ヶ月が過ぎる頃には、戦闘技術レベル3は当たり前になっていた。
三ヶ月も半ばを過ぎる頃には、ほぼ必修としていた一般教養のレベル1を新人全員が得ていた。
機は熟した。
「長かったなあ……」
感慨深い。
ゴブリン退治を目指してからここまで来るのに結構な時間がかかった。
それでも、相当な短期間で準備を調える事が出来たと言って良い。
現在三十人の戦闘員を抱えてる。
ちょっと大きめの冒険者の一団の規模である。
これくらいの人数の団体はかなり少ない。
たいていの冒険者が五人六人くらいなのを考えればかなりの大きさと言える。
加えてレベルが高い。
戦闘技術のレベル5は当たり前。
これが全体の半数以上である。
新人達もレベル3の戦闘技術なので、全体の能力は相当なものである。
冒険者の集団でもこれだけのものはなかなかいない。
それが一年で出来上がってるのだから恐ろしい。
これを長いと言ったら他の者が唖然とするか呆れるだろう。
あるいは怒鳴りつけるか。
反応は様々にしても、ヒロタカの言葉を否定するはずである。
だが、他からの介入を気にしてるヒロタカにすればこれで遅いものだった。
成し遂げた業績に比べても、周辺事情はそれほど厳しい。
のし上がるのを考えない、現状維持でも良いと考えても、これ以上の成果が欲しかった。
どうにかこうにか春日家は現状を保ってるが、この先どうなるか分からない。
そんな不安定な状況を脱出し、安定と繁栄に至りたい。
その為にも邪魔を排除しておきたかった。
それが出来るだけの力を持って。
(これが第一歩になればいいんだけど)
どういう影響が出るかは分からなかったが、やるだけやるしかなかった)
「行くぞ」
いつものように声をかけて出発を促す。
それに続いて皆が出発する。
だが、普段と違うものがそれに付随する。
戦闘員を乗せた者達の後に、様々な物資や食料を積んだ馬車が続く。
それらを用いる者達を乗せた馬車も並ぶ。
それがこの一行の異様性を際だたせた。
モンスター退治だけなら必要のない者達が続いている。
加えて言うなら、普段は決して見送りに来ない者達がいる。
「行ってらっしゃーい」
母の声に続いて、並んだ使用人達が一礼をする。
それからは手を振ったりなんだりと思い思いのやり方でヒロタカ達を見送っていく。
いずれも使用人名目で雇った大量の女子である。
ヒロタカと父が大量に採用してる者達のお嫁さん候補でもある。
母の監督下にある彼女らは、声こそ出さないが旅立つ者達を見送った。
それを受けた男共がやる気を出していく。
「……必ず帰るぞ」
「……ああ、絶対だ」
既に相手を見つけた者、まだそうなってない者と様々だが、帰る理由をはっきりと目にして意気が上がっていく。
そういう機会もないだろうからとわざわざ集めたメイドさん達であるが、その効果は大きいようだった。
町の者達に気づかれるのを警戒して声をあげないよう徹底していたため、見送りは静かなものであってもだ。
途中で通り過ぎる事になる貧民街近くの道にも普段と違った景色があらあれていた。
至る所に見送りの者達がいる。
歓声をあげるでもなく黙っているが、どの顔にも希望と期待とが浮かんでいた。
ヒロタカ達が何をしにどこへ向かうのかを知ってるからだろう。
彼等には隠し立て出来ないのである程度は事情を説明していた。
なので、今日の事も察知していたのだろう。
いずれも無言でヒロタカ達を見つめているのも、そうしない方が良いと分かってるからだ。
彼等の期待も背負い、一行は村へと向かっていく。
馬車であれば半日もかからず到着する事が出来る場所。
そこをモンスターから取り戻す為に。
【レベル表示】
春日ヒロタカ
16歳
171センチ
61キロ
<主な技術>
刀剣 レベル6 → 8
盾 レベル2
回避 レベル1 → 2
一般教養 レベル1 → 2
経営 レベル1 → 2
経済 レベル1
指揮/統率 レベル1 → 2
<その他、いくつかの技術をレベル1で保有>
<前世の技術や知識もあるが、ここでは割愛>
***********************
桐原ミサキ
16歳
154センチ
(太ってません!)キロ
B:でかい W:ほそい H:おおきい
<主な技術>
一般教養 レベル2 → 3
学問/国家知識 レベル1
学問/植物知識 レベル3
礼儀作法 レベル1
料理 レベル1
家事 レベル1
魔術/回復 レベル2 → 2
魔術/付与 レベル6 → 9
魔術/衝撃 レベル2
魔術/障壁 レベル1 → 2
<他、技術レベルには到達してないたしなみが幾つか>
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君塚アオイ
12歳
142センチ
(成長期です!)キロ
B:がんばれ W:負けるな H:これからだ
<主な技術>
【新】一般教養 レベル0 → 1
家事 レベル1
天候予測 レベル1
野良仕事 レベル1
世話 レベル1
直観/探知/感知/発見 レベル4 → 6
【新】格闘 レベル0 → 1
射撃 レベル3 → 4
隠密行動 レベル1 → 3
罠設置/解除 レベル2
<技術レベルにはなってない範囲で、家の仕事や農作業の手伝いなどのたしなみがある>
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畠山ミズキ
14歳
155センチ
(まあ、それなりにって事で)キロ
B:これまた W:結構な H:ものですな
<主な技術>
野良仕事 レベル1
動物の世話 レベル3
動物調教 レベル2
馬車操作 レベル2
騎乗 レベル1 → 2
野外生活 レベル1 → 2
一般教養 レベル1
魔術/動物との意思疎通 レベル1 → 3
【新】魔術/植物との意思疎通 レベル0 → 2
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その他:一般団員、合計30人(ヒロタカ達含む)
四つの組に分かれ、ヒロタカと最初に入った三人組が団員を率いてる。
各組は7~8人で構成。
ヒロタカの所を除く各組には、レベル3~6の戦闘技術を持つ者達が配属している。
高レベルの者達は戦闘技術以外に、一般教養がほぼ必須となってるので身につけている。
他にも探知や馬車操作などを身につけてる者もいる。
全員を統率する立場の三人組は、最低でもレベル1の指揮/統率を身につけている。
他の話もよろしく
更新中はこちら。
「転生したけどウダツの上がらない冒険者は、奴隷を買う事にした」
http://ncode.syosetu.com/n9583dq/
ちょっとお休み中はこちら。
「クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-」
http://ncode.syosetu.com/n7595dj/




