27話 いきなりで申し訳ないが、つまりそういう事だ
集めたのは三人。
年齢は結構幅が広い。
一番の年少者で十四歳。
間に十七歳がいて、一番高いので二十一歳だという。
いずれも三男四男で家を継ぐことのない者ばかりである。
大半が家の手伝いをしていたが、当然ながら無給であった。
珍しい事ではないが、それだけにおかれた境遇から抜け出す機会を欲していたようだった。
だからこそ、使用人として働かないかと言われた時に、一も二もなく飛びついてきたのだろう。
人事担当(便宜上そう呼ぶ事にする)の話では、どの村でもだいたい同じようなものだったという。
おかげで人を集めるのに苦労はなかったとか。
その中で更に選んだ三人である。
彼等の今後に期待────はさほどない。
そもそもとして、どれくらい使える人間なのかも分かってない。
技術はともかく性格や人間性などは実際に接して探っていくしかないのだ。
やらせてみせて、どのように動くのかを確かめるしかない。
モンスターとの戦闘で。
「危ない作業もやるってのは聞いてるんだな?」
三人にそれを確認していく。
問いかけに三人とも頷いた。
「場合によってはそういう作業もあるとは」
「けど、何をやるかは全然」
「町の外に出るから、モンスターが出てくるのは分かるんですけど」
このあたり、ちゃんと言い含めててくれてるのでありがたい。
さすがにモンスターとの戦闘とは言ってなかったようだが、それでも危険な状況に陥る事は覚悟してるようだった。
「まあ、言われた通りにやっていけば問題は無い」
事実である。
これまでの一ヶ月半で悲惨な打撃を受けた事は無い。
「これだけ人数がいれば危険はもっと減るし、楽にやっていける。
だから、俺の言う事をよく聞いていってほしい」
さすがにこれだけは確実にやってもらいたかった。
「でないと、どんな事になるか分からないからな」
ゆれる馬車の上で、三人は唾を飲み込んだ。
喉がからからに渇いている。
事前に武器や盾、革の上着などは渡している。
だからそれらが必要になるかもしれない、とは思っていたようだった。
それらを身につけさせ、目的地まで向かっていく。
いつもの場所に入っていき、馬車を止めてそこから降りる。
森の中という事もあって、三人は不安をあらわにしていた。
モンスターに襲われるかもしれないのだから当然である。
まさかそのモンスターを倒しにいくとはこれっぽっちも思ってない。
そんな彼等に、ヒロタカは剣を抜いて最低限の事をおしえていく。
「いいか、モンスターを相手にするときのやり方を教える。
俺と同じように動いてくれ」
「は、はい!」
「こうですか?」
「ええっと……」
三人とも、盾を構えて左半身を前にする格好をする。
「そうそう。
そこから剣を上に振り上げて、おろす」
もっとも基本的な動作だ。
それをやってみせてから、三人にもやらせる。
初めて剣を持ったためか、動きがぎこちない。
それでも何回か繰り返す事で、少しはまともに動けるようになっていく。
「そんな調子で、モンスターが近づいたら撃退してくれ」
「「「はい!」」」
「よし、じゃあ行こう」
そう言ってヒロタカは先頭に立って歩いていこうとする。
御者も馬車からロバを解放し、必要な荷物をロバに背負わせていく。
ミサキとアオイは言わずもがな。
だが、何をするのか説明を受けてない三人はうろたえるしかない。
「あの、どこに?」
「行けば分かる」
有無を言わせずヒロタカは進んでいく。
ミサキとアオイ、御者にロバも続く。
置き去りにされると思ったのか、三人は慌ててその後ろについていった。
そして、モンスターのおびき寄せ場所に近づき、
「嘘でしょ」
「本気ですか?」
「いや、それは」
予想通り三人はうろたえる。
彼等の先ではモンスターが大量に餌に群がってるのが見える。
死角になってるので宏隆達の事は見えてないが、近くにモンスターがいるのは変わらない。
「安心しろ、魔術をかけておけばどうにでもなる。
俺が実際にやって確かめた」
実績に裏打ちされた事実を口にしていく。
「だからどうにでもなる。
そこの魔術師がお前らにも魔術をかけてくれるしな」
視線がミサキに集中した。
恥ずかしそうに俯くが、三人はすがるように見つめていく。
ついでに盛り上がってる胸のあたりなどにも視線が飛んでしまう。
そのあたりは、野郎の本能なので仕方が無い。
決して彼等に悪気があったわけではない。
無いはずである。
「そんなわけだから、自信をもってやっていこう。
なに、三人いるんだから、どうにでもなる」
安請け合いのような気楽な口調に、三人は安心よりも不安を感じていく。
しかし、ミサキが装備に魔術をかけていくあたりで腹をくくっていった。
「これ、やらないと駄目ですか?」
「これから先、うちで仕事をしたければやってもらう。
嫌なら無理強いはしない。
実家に帰ってくれてかまわん」
それで三人も覚悟を決めた。
目の前のモンスターは嫌だが、家に帰るのはもっと嫌だった。
冷や飯ぐらいはごめんである。
「じゃあ、行くぞ」
促されて三人は立ち上がる。
それを見てアオイはクロスボウを構えた。




