表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】金持ちに転生したので親のすねをかじって冒険に挑戦します  作者: よぎそーと
その5

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/75

49話 言えた立場ではないが、だからこそ見えてるものもある

 道徳や倫理、人間としての規範が崩れると後は凋落の一途である。

 それが、道を外れた者一人の問題として終わるなら誰も何も言わないだろう。

 だが、そこで留まらないから問題なのである。

 結局は誰かの足を引っ張る事になるし、負担を強いる。

 その結果、世の中全体の効率が落ちる。

 結果として得られる成果が得られず、全員が損をする。

 そうならない良い卯にする為のものが、道徳や倫理、人道、道理などであろう。

 法律などはこれらを元に明文化したものであろうが、取り締まり範囲はかなり限定される。

 強制的に取り締まる事になるからどうしても限定せざるえないのかもしれない。

 また、場合によっては加害者を守り被害者を虐げる事もある。

 運用するのが人間である以上、各自の勝手に解釈されて用いられてしまう。

 だからこそ、不文律による道徳や倫理などを守る事が求められてしまう。

 何も難しい事では無い。

 ゴミをそこらに捨てない、人を罵ったり煽ったりしない、喧嘩はしない方がよい────普通に生きていくなら普通に行ってる事であろう。

 道徳に倫理、人道、道理に道義。

 言ってしまえばそれだけの事を大げさな言葉で言い表してるだけである。

 だが、こんな事を守っていれば、余計な争いは起こらない。

 無駄な誤魔化しをせず、正直に生きていくならば、わざわざ検査や調査も必要無い。

 確認の為の手間を省けるなら、その分時間も労力も金銭も支払わずに済む。

 何気ない事だが、それを守ってるだけで意外と世の中楽に生きていける。

 確かに人を縛るものであるが、縛りがある事で無駄な摩擦や衝突を消滅させる。

 結果として楽に生きられる。

 生きていける場所が生まれる。

 そこまで大げさでないにしても、無駄な手間や警戒をしないで済むのはありがたいものだ。



 ヒロタカが求めてるのはそれだった。

 そして、それを守る為にどこかで確認や検査を入れる必要があった。

 多くがまともであっても、ごく一部が不正を働けば、それだけで不文律は崩壊する。

 あいつがやってるなら自分も……そう思う者が確実に出て来る。

 人間は弱いものである。

 利益になると思えば、それが目先のものだけであってもなびく。

 それが人間の持ってる業と言えばそれまでであろう。

 だからこそ、そんな事をしても何の利益にもならない、大きな損害になると示す必要がある。

 不正を働く者は、得た利益以上の損失を被る事を教えねばならない。

 真面目に、不正などと無縁に、ごく普通に守るべき事を守って生きてる方がよっぽど楽だと知らしめるために。

 核の数を確認するのはその為である。

 必ず存在する不心得者を見つけるために。

 また、心の弱さ故にやすきに流れようとする者の心にくびきを入れるために。

 そういった者達が心を入れ替えるか、弱さを克服してくれれば良い。 

 だが、なかなかそうはいかないし、相手の良心とこれからに頼るわけにもいかない。

 悪事を決して許さない、決して見逃さないという姿勢が多少なりとも歯止めになればという程度である。

 もし本当に誤魔化しがあったなら、その者に相応の制裁を加えねばならない。

 そのような事態が発生しないようにという防波堤でもあった。

 不心得者や心の弱い者、総じて小心者と言って良いだろうか。

 そういった小心者達であれば、発覚した時の制裁を恐れるもの。

 それを狙ってのものである。



 他でもないヒロタカが、そして父がそうであるから、という側面は否定できない。



 父は財をなすにあたり、決して褒められたものではない所行を行ってきた。

 人も殺してきたし、盗難品の売買に手を染めてもいた。

 そうして資本金を、軍資金を貯めて商売に乗り出している。

 その過程で握った様々な弱みを利用してもいる。

 多少なりとも擁護をするなら、そうした事であっても、基本的に自衛のためにやむなき、という事ではある。

 盗難品についても、盗まれたものを盗難品の売買から買い戻し、本来の持ち主に売り払ってもいた。

 結局は非道な事になってはいたとしても、加害者への報復や被害者への補填という形に近づけてはいた。

 だからと言って御法度破りなのは変わらないが、既に破られた御法度の補填はそう簡単でもない。

 取り締まる側に情報を流し、悪事を行ってる連中の摘発に協力もした。

 商売敵を潰す為でもあるが、多少は世の中が治まっていったのも事実である。

 父が勢力を伸ばしたのは、そうして出来上がった穴を塞ぐ形である。

 表に出ての商売では、基本的に筋を通していた。

 信用第一という、まっとうな指標に則って。



 ヒロタカについては言うまでもない。

 ミサキを引きずり込んできた手口もそうだが強引に事を進めている。

 基本的には、冒険者をやってみたいという我が儘に引きずり込んでるだけである。

 報酬は支払ってるが、本人の意志をくんでるとは言い難い。

 将来的にはそれなりに利益として還元するにしても、道を踏み外してるのは弁護しようがない。



 そんな者達が偉そうに道義だなんだと言うのもおかしなものである。

 だが、踏み外したからこそ、そのありがたみも分かっている。

 約束を守らない以前の問題として、人として信用出来ないのでは困る。

 目先の利益の為に継続的な利益を蔑ろにされてはたまらない。

 勤めを果たさず利益を得ようなどという道理はない。

 働いて得た糧の分しか利用できるものはない。

 それを得る為に皆の協力が必要になる。

 協力し合って目的を達成する仲間を出し抜こうなどと考えては、無駄な争いが増えてしまう。

 そんな事になれば、得られるはずの利益や収穫も無くなる。

 それは絶対に避けねばならなかった。



 そんな問題を引き起こす、道徳心の欠如が一番怖い事だった。

 組織・集団である事の利点を理解出来ず、最も間近な自分の利益だけ考えてしまう。

 その為に組織内において問題を発生させる。

 否応なしに組織は衰退を余儀なくされる。

 不正を許すという事は、最大の利益である組織の存続・発展が損なわれる。

 その中の誰か一人、あるいは少数派だけの利益の為の存在になりはてる。

 結果として、そこに所属する全てが大きな、目に見えない、感知する事も出来ない損害を負う。

 そうした不正は、最初は気づかないうちに進行する。

 気づいてる者もいるかもしれないが、大半の者達は今がそれなりに動いてる間は全く感知出来ない。

 そして、倒産を迎えてあわてふためく。

 誰の責任だと騒ぎ出す。

 警鐘を鳴らしていた者達に耳を貸さなかった事を忘れて。



(それだけは避けないと)

 ヒロタカが懸念するんはそこだった。

 前世において何度か実体験する事になった倒産劇。

 その渦中にあって見聞きした出来事の全て。

 それらがヒロタカに危機感を抱かせていた。

 だからこそ、先手をうって、少しでも懸念を排除していきたかった。

(最悪、切り捨てなきゃならなくなるしなあ……)

 解雇などという甘いものではない。

 文字通り、切り捨てねばならなくなる。

 モンスターの出没するこの世界において、それはさほど難しくはない。

 外に連れ出し、そこで始末すれば良いのだから。

 亡骸はモンスターが始末してくれる。

 追求されても、「モンスターにやられました」で終わる。

 捜査能力においてさほど発展してないこの世界、やるのは難しい事ではなかった。

 だが、出来ればそれだけは避けたいものだった。

 他の話もよろしく



 更新中はこちら。

「転生したけどウダツの上がらない冒険者は、奴隷を買う事にした」

http://ncode.syosetu.com/n9583dq/



 ちょっとお休み中はこちら。

「クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-」

http://ncode.syosetu.com/n7595dj/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。




活動支援はこちら↓

あらためて支援サイトであるファンティアの事でも
https://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/501269240.html
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ