44話 目に見える目標があるというのは便利なものです
一巡して戻ってきたヒロタカ達は三人組と合流する。
こちらも順調にモンスターを倒して回ったようで、それなりの成果をあげていた。
数は少ないが、その分回数を増やして巡っていく。
合流した事を幸いに、ミサキの付与をかけてもらい少しでも生還率を上げる。
無茶はしないように、無謀な真似はしないように言って送り出す。
ヒロタカ達はそのまま待機に回る。
送り出す前に付与の魔術を使って三人組を強化しておく。
さほど長時間は保たないが、最初の戦闘くらいはそれで簡単にしのげるはずだった。
「けど、あまり必要ないと思います」
三人組の年長がそう言った。
「あの程度なら俺達だけでどうにか出来そうですから」
最初にクロスボウで攻撃し、それから突撃していくというやり方だからだろう。
負傷した敵を倒すのはさして難しい事ではない。
どうにか出来るというのは、彼等の率直な感想なのだろう。
それでも援護があればより簡単に倒せる。
何が起こるか分からないし、備えはどれだけあっても良い物である。
そんな三人組を見送ったヒロタカ達は、次の出発までの時間をのんびりと過ごす事になった。
ただ、三人組を見送る新人達の瞠目した顔が少し気になった。
「あいつらが気になるのか?」
驚いてる新人達に尋ねると、皆一様に頷く。
「あんなに強くなれるんですか……」
感嘆の声が彼等の気持ちを分かりやすくあらわしていた。
なるほどと思う。
犬頭は比較的よく見るモンスターだが、対処が面倒な奴らである。
レベル3の戦闘技術があれば互角に戦えるが、そんなレベルの人間は滅多にいない。
なので、村などの近くに出てきた場合は、村人総出で立ち向かう事になる。
そんなものを、わずか四人で倒して回ってるのだ。
しかも、一人は御者で、実際に戦闘に加わってるわけではない。
それだけで新人達にとっては驚嘆するべき事である。
「お前らもあそこまで行けるぞ」
新人達にそう言う。
「とにかく二ヶ月頑張れ。
それだけ耐えれば、あいつらくらいになれる」
「本当ですか?」
「ああ。
二ヶ月前は、あいつらもお前らと同じレベルだったんだから」
「?!」
その声に新人達は更に驚いた。
そして希望を抱いていく。
犬頭を難なく倒す先輩達は、わずか二ヶ月であそこまで到達した。
なら、自分達だって────そう思ってもおかしくはない。
実際、それだけの可能性は十分にある。
何度か帰ってきた三人組を迎えて見送ってからヒロタカ達も再度出撃する。
ついてくる新人達は、午前中よりやる気に満ちた表情でついてくる。
現金なものだが、実際に自分達がどこまで行けるのかが分かれば、やる気も出る。
目標とするべきものを見据えた新人達は、三ヶ月後の自分の姿を三人組に重ねているのだろう。
やる気があるのはありがたい。
そんな新人達を率いて、ヒロタカも午後の作業へと向かっていく。
特に滞る事もなく作業は進んでいく。
犬頭は矢と剣に倒れ、核をとられていく。
霧となって消えていく死骸を見ながら次の地点へと向かい、モンスターを倒していく。
戦力として拙い新人達であるが、ヒロタカが先に立って進んでいけばさほど問題は無い。
付与の支援がやはり大きい。
攻撃が次々にあたり、モンスターを倒していく。
五十体近くやってくる敵も、それで一気に倒す事が出来ている。
この調子でいくなら、二ヶ月で新人達も三人組のところまで到達しそうである。
(そしたら、組み分けをどうすっかな)
先の話になるが、今の新人達をどうやってふりわけようかを考えてしまう。
今は単純にヒロタカと三人組とで分けている。
しかし新人達が今後もやってくる事を考えると、更に組を分けていかねばならない。
単に人数を合わせるだけで終わらせるわけにはいかない。
レベルを考え、どうやって上手く回るようにしていけるか。
それを考えねばならなかった。
(どうしたもんだかな)
少しずつ何かが達成されてるはずなのだが、それと同時に問題も発生してしまってる。
小さな事で大した問題ではないかもしれないが、解決しないでおくわけにはいかない。
レベルを上げて強くなる、というだけではおさまってくれそうもなかった。
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