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第1話【少女と便利屋と遺失物】3

そんな思いに浸っていると、不意に目の前から、コンコンとリズミカルなノック音が響いてきた。どうやら、彼女が指を一心に机に叩きつけているらしい。

その行為をするなら、喋ってくれよ。その行為に意味はあるのか?


……逆に、意味が無い行為なんてあるだろうか?


僕は(おもむろ)に立ち上がり、事務所内の無法地帯へと赴く。そこは裏紙と鉛筆で溢れかえっていた。そこに埋まっている必要なものを取り、彼女の前に置く。

裏紙と鉛筆だ。


「喋らないんじゃなかったんだな」


恥ずかしそうに下を向く少女。長いまつげが揺れる。可愛い。


「気付いてやれなくて、ごめん」


どこの恋愛小説の台詞だよ! と自分でも突っ込みたくなるようなクサい言葉を吐く。

お前の気持ちに気付いてやれなかった、俺が悪いんだ! ああ、俺の天使よ……今こそ、その純白に光るお前の羽根で俺を包んでくれ!

という妄想をBGMとともに脳内再生していると、目の前に先程渡した紙が差し出される。

僕は紙を見て、少女を見て、そしてもう一度、紙を見て、少女を見た。

決して紙を差し出す彼女の困った顔を二度見したかったからではない。そこに書かれた内容が突拍子もないことすぎて。真面目に受け取っていいのか、わからなかったのだ。


「……〈ワタシの 声を 探してくれませんか?〉ですか?」


改めて声に出して読んでみる。神妙な顔で頷く少女。

それを横目に、考察する。

声ってそもそも落とすものなのか? って言うか、生物学的な観点から言って、取り外しできるものじゃなかろう。と言うことは、落とすこともない。彼女が声を失くした理由は、何か精神的な理由からくるものだろうか。それとも、すでに精神的な何か病気で、声を失くしたと勝手に思い込んでいるだけなのだろうか。はたまた『声』というのはただの比喩で、目的のものは他にあるのだろうか。


「……取り敢えず、名前、書いてもらってもいいかな?」


そう言って依頼書を手渡す。

少女はパッと目を通し、急に真顔になって空欄を埋め始めた。

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