17話 そう見られてもしょうがないかもしれんが、これでも命をはってるぞ
「それじゃ、お願い」
そう言って剣を渡す。
受け取った相手は、それに魔力を込めていく。
十五分ほどして作業が終わる。
差し出された剣を「ありがとう」と言って受け取る。
魔力付与の担当者は特に何も言わない。
不平不満をもってるわけではなく、単に無口なだけなようだった。
所定の費用を払ってその場をあとにして外へと向かう。
途中、どうしても通る受付の前で、
「今日もモンスター退治か?」
と声をかけられる。
「ええ、犬頭を」
「たいそうなもんだ」
受付にいる中年くらいの男はそういって驚いたような仕草をする。
「しかし、どういうもんなんだろうなあ。
お前さんみたいなのがモンスター退治に出るってのは」
「さて、他の方々が何を考えてるのかはさっぱり」
そう言って肩をすくめてみせる。
モンスター退治を仕事としてこなすのは基本的に冒険者である。
国境というか、モンスターとせめぎ合ってるあたりだと、軍隊がこれになる。
しかし、それとは別にモンスター退治に乗り出す者もいる。
その大半が、暇を持てます貴族などだったりする。
する必要のない危険な事にわざわざ突っ込んでいくのだ。
その行動について、多くの者達は疑問を抱いている。
ヒロタカもそうであった。
世間から見れば富裕層であり、貴族などに近い位置にいると思われてる。
また、もともとの理由がRPGじみたこんな世界において、ゲームのようにモンスターを倒してみたい、というものである。
他人の事をとやかく言えるような立場ではない。
しかし、そんなヒロタカからしても、大半の貴族などがモンスター退治に出る時の理由が不可解だった。
『面白そうだから』
だいたいがこの一言に集約されている。
何かしら必要性や必然性があってやってるのではない。
中には、貴族の義務としてそれに乗り出す者もいるが、それは少数派だ。
ほとんどが本当に暇つぶしとしてモンスター退治に出向いていく。
そういったものを多くの者達は『貴族の道楽』と呼んでいた。
軽蔑や呆れがそこに込められている。
そしてヒロタカも周旋屋や他の冒険者からは同じように見られてるらしかった。
「ま、ああいった方々が何をやるかなんて俺なんかには分かりませんよ」
「そうか?」
「そうですよ」
嘘ではない。
実際、彼等の行動原理というか、考えは理解出来ない時がある。
ヒロタカにしても、やってみたいという思いつきも確かにあるが、それ以外にも目的がある。
だが、貴族には本当にそれすらなく、ただモンスターを道楽で倒しに行こうとするものがいるのだ。
命がけでそんなことをする理由がヒロタカには全く分からなかった。
「まあ、モンスターを倒してくれればその分安全になるし。
核を持ち帰ってくれれば、色々と便利だし。
それでいいんじゃないですかね?
考えたって何かが分かるわけでもないし」
「そりゃそうだな」
受付のオッサンもそういって話を終わらせる。
「ま、がんばって来てくれ。
そうすりゃ俺らも助かるからな」
「ご期待に添えるよう努力はしますよ」
言いながら外へ出た。
ただ、考えてみればやってる事は道楽みたいなもんだとも思った。
少なくともこれで生活を支えてるわけではない。
いずれは稼げる用になるかもしれないし、そうするつもりではいる。
しかし、まだ実力でそれが出来る用になってるわけではない。
あくまで金の力で成果をあげてるだけである。
(まあ、それで構わないけど)
実際、これをやりだす前に色々と考えたり計算してみた。
食えるようになる、というよりまともにモンスターを倒せるようになるまでどれだけかかるかを。
見聞きした情報を整理し、独り立ち出来るまでを考えていくにつれ、結論は絶望的になった。
レベル1にもならない、全く技術を身につけてない場合、およそ二年ほどの月日がかかってしまう。
これは、ネズミを相手にある程度の成果をあげながら頑張った場合である。
犬頭を相手に出来るようになると言われるレベル3まで、ネズミ相手でそれだけかかる。
それを今、いきなり犬相手にしている。
しかも、かなり大量に成果をあげている。
普通に考えたらありえない事であろう。
突き詰めれば、金の力を使ってそれを成し遂げてるのだ。
かなりの大金を用いて。
他の者から見たら道楽に思われるだろう。
だからといって、ヒロタカはそこに呵責をおぼえたりはしなかった。
(そんだけのものを払ってるしな)
全く負担もなくこんな事が出来てるわけではない。
普通なら支払えないような出費をしてるのだ。
受け取った対価によって物事を成し遂げてる。
けちをつけるような所は全くないはずだった。
少なくともモンスターの脅威を少しは排除している。
それだけで十分な成果になってるはずだった。
(まあ、時間を金で買ったって事なんだろうな)
普通にやれば二年以上かかるところを、金の力で一日で手にいれている。
それも一日限定で。
そこまでする必要があったのかどうかは分からない。
しかし、やってみればいずれ見返りが大きく期待出来る事ではある。
考えていった末にそういう可能性が見えてきた。
だからこそやってみようと思った。
父に話した、見返り・将来の回収というのは何も嘘八百の出鱈目を並べたわけではない。
さすがに一ヶ月で回収が可能になる地点にまで到達、というのは無理がある。
しかし、二ヶ月もすればその可能性は非情に高くなる。
だからこそ投資としてもちかけた。
出資を求めた。
ヒロタカにとって、これは商売であった。
実際に上手く進むかどうかを自らで試してるだけである。
道楽として楽しんでるだけではない。
(ま、上手くいけばだけどなあ……)
まだどなるか分からないだけに、不安は大きい。
それでも、やれる事をやっていこうと思った。
どのみちそうするしかない。
親に金を出させたのだから。
そう考えてるうちに町の外に到達した。
待っていた馬車に乗り込み、今日も稼ぎに向かう。
車上で揺られてる途中で、ふと考える。
こうやって徒歩より早く、徒歩より遠くに出向けるのも金の力であると。
運搬を楽に出来る事も含めて、他の人間では出来ない事をやってのけてるのだなと思う。
その力を更に有効活用出来ないものかと考えてしまうのはご愛敬であろう。
21:00に続きを出す予定。
それと、他の話も更新してるので、そちらもよろしく。
更新中はこちら。
「転生したけどウダツの上がらない冒険者は、奴隷を買う事にした」
http://ncode.syosetu.com/n9583dq/
ちょっとお休み中はこちら。
「クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-」
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