32話 面談面接は呆気なく終わる
朝起きて、
支度して、
メシを食べて、
外に出て、
モンスター退治。
そんな日々が定着している。
目出度くレベルアップし、新たに三人の下僕……もとい、配下をつけてもそれは変わらない。
新人三人は、いきなりモンスター退治というブラックな状況に放り込まれて面食らってはいたが。
それでも四苦八苦しつつもモンスターを倒していっている。
なんだかんだで魔術の支援があるのでそこまできつくはない。
だが、心理的な負担はやはり大きいようだった。
いくら実力が底上げされてるとはいえ、モンスターに突撃していくのは度胸がいる。
慣れもあるが、そう簡単にはいかない。
それに、魔術の効果が切れたら、という心配もある。
一日も早いレベルアップが求められた。
その為に、おびき寄せの数を増やしていた。
とりあえず二カ所を追加し、回る場所を増やしていく。
手間は増えるが、集められるモンスターも多くなる。
手に入れる報酬も経験値もそれで多少は増やす事が出来るようになる。
それでもレベル3まで一ヶ月以上かかる事に変わりはない。
どうしても時間が必要だった。
救いなのは、モンスターがどこからともなく表れてくる事である。
しかし、いったいどこから来るのやら。
それがモンスターであるとはいえ、やはり不思議である。
金と経験値が増えれば良いと思って、ヒロタカはそれ以上考えない事にしているが。
御者の孫と面談したのはそんな中でであった。
町に隣接する田畑を耕作している集落に出向いてである。
遠回りになるが、モンスター退治の帰り道に立ち寄って会う事になった。
町から離れた村と違い、数軒程度の集まりである。
町まで歩いて一時間程度という距離なので、これくらいの大きさで十分なのだろう。
自給自足に近い形にならざるえない村だと、その内部で様々なものが自己完結しないといけない。
その為、農作業だけでなく鍛冶などの職人技術も必要になってくる。
それらを自力で為す必要がない分、人数は少なく出来るのかもしれない。
御者の家族はその一つにいた。
「初めまして」
頭を下げてくる御者の家族にヒロタカも頭を下げていく。
年齢からすればヒロタカの方がずっと下なのだが、御者の勤め先の子息という事で気を遣ってるのだろう。
ありがたいが、丁寧すぎるとそれはそれで応じる方も気を遣う。
相手も窮屈だろうから、儀礼的な事はすぐに終わらせて本題に入っていく。
「お孫さんが馬などの世話をしてると聞いてるのですが」
「ああ、そうでしたね」
そう言って御者の息子という中年の男が並んでる子供達の一人を指す。
「この子です」
言われた子は、「初めまして」と頭を下げる。
挨拶はちゃんと出来るようだ。
だが、少々想定外だった事がある。
(女の子?)
見た目は野暮ったいが、どう見ても女の子だった。
三つ編みにオーバーオールがカントリーっぽいその娘は、確かに御者の孫だという。
小さい頃から馬や動物に親しんでるせいか、それらの扱いが上手い。
おかげでこの集落において、動物の世話や扱いを一任されてるという。
なかなか大したものだ。
それでいてまだ十四歳だという。
「そろそろ嫁の貰い手にあらわれてもらいたいんだがなあ」
御者はそんな事を言う。
この年齢で結婚や出産が当たり前の世界なので、それも当然だろう。
だが、娘の方は動物の相手が楽しいらしく、そういった気配もないのだとか。
それはそれで嘆きたいところであるが、好きな事を辞めさせるのも酷である。
ならばいっそ、とヒロタカに紹介したわけである。
「どうでしょうか?」
「かまわないよ」
選んでる余裕もないし、人手はすぐにでも欲しい。
使える人間なら、人間性に問題がない限り入社(?)させていきたかった。
「ただ、モンスター退治だからね。
そういう所に出向く気があるかどうか」
そこが一番の問題だった。
さすがに無理強いするわけにはいかない。
「承諾してくれるといいけど」
ここをどうやって乗り越えようか、如何にして説得するべきか。
一番の難題だった。
「いいっすよ」
呆気ないくらいに簡単に頷いてくれた。
更新中はこちら。
「転生したけどウダツの上がらない冒険者は、奴隷を買う事にした」
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