【四百文字】終幕
彼女はゆっくりと立ち上がり、強い決心をその表情に託した。
彼女の頭の中ではきっと壮大なストーリーが描かれていて、間違いなくその中心を進んでいる。
そういった彼女の空想に出演できていること自体、なんだかむず痒く感じていた。たとえ友人A役だとしても。
勇んで教室を後にした彼女。私は気を遣うふりをして、彼女を見送った。
そっと覚悟を決める。
彼女が打ち明けてくれたのは、何の変哲もない恋愛の相談だった。ただその片想いの相手が、私の現在の恋人だという点を除いて。
親友という立場から、本当のことをいうのを躊躇ってしまった。
この物語の結末は見えた。
教室に戻ってきた彼女は、怒りと悲しみをその表情に漂わせていた。
声にならない声は、やけに胸に響いた。
その視線で私を貫いていく彼女。
思いきり力を込めた右手で私の頬を叩くと、もうそれ以上何も言わず教室を出て行った。
廊下から聞こえてくる足音の間隔は、歩くそれよりもずっと速かった。