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言いそこ間違い (鈴木(薫)家)《みんな欠けているシリーズ》

まだ、本編はありませんが、鈴木薫の結婚後のエピソードです。

『言いそこ間違い』って言葉自体が言い間違えているというか、言い損なっている言葉なそうですね。『言い間違い』と『言い損ない』が合わさった 造語とも言われています。

 私の夫は、元プロスポーツマンだった事もありお勉強の方はあまり得意ではなかったようだ。一芸に秀でていると、勉強がかなり残念でも高校に入れるし、就職も決まるという羨ましい事があるようだ。

 私のようにひたすら勉強だけを頑張ってきて、幼稚園から受験に勤しみ、就職も学力の高さと笑顔でなんとか今の仕事についた私からしてみたら羨ましい限りである。


 そして現在、事故により引退を余儀なくされた彼は現在スポーツルポライターという職についているものの、国語はあまり得意ではなかったらしく、漢字の間違えや、馬鹿な言い間違えを意外と見掛ける。私が気が付いた範囲で指摘してフォローを入れているが、夫はそんな私にむくれた表情を返す。とはいえストレートに想いを伝えて心に響いてくる彼の言葉や文章は魅力的。そう言う持ち味があるからこそ仕事の依頼もそれなりに来ているのだろう。そういった誤字脱字といったミスは、彼の仕事において小さい問題なのかもしれない。


「いや~今日ゲストが高橋景子だったけど、凄かったよ! 胸がドーンという感じで」


 TVの仕事から帰ってきて嬉しそうに語る夫に、少しムッとしてしまう私。高橋景子とは今人気の巨乳アイドルでたしか、Gカップあるらしい。なんとかBカップの私からしてみたら『G? 何? その単位』という感じである。男だからそういう、色っぽい女性を見て嬉しくなるのは分かるものの、女らしい女性全般に必要以上に嫉妬を感じてしまう。

 

 私は『ふーん』と怒りを抑えて、出来る限りそっけない言葉を返しながら、食卓に座る夫の前にご飯のはいった茶碗を置く。やはり怒りが少し出てしまったのか、ゴトンと思ったよりも大きい音を立ててしまった。


「ああいうのを、キュッポンキュというんだろうな」


 夫は私の怒りに気が付いていないようで陽気にそんな事を言ってくる。


(え?


 キュ……


 ポン……


 ……キュ?


 …………それって)


 思わず、ポンキュポンの体型の女性ではなく、キュポンキュの女性の体型が頭に浮かぶ。胸が小さくてお腹がポンっとでていてそのまま尻すぼみ体型でハンプティーダンプティーのような身体。


 ブッ

 

 怒りが一気に霧散して吹き出してしまった。


「その言葉、本人を前に言ってないよね?」


 笑いながら言う私に、夫は太い眉を寄せる。


「そんなセクハラな言葉、本人を前に言うわけないだろ!」


 夫は私が何故こんなに笑っているのか分からないようだ。ムッとしたように笑っている理由を話せを表情で訴えてくる。


「キュ、ポン、キュだとね、こういう体型の女性の事になってしまうの」


 私は両手でキュポンキュな体型を示しながら説明する。


「……」


「ポンキュポンだよ……グラマーな女性を示すなら」


 夫は少しむくれた顔で、お箸をもって黙って食事を始めてしまった。私は笑いが止まらずしばらく一人で笑っていた。おかげで、今後グラマラスな女性を見ても、それほど怒りを感じなくなりそうだ。夫にはそれらの女性は『キュポンキュ』に見えているかと考えると寧ろ楽しくなってくる。笑い続けている事を怒り出した夫に、その事を伝えると呆れられる。


「あのさ、お前も分からないかな? 男って誰もが巨乳好きって訳ではないぞ」


 それはそうだろう巨乳で柔らかくて小さい子が好きならば、私と結婚なんてしていないとは思う。


「それに、結構目の前で見ると退くぞ! 嬉しいというより、『ウワッ』って感じで。そんな事に浮かれる程、ガキでもないし」


 夫のいう言葉も理解できるし、自分が勝手に嫉妬しているのが馬鹿なのも分かっている。私はその事に恥ずかしくなる。何故かそんな私を見て夫は男臭い顔でニヤリと笑う。


「もしかして嫉妬してくれてるの? 可愛いよなお前も」


 その言葉に顔が熱くなるのを感じた。夫は年下で甘えん坊のくせに、愛情表現は俺様な態度と口調になる。素直に『可愛い』という言葉をうけるのも恥ずかしくて私はプイっと横を向く。そんな私をニヤニヤ見つめる夫の視線を感じながら。


「それだけ、俺の事好きって事だよな」


 調子にのった顔でそんな事も言ってくる。自分に自信がないからとか他に色々理由はあるけれど、それをそんな単純な言葉で片付けてしまう夫の言葉に、何故か癒される。

 余計な事とか色々考えなくても良い、好きだから一緒にいて結婚した。それでいいのだと。


「……まあね」


 顔を赤くしながら答えると、夫は子供のように無邪気な表情で嬉しそうに笑った。その表情を可愛いくてなんか胸がキュンとした。「カワイイ」と言ったら怒るので止めておいた。

コチラは、『結婚式マナー読本に書いてなかった事』にも登場し、『みんな欠けている』シリーズのメインの主人公の鈴木薫の物語です。http://ncode.syosetu.com/s1345a/


この物語に出てくる二人の恋愛物語『毀れた道の歩き方』をいつか書けたらなと思っています。

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