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美味しいランチを食べるには(清酒家)《君の名は? 別冊 シリーズ》

挿絵(By みてみん)


 今日のランチはミーティングルームで、行う事になった。ランチするというよりランチがテーマのミーティングをする為だ。

 三人がテーブルに弁当を置くとゴンと重い音がする。それぞれの包みから円柱形の容器が出てくる。そう最近流行りのスープジャーを特集するために、どういうモノかと、清酒(タバ)ちゃんと井上(いない)と三人で試してみることにしたのだ。


「俺は取り敢えず基本の豚汁にしてみたんだ」

 俺はそう言いながら蓋を開けると、ホワっと湯気が上がり味噌の香りが立ち上る。結構旨そうな香りがするし、見た感じ悪くない。俺でも簡単に豚汁とか出来るのだったら今後も個人的に使っても良いかなと思う。

 横の井上が興味ありげに俺のスープジャーを覗き込んでくる。

「田邊さん、大根や人参大き過ぎるよ! 雑!」

 俺は苦笑する。まあ普通男性が作る料理ってそういうものだろう。しかし、そういう事言うってくるってコイツは小姑かよ! とツッコミたくもなる。

「そう言うお前はどうなんだよ」

 そう言い井上のジャーを覗き込むと、ニラとか豆腐がプカプカではなくミッシリ詰まった赤い何かが見えた

「チゲスープにしたの! 1人前用の鍋の元つかってね」

 得意気に言うが、スープというには具が多すぎる。というか汁を感じない重力感のある何かが見えた。コイツ大雑把だから絶対目分量で、用意した具材勿全て詰めてきているに違いない。しかもそれらが汁吸ってさらに巨大化したようだ。蓋という締め付けがなくなり盛り上がってきている。

「お前こそ雑だろ、サイズ揃ってないし。それに何だよこのミッシリ感は!」

 井上はムッとした顔をして目をそらし清酒(タバ)ちゃんに視線を向ける。清酒(タバ)ちゃんは、俺たちの視線をうけて、自分のスープジャーの蓋に手をかける。

「私はリゾット? です」

 何故か疑問系の尻上がりで言いながら、ソッと蓋を開けると、トマトとチーズの美味しそうな香りが立ち上る。覗くと黄色いコーンとベーコンが散らばった赤いライスのうえにウッスラチーズが溶けていて彩りに綺麗に細く斜めに切られたサヤインゲンが散らしてあり見た目もお洒落。かなり美味しそうである。このまま撮影に使えるのでは? というクォリティーである。そして別容器にカラフルな野菜の入ったオムレツと温野菜サラダらしきものまで用意してある。

 井上もそれらを見て、感心したような声を上げる。

「美味しそう!」

「流石、奥様となった方の料理は違うね~清酒(タバ)ちゃん、料理上手だったんだ」

 褒めると清酒(タバ)ちゃんは恥ずかしげに頬を赤らめて下を向く。そう言えば清酒(タバ)ちゃんは結婚前から、時々美味しそうなお弁当持っていた。彼女が来てから給湯室も綺麗に保たれ、使い勝手もよくなった。天然で大らかな見た目とは異なり、家事能力は高いのかもしれない。いや清酒(タバ)ちゃんがふつうで、井上がガサツすぎるだけなのかもしれない。

「いえ、コレは……夫が作ったもので……」

 思わず、その夫という人物と知人である清酒(せいしゅ)くんと結び付けるのに時間がかかってしまう。彼女の旦那様は俺も良く知る男で仕事も一緒やり、メシも何度か食った事でもある。珈琲に関しては凝り性なのは分かっていたが、内面はかなり男臭くマメに料理するヤツには見えなかった。寧ろ俺に近いタイプと思っていただけに驚いてしまう。俺たちのポカンとした顔に清酒(タバ)ちゃんは慌てて言葉を続ける。

「ズルするつもりはなく、ちゃんと自分で作るつもりだったんですよ!

 でもスープジャーを見せたら、何故か凄く正秀さんが盛り上がってしまって!

 今朝は先にお弁当を作っていて」

 お弁当を嬉々として作る清酒くんというのが想像出来ず、俺は首を傾げてしまう。隣の井上は何かを想像できたようだが、何故か気持ち悪げに身体を抱きしめ震わせる。

「清酒くんって、そういうタイプなんだ、料理するんだ~」

 俺の言葉に、清酒(タバ)ちゃんは元気に頷き、何故か自慢げにニッコリ笑う。

「料理出来るというより、かなりの腕前ですよ! 美味しいですし、お店で出てくるみたいにお洒落で素敵な料理つくってくれるんです!」 

 井上は、顔を引き攣らせる。

「まさか腰くねらせエプロンつけて鼻歌歌ってないよね?」

 なるほど、井上は清酒くんがカマっぽくお弁当を作っている、そういう想像していたようだ。清酒(タバ)ちゃんはブルンブルンと頭を横にふる。

「じゃあ、なに? 味とか切り方とかに姑くらいに厳しいとか?」

 井上はどこまで想像を膨らませているのだろうか? 女の想像力は逞しい。

「いえ、そんな事しませんよ! 全く! でも家事は得意だから色々やってもらえるんですよ――」

 家事能力が高い男性が苦手なような井上とは異なり、清酒(タバ)ちゃんは嬉しそうに、清酒(せいしゅ)くんがいかに素晴らし夫であるのかをしゃべりつづける。自慢というよりも、完全惚気で、旦那様への大好きオーラ全開。お弁当を食べる前に、『ごちそうさま』という気分である。


 資料としてそれぞれの弁当を撮影してから、実食することにする。しかし三人が作ったお弁当ハッキリ言うとまともに食べられるものだったのは清酒くんが作ったものだけだった。俺のはやはり野菜が大きかったようで生煮えで旨くなかったし、井上のも具が多すぎて味が具材全てに行き渡っていなかった。逆に清酒くんの作ったものは、チーズの兼ね合いもよく旨過ぎた。ベーコンの風味や味を生かして上品だけどコクがあり、何ともプロっぽさを感じる味わいになっていた。このいらない敗北感は何なのだろうか? 

「やはり、保温で調理するだけに、お湯だけで調理しやすいように具材を用意するのがコツですね」

 一人で真面目に検証している清酒(タバ)ちゃんを見つめ、井上も何かをじっと考えているようだ。井上の場合女だけに、余計に敗北感も強いのだろう。

 そんな時、清酒(タバ)ちゃんのスマフォが震える。その旦那様から電話きたようだ。

「美味しかった♪

 ……確かに何か少し足りなかったかも!

 あっパセリとか風味高いモノ入っていたらもっと美味しかったかもね~

 ……黒胡椒もありかも!」

 二人で充分旨かった弁当を更なる素晴らしいモノにする為、電話会議が行われている。細かく拘り、とことん突き詰めて仕事するのは清酒(タバ)ちゃんも同じだった事を思い出す。この夫婦をこのまま走らせてそれを記事に利用出来るかもなって事を考える。この夫婦の事だから記録もしているだろうし。

 しかし井上は違う風に考えたようだ。清酒(タバ)ちゃんのスマフォを奪いそのまま話し出す。

清酒(せいしゅ)くん、久しぶり♪ 清酒(せいしゅ)くんの美味しかったわ~ご馳走さま♪

 今日清酒(タバ)ちゃんに私と田邉さんのジャー渡すから、明日三人分ヨロシク~♪ 勿論材料費も支払うし。領収書出してくれたら良いから!

 ……違うわよ! 検証で♪ ジャーのメーカーによる保温性等の違い見てみたくて条件同じスタートしたいの――」

 その為に製作風景などの撮影等も指示して、積極的に協力してもらい、チャッカリ弁当もゲットする方向ですすめている。厚かましいと呆れながらもあえて口を挟まないでおく。料理研究家に依頼してとかの手間を考えると、この夫婦に丸投げする方が編集部としても有り難い。一石四鳥の井上の行動を止める理由はない。


 真面目な清酒(タバ)ちゃんは横でその指示をメモしている。清酒君も喜んでかどうかは分からないが、井上の口調からも依頼を了承してくれたようだ。この企画清酒(タバ)ちゃんに担当しておけば清酒君も協力せざるえないだろう。付き合いの長い分俺の思っている事も分かったのだろう。電話を清酒(タバ)ちゃんに返した井上が俺の方を見て親指を立ててニヤリと笑った。



※   ※   ※


 スープジャーは最近私も活用しています。

 このスープジャーの良いところは、ホカホカのお弁当がお昼に楽しめる事、お手軽にお弁当を作成する事。そしてなりよりも素敵なのはお弁当の中身が人から見えにくい為に雑に入れてもバレないので、お弁当作りをすることに敷居が高くなとう所です。私の夫はこのジャーそのものが重い為に、水筒とお弁当も持っていくのを嫌がりおにぎりだけをもっていっています。


 このスープジャーでの注意事項は。肉とか魚介類はあらかじめ火を通しておくこと、お湯で火が通るように具材を小さ目にカットしておくこと。それさえ踏まえたら本当にお手軽にお弁当を作ることができます。


 私の最近のお気に入りは、なんちゃってチャンポン弁当。

 豆乳もしくは牛乳に和風ダシと鶏がらスープで味付けしたものに、くずきりとか春雨などの麺っぽいものとお好みの野菜と具材をいれるというもの。ヘルシーですし、本当にチャンポンっぽい味になるところが面白いです! 良かったらお試し下さい!


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