28話 実力を底上げした成果はめざましいものだった
新人三人を引き連れたヒロタカがモンスターへと向かっていく途中で、アオイはクロスボウを撃っていく。
魔力は付与してないが、それらは簡単にモンスターを貫いていった。
それが終わってからヒロタカは一気に突撃していく。
「行くぞ!」
声をかけたかどうかというあたりであった。
三人は呆気にとられてすぐには動けなかった。
しかし、前を進むヒロタカを見て後をおっていく。
モンスターは怖いが、やるしかない。
そんな三人の前で、ヒロタカが犬頭を一気に三体ほど倒していった。
続く三人も同じようにモンスターに剣を振りおろしていく。
魔術がかかってるせいで簡単に当たっていく。
犬頭は次々と倒れていく。
モンスターからの攻撃も受けるが、すぐにそれらも回復していく。
ミサキが攻撃を受けた者達を治していっている。
おかげで三人は傷らしい傷も負わずにモンスターを倒していけた。
その間、無我夢中だったが、周りにいるモンスターが全部倒れたのを見てようやく動きを止める。
感慨も何も無い。
頭が真っ白になったまま先へと進み、気づいたら終わっていた。
そんな感じだった。
しかし、彼等の足下には確かに犬頭のモンスターが倒れてる
そぺらのうちのいくつかは、彼等が倒したものである。
「やったのか?」
「やったんだよな」
「俺が、これを?」
まだ信じられないようだった。
だが、確かにモンスターを倒したのだ。
全員、その事にも呆然とする。
「おい、まだ終わってないぞ」
ヒロタカが喝を入れる。
「核を抜き取らなくちゃならない。
それに、止めを刺し切れてないのもいるかもしれん。
確実にこいつらの息の根を止めろ」
「「「はい!」」」
言われて三人は、手にした剣でモンスターの頭を叩いていく。
既に絶命していたものもいたが、まだかろうじて生きていたものもそれで倒れていった。
それで戦闘は本当に終わっていった。
(すげえな)
核を抜き取りながらヒロタカは、成果に驚くと同時に満足していた。
三人はまだ頭が真っ白なようだったが、それでも言われた通りに行動してくれた。
おかげで戦闘は今まで以上に楽になった。
魔力の付与で戦闘力が上がってるので、モンスターと互角に戦えてる。
そのおかげで今までの半分どころか更に短い時間で戦闘が終わった。
分け前は減るが、安全性の確保から考えると意義は大きい。
今までヒロタカ一人だけだったのが不安要因でもあるが、これならやっていける。
(早くレベルも上げていかないとな)
今までより時間はかかるが、それでも二ヶ月もあればどうにかなる。
早くそこまで到達したかった。
午前中が今までより早く終わった事で休憩時間が長くなった。
相変わらず暇をもてあましてしまうが仕方が無い。
もう一度新人達に剣を振らせてやり方をおぼえさせていく。
何度かモンスターとの戦闘を行ったせいか、それなりにさまにはなっていた。
とはいえ、ヒロタカの目からすると素人くさく感じてしまう。
まがりなりにもレベル3になった事でそう見えるのかもしれない。
だが、彼等が一生懸命なのは分かる。
これからモンスターとやりあっていくのだと思えば、嫌でも真剣にならざるえないのだろう。
無理強いはしたくないが、強制的にこういった状況に放り込むのも、真剣さを促すには良い手段なのかもしれなかった。
(けど、このままじゃな)
取り分が減ってしまう事について考えていく。
収入もそうだが、一人あたりの経験値が減るのが痛い。
倒せるモンスターの数がほぼ一定だからなのだが、どうにか出来ないかと考えてしまう。
(いっそ、罠を増やすか?)
それでどれだけ増えるか分からないが、もしかしたら分け前の減少を多少は緩和出来るかもしれない。
しかし、今の段階ではそれは危険に思えた。
まだレベル1にもなってない者達である。
暫くは安全性を優先したかった。
(まあ、先の話だな)
いずれは罠を増やす予定ではいる。
人が多くなれば巡る場所を増やさねばならないのだから。
そうでなければ稼ぎを確保する事が出来ない。
まずは新人達が一人で動き回れるようになるまで一緒に行動していく事になる。
それまでは我慢するしかない。
(あと、一緒に行く奴も用意しないとな)
そちらも気がかりだった。
単に戦闘員を増やせばよいとはならない。
今そうしてるように、荷物持ちのロバなどを引く者も必要になるだろう。
モンスター退治はモンスターとの戦いだけを考えていれば良いというわけにはいかない。
そこに至るまでと、それが終わってからの事も考えていく必要がある。
三人が彼等だけでまわれるようになったら、専属で荷物持ちなどを用意した方が良いかもしれなかった。
広範囲に渡って行動するなら、どうしても人数を分散させねばならない。
その時彼等に従事する者がいなければお話しにならない。
(そっちも打診しておくか)
また父のすねをかじる事になりそうだった。




