23話 どれくらいの効果があるのか分からないから結構迷う
モンスターがどこから来るのかははっきりしてない。
果てしなく遠い所から移動してきてるとは言われてるが、それを確かめたものはいない。
押し寄せるモンスターの勢いが、それらの根源に向かう事を許してくれない。
探索のために出発した者達もいるが、それらが有益な情報を持ち帰ったという話もない。
今までで最も遠い先まで辿りついた者達でも、やはりモンスターが発生してくる場所を見つける事は出来なかった。
ある日突然現れたそれらが、いつ、どこからやって来たのかは今も謎に包まれている。
そこまで大きな話でなくても、もっと身近な範囲でも同じ事が言えた。
倒しても倒しても際限なくあらわれる。
それがモンスターである。
おかげで人類は、ただただ損害を増やすだけで、ろくな反撃も出来ていない。
おかげでヒロタカなどは毎日モンスターを倒して稼いでいる。
冒険者もそれは同じで、多くの者達が尽きることのないモンスターによって生活をしている。
とはいえ、それが自分達の生活圏の近くであって欲しいわけではない。
モンスターを倒す事で得られる核は貴重であるが、出来れば住んでる場所から遠い所にいてもらいたい。
都合の良い事だが、そう思ってる者達が大半だった。
ヒロタカも例外ではない。
おびき寄せの釣り餌によってくるモンスターが、どこからやってくるのかは気になっている。
だからこそ、その足跡を辿っていきたかった。
モンスターが拠点としてる場所があるなら、それを潰してしまいたかった。
モンスターによる稼ぎは得られなくなるが、先々の事を考えるとその方が良い。
父に話したように、人の居場所を確保して勢力をひろげる。
その為にもモンスターは駆逐せねばならなかった。
当面は廃棄せざる得なくなった町や村の回復が先だが、そのためにもモンスターを倒していかねばならない。
それも、出て来た所を叩くのではなく、発生してくる根源を潰しておきたかった。
そんなものがあるかどうかは分からないが、拠点や巣などがあるならそれを破壊したい。
その為にも、モンスターの足跡を追跡していかねばならない。
アオイの探知技術を上げているのはその為だった。
餌にやってくるモンスターがやって来た方向を辿っていく。
その為の技術が欲しかった。
その為にもレベルアップである。
日々の積み重ねによってしかこれを成し遂げる事は出来ない。
毎日同じ事を繰り返し、ただひたすらにモンスターを倒していく。
修行僧にでもなった気分だった。
経験値を積み重ねているので、それもあながち間違いではないのだろうが。
その成果を能力表の経験値で確かめ、次のレベルアップを待つ。
一日の成果が多いのでそれ程待つ事は無いが、あと何日と思うとやはりつらい。
一般的な冒険者に比べればべらぼうに早いのだが、そんな事は全く関係がなかった。
他がどうであろうと、自分達がどう感じるかである。
だが、苦行のような日々にも区切りがつく。
モンスター退治を初めて一ヶ月余り。
ようやくレベル3に到達した。
「ようやくだな」
「ええ」
「頑張りましたよね」
自分達の能力表を見て感無量になる。
貯まった経験値が次のレベルにあがれる事を示している。
レベル3がすぐそこまで迫っている。
「じゃあ、やるぞ」
「はい」
「いきます」
三人とも、自分達が上げるべき技術のレベルを上げた。
それによって劇的な何かが起こるわけではない。
ファンファーレが鳴るわけでも、上昇を祝福する映像があらわれる事もない。
ただ、技術レベルの所にある数字が3に変わっただけだ。
それでも三人にには十分だった。
「がんばったな……」
「はい……」
「長かったです……」
それでも一ヶ月半程度である。
定期的にモンスターを相手にしてる冒険者でも数ヶ月から一年かかる。
地道にネズミ退治から始めてるものだと、二年三年の月日が必要になる。
それを二ヶ月に満たない期間で成し遂げたのだ。
異常で異様な事だった。
もちろん三人にそんな事は関係が無い。
ここに至るまでの無茶と無謀と苦痛と苦労を振り返ってしまう。
「モンスター、一日何百も相手によくやったよ」
「魔術、かけまくって大変でした。
核がなかったらどうなっていた事か」
「クロスボウを連射するのも結構大変です。
弦の張り直しは御者さんが手伝ってくれてましたけど」
それぞれ、思う所を色々と口にしていく。
ようやくそれらが報われたのだという実感とともに。
「だけど、これからが本当の勝負だ。
二人とも、これからも頼むぞ」
優しくいたわりに満ちた声だった。
ミサキとアオイは引きつった笑みを浮かべて応じた。
「まあ、なんとか……」
「やるだけやってみます……」
これからもこの男に付き合わされるのかと思うと、レベルアップの喜びも霞んでしまった。
20:00にも公開予定。
そして、他の話もよろしく。
更新中はこちら。
「転生したけどウダツの上がらない冒険者は、奴隷を買う事にした」
http://ncode.syosetu.com/n9583dq/
ちょっとお休み中はこちら。
「クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-」
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