24話 目標にしてたレベルがどれだけのものかを確かめてみる
翌日。
上がったレベルで何が出来るのかを確かめるべく、三人はモンスター退治へと向かっていく。
この日はいつもと違い、前日からの釣り餌は用意してない。
時間はかかるが、新たに罠を設置してモンスターを少しずつおびき寄せていく。
周旋屋で魔力の付与をしてないからだ。
今まではそれがあったおかげで、本来のレベル以上の強さを発揮していた。
しかし、レベル3に到達した事でその必要性が薄れている。
ミサキの付与があるので、それで代用が出来るはずだった。
餌をそれぞれの場所につり下げていき、全部を回ったところで最初の罠の所に戻る。
全ての罠を一周するのに、一時間以上はかかる。
踏みならしたとはいえ、森の中を歩くのだから時間がかかる。
最低でも一時間以上、それだけの時間があれば、モンスターもやってくる。
行って見れば、やはりモンスターが来ていた。
全部で六体。
いつもよりは少ないが、魔力付与の恩恵なしだとどうなるか分からない。
それでもヒロタカ達は仕掛ける準備をしていく。
「クロスボウはとりあえず控えておいてくれ」
「はい」
いつもならアオイのクロスボウで先制しているのだが、今回は控える。
まずはヒロタカの刀剣レベルと、ミサキの魔術でどこまで出来るか試すためだ。
「魔力付与は可能な限りつけてくれ。
核を使ってかまわない」
「分かりました」
言われるがままにミサキが魔力を付与していく。
ヒロタカが手にした剣に、身につけた鎧。
それらが魔力によって本来以上の性能を発揮していく。
「……鎧が少し軽くなったかな」
「そうですか?」
「これも魔術の効果なのかもな」
その分動きやすく回避もしやすくなる。
まだ確かめてないが、モンスターの攻撃も大分やわらぐかもしれなかった。
「それじゃ、行ってくる。
回復よろしく」
「はい」
「アオイも、周りに気をつけておいてくれ。
それと、クロスボウの援護も必要ならたのむ」
「分かりました」
指示としては細やかさに欠けるかもしれないが、必要な事は伝えていった。
あとは二人が頭を使って動いてくれるのを願うしかない。
それについては大丈夫だと思いたかった。
「じゃあ、やるぞ」
かけ声と共にモンスターにむかっていった。
近づいてくるヒロタカにモンスターも気づく。
それらは一斉にヒロタカに襲いかかってくるが、まずは魔力を帯びた剣が奴らを襲った。
一振りした剣は、今までと同じくらい簡単にモンスターを切り裂いた。
片手で振るったにも関わらず、肩から胸を切り開いて相手の体を通り抜ける。
体の前半分が盛大に二つに割れていった。
その間に他のモンスターが襲ってくるのだが、それらの攻撃は鎧によって弾かれていく。
もとより鎖帷子は犬頭のモンスターの攻撃をかなり軽減してくれる。
ぶつかった衝撃は消える事はないが、体を引き裂く事は無い。
しかし今回はその衝撃すらほとんど感じなかった。
やはり魔力付与による影響は大きい。
損傷らしい損傷をうけないヒロタカは、剣を次々に振ってモンスターを倒していく。
レベルが上がったせいか、どこに打ち込めばよいか、どういう太刀筋が良いかが分かる。
頭で考えるというよりは、直観的にそう感じる。
そして体もそれに従って動いていく。
剣を持つ腕だけではなく、体の動かし方や足の運び方も自然とそれに適した所に向かっていく。
結果として鋭く速く重い一撃が相手に飛び込む。
逃げる事も出来ず、犬頭はそれを受けていく。
損害も魔術で回復していくので苦にならない。
そもそも傷と呼べるほどの衝撃すら受けていない。
六体の犬頭はほとんど一瞬で倒れていった。
「こりゃあ凄い」
レベルアップと魔術支援の複合は、六体程度のモンスターなどものともしなかった。
手応えとしては今までとさして変わらない。
周旋屋での魔力付与があった時とほとんど同じだった。
やはりレベルアップの効果は大きい。
これなら自分達だけでどうにかやっていけそうだった。
(金を払わないで済む……)
当初の想定以上の出費だった魔力付与が不要になる。
その事がありがたかった。
「核を取ったら次に行こう。
もう少しこの感触を試してみたい」
ミサキもアオイも異論は無かった。
御者が連れてるロバに核を積み込み、先へと進んでいく。
その後の戦闘も同様に進んでいった。
五体前後では全く相手にならなかった。
即座に沈黙させていく。
午前中で一回りして帰ってくる時に、消耗らしい消耗など全くなかった。
これならいつも通りでもいけるのでは、と感じた。
午後になって一周した時にそれを確信する。
時間を置いて、ある程度モンスターが集まってる所を狙っていったが、結果は今までと同じだった。
ミサキの付与と回復により、損害は全くない。
攻撃だけでなく防御にも付与をしてるのが大きいようだった。
ついでにアオイのクロスボウにも付与をして攻撃をしてみた。
これまた絶大な効果を発揮してくれる。
今までは、当たっても倒す事は出来なかったが、魔力を付与してからは高確率で一撃必殺になった。
その分核の消費も激しく、使いどころを考える必要はあったが、得られる成果を考えれば十分黒字になる。
欠点をあげるなら、ミサキの魔術の効果時間である。
周旋屋における魔力付与は、威力もそうだが効果時間を長くしておく必要があった。
そのために料金が跳ね上がったのだが、一日の活動で切れる事はなかった。
ミサキが使う場合はそこまで長い時間を期待してはいない。
なので、一回の戦闘の間保つ程度の効果時間でやっている。
その為、戦闘になる毎に頻繁に魔術を使わねばならなかった。
とはいえ、それでも問題になるわけでもない。
モンスターとの戦闘時に効果を発揮してくれれば良いのだから十分だった。
戦闘においては、もう周旋屋に金を払って戦闘力を底上げする必要がなくなった。
21:00にも公開予定。
そして、他の話もよろしく。
更新中はこちら。
「転生したけどウダツの上がらない冒険者は、奴隷を買う事にした」
http://ncode.syosetu.com/n9583dq/
ちょっとお休み中はこちら。
「クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-」
http://ncode.syosetu.com/n7595dj/




