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序
その夜、大地は唸り声をあげた。
直下型の大きな揺れが突然に襲い、木々は騒ぎ、地面にひびが入る。
森に囲まれた小さな集落は、ただそれだけでパニックに包まれた。
「何事だ!」
「大地が揺れているぞ!」
「子供と女を守れ!」
しばらくの間辺りに悲鳴と怒号が響き、そして大地は再び眠りについた。
「終わった……のか?」
誰かが呟く。
そうだ。大地震は終わった。終わったが、それの残した爪痕は大きかった。
すすり泣く声。
何名かの村人が、崩れた住居の下敷きになり死んでいた。
「なぜ……こんなむごいことが……」
村人たちはその悲しみの中、ある結論に達する。
この災害を巻き起こしたモノ。
確証はないが、それだけの力を持っているであろう存在は一つしかない。
絶望の中で、誰ともなく、その名を。
「【鉄の獣】が、やったんだ」