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実はちょっと力を入れた短編

俺の異世界転移、目覚めたら神から課題を押し付けられた件。

作者: 和琴
掲載日:2026/09/13

朝、トラック。

そうだ、幼馴染の目の前で俺は…

いつの間にか、真っ白な空間に立っていた。


そうか、俺の青春、終わったのか…

こんな何もない空間、まるで修行の場みたいだ。


修行僧になって"慧眼"でも身に着けるかな…

胡坐を組んで暫く座っていると、声が聞こえた。


ーー目を開けなさい。


目を開けると、白い空間には揺らぐ赤い文字が表示されていた。

ーー

あなたへの課題です。

異世界転移

チート能力

神様

ステータス

ギルド

美少女

魔王

勇者

無双

周囲からの評価


あなたに好きな能力をあげるので、

これを満たす物語をあなたの人生を賭け築いてください。

見たいのです。私が。

ニヤニヤとしながら。

ーー


それを見て寒気がした。

殺されたのか、偶然拾われたのか。

様々な可能性が思い浮かんだからだ。


「じゃあ3つ、能力をくれ。」


考えていても、仕方がない。


ーーーー

どうぞ。

面白ければ。


面白く なければ。

ーーーー


最後の一文が、黒く黒く滲んでいる。

人々のうめき声のような声が、遠くから聞こえる中

俺は高らかに宣言した。


「一つ!異世界と現世を移動する能力!

 これがないと、あんたの課題…

 始まらねぇはずだ!」


ーーー

面白い、続けろ。

ーーー


「二つ!!

各要素の匂いを、嗅覚や感覚として

受信できる能力!

おっと、その…美少女は想い人が居るかどうかぐらい

分かるように気を利かせてくれよ。」


ーー

ああ、なら急いで片付けろ。

希望は聞き入れる。

ーー


「三つ!!

 異世界は俺の力で切り開く!!

だから、俺に潜在能力をくれ!!

人生を賭けろってそういう事だろ?」


ーー

その通り。

この会話の試練をクリアしたのは

お前が初めてだ。

一つ追加で、いう事を聞いてやろう。

ーー


「良いのかよ?」


返事はない。


「じゃあ…4つ目。

 うまく行ったら、俺を元の時代・元の歳・元の姿に戻してくれ。

 あいつと…青春したりねぇからな。」


ーー

それはお前の人生を

2度も作品として楽しめという事か。

ーー


「おいおい、人の人生を…

いや、おもしれえだろ?

 ただの人の人生も幾つもの作品の塊だ。

もし面白かったら…今度は人を殺すなよ。」


ーーー

座禅を組め。

能力を授ける。

ーーー


俺はその声に従い、座禅を組んで目を閉じた…

ギュイン、ギュイン、ギュイン、ギュイン…ギュイン


脳内に言葉が思い浮かぶ。

転移-飛行能力

感知-感受能力

潜在-勇者適正

時間逆行-"最愛の時"

"慧眼"


ーーー

能力は授けた。

お前の思考は手に取るように分かる。

それをお前のスキルに刻み付けた。

…忘れないで行け。

ーーー


「行くぞ、待ってろよ異世界!」


俺は体の上に現れた幾何学模様のゲートを通り

青い空へ飛び出した。



…ってそ、空!


まずはチート能力ってことだな!!


俺は背中から青と白の翼を伸ばした。

どうやら背中に羽が生えてしまっているらしい。


本能で飛び方は分かる。

風を全て受ける様に、羽を傾けて滑空する。


足や腕、使っていない筋肉にわずかな負荷。

揚力が足りない分は、俺の体力を削って浮く様だ。


滑空していると、様々な感覚を感じた。

匂いも様々だ。


とりあえず周囲を見よう。

ここは島か。


甘い香り、爽やかな香り、既に甘酸っぱいのは他人の愛の香りだろうか。


この世界には数多くの鳥肌が立つような危険が連なっていた。

牧歌的な村の近くから、王城の様な赤と白の建物からそれを感じる。


その中で、なるべく安全そうな…弱い魔物の居る所を狙う。


配置:

   王城


港町 祭壇 村  崖

   

  森  山


  砂浜


危険度:

港町 -町の中がやべぇ、危険がプンプンするぜ。

   書類の香りもする。

村 - 爽やかな香りだ、だが周囲が危険だ。

祭壇 - 何故か期待の目を感じるぜ。

王城 - 見てると色々したくなるけど、刺激臭だ。


…ああもうめんどくせぇ!

ともかく上の方は全部危険そうだぜ。

まずは砂浜、それしかねぇ!


スンスン、スンスン。


砂浜に近づくにつれ、勝手に鼻が動いていた。

こっちか?甘い香り…


地上が近付いてきた。


翼をめいいっぱい広げ、速度を落とそうと願うと

徐々に落下はゆっくりした速度になっていった。


ズザァアァァァ


砂煙を立てて、俺は降り立つ。


即座に感じた、甘い香りとツンとくる刺激臭を。

俺は刺激臭に向けて、思いっきり握りこぶしを振り下ろした。


「ぐぇぇぇぇ!!!」

何かが吹き飛ぶ。


そして数秒後、全容が見えた。


ピンク色の髪をして、羽衣を着て、薄い布を頭から被った女性が腰を抜かしている。

そして、砂浜に人ほどの大きさで青色をした8本足の生物が転がっていた。


「お嬢さん、仕事を探しに来たんだ。

何でも手伝うから、飯を食わせてくれないか。」


甘い香りが、どことなく甘酸っぱくなるのを感じた。


思わず顔を逸らすと、年寄り二人組が見えた。

途端に甘く少し酸い香りに、胸騒ぎが混じる。

…嫌な香りだ。どうも。


背中に期待を感じる。

こいつ、やっぱりなんか抱えてるな?

あの老人たちが知り合いなら、傍観してたってことだぜ。


「逃げるぞ!」


「えっ…!!!」


俺はその女の手を握り、祈る。

すると砂浜の端、崖側の波打ち際まで

一瞬で移動することができた。

数キロぐらいか。


だが膝が痛む。

転移を使うと、代償が来るらしい。

…もし現実に転移しようとしたら、どれだけの力が必要だ?


「俺は将来勇者になる男だ。

何でも言ってくれ。

…仕事をしよう。」

余計な言葉は要らない。

こいつが期待してるのは、恋じゃないって匂いで分かる。


「…怪物に捧げられそうになってたんです。

そうじゃないと、森が海の神に食われると。

 私はずっと、あのおばあさんたちに育てられたんです。

だから助けたくて。」


その話の端々から、様々な香りがした。

…そういう事かよ。


「でも怖かった。

 だから少しうれしかったけど、私…」

そうやって俺の隣で、体を揺らす女にバシッと言ってやった。


「それ、嘘だぜ。」


「え…?」


「あのジジババから、お前の親族の香りがしなかった。

両親どころか、血縁じゃないだろ?

それに随分、金の香りがしたじゃないか。

 がめついんじゃないか?」


「え、え…?」


「お前があそこで育ったのはマジだ。

でもよ、あいつ等人を攫って怪物に渡して

宝物受け取って暮らしてるだけだぞ。

家になかったか?不相応に立派なもんが。」


「え、嘘…」

女は泣き出した。

その丸まった背中より、俺は涙から目を離せなかった。

そこには、世話になった、頼りにしていたという香りを

感じたからだ。

一つじゃねぇ…色んな、爽やかな香りを。

ゆるせねぇ…けど。


「俺、まだ力が足んねぇんだ。

潜在能力だけだからさ。」


こいつには体温が必要だ。

俺は安心させようと、背中に手を回す。


「だから鍛える。

お前その手、飯の準備とかもしてるだろ。普段。

何が食えるか分かるか?

…俺も鍛えるから、飯を作ってくれねぇか。

 そしたら鍛えて、皆助ける!」


「…突然すぎて、でも、分かった。

おねぇちゃんも助けてくれるなら。」


やっぱり、そういう事かよ。

だけどそれだけじゃねぇんだろ。

こいつは反省させたがってる、ジジババもよ。

全く、親じゃねぇんだぞ。


「名前は。」

少しの無言の後、肩を寄せてきた。

これは、体温だ。


「メディエイル」


青い瞳が、俺を覗く。

思わず体の芯が疼いて、だが圧し留めた。

あいつに見られたら殴り飛ばされちまう。

あくまで安心させるためだ。


そうして、1、2分考える時間を作った。


「もう少し、こうしてるか?

それとも今すぐ動くか?」


「ご飯の用意も必要ですもんね。

動きましょう。…大丈夫です。

 動き…」


そっと手を握る。

少し、香ばしく香った気がしたから後ろ髪を引かれた。

お互い顔を見合わせて、頷く。


それから数日間、彼女の提案で海から離れ、山の中。


うっそうと木々が生い茂ってるが意外と草の丈が低い。

メディの提案通り、なんとか暮らせそうだ。


俺は投石で小動物の捕獲の狩りを行った。

こういう時に上空から様子見できる翼は便利だ。


「これは、食べれるキノコ。

これはダメ。」

彼女が選別している間、懸垂に腕立て、腹筋にランニングと

訓練をこなしていく。


火を起こすのは毎回大変だったけど

飯も上手いし、ぐんぐん力が付いていくのを感じる。


「熱!」

いつの間にか、魔法も使えるようになった。

と言ってもまだ単純なものだ。

しかし手ごたえを感じていた。


これでもっと時間を取れる。


ーー手短にやれよ。

あの白い空間での話を思い出す。

これは大丈夫なのだろうか。


俺はこの山の中で、ダンジョンを探すことにした。

幸い…俺にはこの嗅覚と感知能力がある。

クマや魔物が近くに居れば…わかる。

今は300匹ぐらいか。


多いように感じるかもしれない。でも少ない方だ、これは…。

俺は斧を使って幾つもの木を折り、メディエイルを守れるだけの

家を、1日使って建てた。


今日は、危険なにおいの、特に強い所へ…つまりダンジョンへ向かおう。


ダンジョンの苔むした入り口から入ると、ここはオフィスか?

整然とした部屋が立ち並んでいる。


仄かなトゲトゲとした香りを察知して屈み、ガラス越しに様子をうかがう。

黄色い、天井を歩く蝙蝠っぽい魔物が徘徊している。

デカいな、人ぐらいか。


もし超音波なら、隠れても無駄だな。

急いで探索して、最悪転移で逃げればいい。


俺はダンジョンを駆ける。

においがない、トゲトゲした匂い。

っつ、一歩先のから刺激臭がする。

…この先から、ラベンダーの香りだ。


俺は数メートルだけ転移して、その壁を叩いた。

壁ががたんと音を立てて苔むしたロッカーが開く。


おお、小手だ。銀色の小手。


無いよりはマシだ。装備しよう。

少し戻って探したが、このダンジョンに他のアイテムらしき香りはない。


最後に俺は入り口前で、あの蝙蝠を待った。


音を立てていると、キキィと飛び掛かってきたソイツを見て

俺はアッパーを放つと、壁にめり込んで止まった。


この程度なら警戒するまでもないのか、

香りの強さは実力の差なのかもな。


こいつの肉は…埃くせぇな。


家に帰るとメディエイルが絵を描きながら待っていた。

原始的だけど心が温まる、俺と…メディの絵だ。

食事の準備は、なるべく俺が居る時にさせているからだ

…熊とか、執着するって聞くしな。


「その小手、立派だね!すごい!」


「そうだな、楽勝だったぜ。

この調子で次も見せてやるからな。」


「まってる!」

ぴょんと跳ねるメディはやはり可愛い。

しかしだ、お互いのために…


そう考えている間も再び小手を掴み、

前のめりに目を輝かせるメディを見ると背中がムズムズとして、

俺は目を逸らすしかなかった。


そうして俺は、片っ端から山のダンジョンを探って回る。


数日だ、たった数日で俺たちは

戦える装備をかき集め、冒険服で着替えまで用意できるようになった。


メディには杖、俺の武器は銀の小手でいい。

鍛えて負担が薄くなった転移があるから、戦うなら殴るのが早い。


過ごしているうちに気が付いた。


「それにしても過ごしやすい気候だ。」


「そうなの?」


俺は頷いた。


「ある時は茹で上がるぐらい暑くて

ある時は震えあがるぐらい寒いんだぜ?」


「私は…ずっとこうだと思ってるから

そんなに違うの不思議だね。」


そうして、やはり俺の手を握ってくる。

「普通、行きたくないと思うけど…

あなたが生きていたセカイ。見てみたいな。」


懐かしい香りだ…俺の世界の香りがする。

二人で行きたい、素直に共感した。

だがそんなことを言えば、あいつが怒るだろうな。


「いつか来いよ。

BBQで歓迎するぜ?」

でも言う。

メディと俺お互い別の家庭を作ればいい話だからな。


「BBQ?」


柑橘系の香りだ、純粋な興味を感じる。

ハハ、でも…


「肉を焼く、それが高価なんだ。

こっちと違ってな。肉とかを焼く料理さ。」


「そっかぁ。」

そっけない感じだな、でもすっきりしたか。


「今の俺、海の神に勝てそうか?

あえて今まで聞かなかったけどさ。」


トレーニングは続けてる。

だがようやく熊が二匹同時に投げ飛ばせるようになったぐらいだ。

神に勝てるかは全く分からない。


「わからない。でも5年前に見た海の神は

すごく大きかった。

あの一番大きな木の高さぐらい。」


その話から漂うのは強烈すぎる海の香り。

まだ、無理か…


それから数日、村の方のダンジョンを攻略する。


ガァァァア!!

飛び掛かってくる俺より大きなヒルに


「氷塊!」

メディが氷を噛ませ。


「うりゃぁ!」

俺が拳で砕く。


装備のおかげでメディも一緒に冒険できるようになって

効率も上がったし、

何より嬉しいのはその笑顔だ。


常にそばにある仄かな甘い香りは、愛なのだろうか。

っクソ、分かるのもつれぇな…

その時壁が動いた。


俺は即座にその壁に拳を打ち込むと、

鈍く低い悲鳴を吐きながら人型の壁が崩壊した。


とうとう、拳一発で壁を壊せるようになったか。

今の俺の力のステータスは一巨岩といったところか。

ステータス画面は見れない世界みたいだが、正確だろ?


さて、海の神と戦うかどうか。

…どうせ転移できるんだ。


「行ってみるか、海の神」

「うん。いこう。」


ぴったりと寄り添って、海に帰る。


そして俺たちは、海の前に立った。

俺たちを見つけたのか、叫びながら駆け寄るジジババにメディが振り返る。


それを無視して、俺は転移した。

この近くの海の中の、一番危険そうな場所に。


"海の底"


目の前に青いうろこをまとった

赤と黄色の顔をした巨人が見える。


メディが叫ぶ。

「海の神!」


ビンゴ!


俺は拳を構え、空中に飛び出した。

奴はとっさに槍を構える。

だが俺はもう懐の中だ。

そして俺はもう一度転移し、槍まで戻って拳を当てた。


「むぅ!」


「お父様!!」

半人半神とでもいうべきか。

色鮮やかな皮膚を持った美女が駆け寄った。


「こ奴…待て、警備は呼ぶな。」

周囲のイソギンチャクが動きを止めた。

海の中で香りがよくわからねぇ。


この能力にこんな弱点があるなんてな。


「なぜ外した。」


俺か?

「悪い奴には見えなかった。

人間を金で買い取ってるって聞いたんだが失礼した。」


「何の騒ぎでしょうか。イソギンチャクが…メディ!?」


「おねぇちゃん!」

抱き合う同じ色の髪を持つ姉妹を見て

俺はにやりと笑う。

だから呼吸できんのかよ。


「買い取った人間も、大切に守ってくれていたとは。

ありがとうございます。」

俺は素直に感謝した。メディが悲しまずに済んだ。


「なんと礼儀正しい…これほどの力を持ちながら。」

あーもう、そういうのいいから。


「ネンナが気にしていたのだ。その娘のことを。」

海神は静かに語りだす。


「ネンナはあの老婆たちの暮らす村に

ほかの村から攫われたことをおぼろげに覚えていた。

しかし自ら金品と交換されたにもかかわらず

メディまで売ろうとするとは思っていなかったのだ。」


涙ながら抱き合う姉妹を横目に、続く話を待った。


「それががめつくてな、此方としても厳しかったのだが

ひどい人間に売られてしまうかもしれないと聞くとな。

娘のようなネンナの願い。

聞かぬわけにはいかなかったのだ。」

それを言うならよ。


「そもそも何で買ったんですか。ネンナを。」


「人間の理解のためだ。

 太古に迫害された人間の女性を妻にしたのだがな。

最近嫌っていたほかの人間も

思ったより悪い奴ではないのかも知れないと思い、確認のため買ったのだ。

結果として、立場によって千差万別だと分かった。」


そうだな、俺もそう思う。


「手加減してくれたようだし、迎えを殴ってくれて助かったわ。」

そうか、そうか…無罪放免は申し訳ないな。


「その迎えの方が生きているようでしたら

謝らせていただきたい。メディのためにも遺恨を残したくないのです。」


「おぬしは本当に礼儀をわきまえた男だ。

あい分かった。それで和解としよう。」


そして宴会が行われ、謝罪も行う。

老人たちには衣服を返すついでに

一同で感謝のご挨拶に伺うことにした。


損はさせないが、ただ逃げもさせない。

そういう方針で。


そして翌日、浜辺にて


「世話になったな。

買い取るまでもなく、今後一緒に暮らすことになった。

だがそちらにも都合があろう。

二人が死ぬまで暮らせるほどの、宝をくれてやろう。」

ばあさん達に宝を渡す海の神。

その量は少ないが、神本人が目の前にいるのだ。

怯えて何も言えない様子だった。


そして逃げる様に宝を品定めする奴らに、もうひとつ。


「今から国の聖剣隊に

人さらいの対策を進言しに行こうと思う。

今後二度と、同じ手は使えないと思え。」

海の神が言い放つ。


「今までありがとう。もう誘拐しないでね。」


「いい暮らしをくれて有難う。

代わりに両親を私から奪ってくれたことは

一生恨むから、覚えておいてね。」

メディとネンナが続けて言い放った。


唇を噛みしめ、悔しそうなばあさんに俺は言い放つ。

「誘拐される悔しさは、ここ数日散々味わったろ。

もうこれきりにするんだな。」


何でもないかのように奴らは宝に向き直ったが

奴らは内心燃え上がるような感情を渦巻かせていた。

背中がカッとしそうな辛い香りだ。


いい気味だ、だがいい気味で終わらせない。

それが俺の矜持、せっかく無双できるならこうしたい。

結果オーライで終わらせない、だが義理も果たす。


こいつらが今度誘拐したら、その財産ごと無くなるように

この島の王朝を説得してやる。


そこまで考えて気が付いた。

あの城からやけに強い危険の香りがしていたことだ。

…大丈夫だよな。


そして俺たちは後始末を終えて出発する。

中央の祭壇にたどり着いた。


「海神だ!」


「おお、祭壇に神がお告げに来るとは本当だったのか!」


「羽の生えた男もいるぞ、天使だ!」


周囲の男たちが騒めく中、武装した剣士たちが

駆け寄ってきた。


「これはこれは海神様。

どのようなご用件で?」


海神は槍を回転させて地面に突き立てると、

こう告げる。


「人類にとって重大な相談がある。

国王と合わせてもらいたい。」


すると

「我ら聖剣隊が、そのような横暴許すと思うか。

野蛮な海の輩どもが。

ここで滅ぼしてやる。」


一番派手な剣を持っている男が勇み出た。

男は細身で美形。

嫉妬するぐらいに滑らかな肌と、流れるような金髪を持っている。

優雅に歩み出て、流れる様に剣に手を当てる。


男が剣を抜いたのを確認し、俺はそいつの裏に転移する。

そしてポンと握る手を叩き、剣を落とさせた。


その上でその剣を持ち上げて、男の前に掲げた。

驚いて腰を抜かしているが、そうじゃないだろ。


「見てみろよ。この磨き上げられた剣。

何のためだ。」

目の前に近づけてみせた。

感じる、やっぱりだ。

落ち着くハーブの様な香り。


「平和に暮らす人々を守るためだろ。

海神達が平和に暮らしてたらどうだ。

お前はそんな事が一瞬で分かるのか。

 剣が泣いてるぜ。」

こいつの名誉のため、あまり周りに聞こえないよう

そう囁くと男の目が見開かれる。


そして俺は剣をそっと置き、転移で元の立ち位置に戻った。


「何が起きた?剣を落とした?」

周りが騒めく。

俺の能力が上がり過ぎたか、早業になってしまったか。

だが男は間違いなく俺に反応していた。

何なら戦う事も出来たかもしれない。


だが、次に立ったその男に戦意はなかった。

「分かった。代わりに俺が聞いて

判断しよう。俺の名誉を掛けて

国王まで通せる内容かどうか。」


海神は頷き、そしてため息をついた。

「分かってくれたか。

無礼は敢えて咎めまい。

お主には耐えきれんかもしれんが

二つ…どうしても伝えなければならん真実がある。」


二つ…だと?

俺は何も聞いてないぞ。

「一つは人さらいについてだ。

我々と暮らしている人間が

人さらいについて語っていたが、ひどい有様だぞ。」


ああ、そうだろうな。


「我々が海から見ている限り

外から来た人間たちにも大量に攫われている。

それに砂浜の村の人間も人を攫って

我々に売ろうと何回も話があったほどだ。

崇高な使命を持つならなおのこと、足元を見たほうが良い。」


その話の香りは、香ばしく、香り高い。

真実だ。そこまでこの島がやばかったとは。


いや、港町や王城の香りを思い出せば、そうか。

…そういう事だったのか。


「何…そんなバカな!?

攫われているというが、

出稼ぎに行っているだけだと港町で…」


男が驚き、周りの男たちと話し始めた。


「そんな噂が、実際にあるらしい。

だが俺は信じないぞ。

俺の目が節穴だったという事に…!?」

こいつは…本気で人々を守っているつもりだったのか。

だが、視界が狭すぎて哀れなことになっているな。


「真実です。紛れもないです。

私たち姉妹が被害者なんです。」

メディが歩み出ると、男は膝をついた。


俺も探知能力が無ければ同じだったかもしれない。

こいつは悪くねぇのかもな。


「もう一つ、話があるといったろう。

この反応で確信できた。」


そして海神が歩み出す。


「かつてこの王国に魔王が攻めて来たという噂があっただろう。

撃退できたとこの祭壇にも刻まれているが…」


青銅のような色をした壁画をどんと手で叩くと

その表面が剥がれ落ちた。


「違ったのだ、実際はこの国が魔王に憑依されている。

見えぬか、王城から漂う邪悪な雰囲気が…ぬん!」


海神が力を入れて光を発すると、それは全方位に伸びて行ったが

一方向だけ闇がかき消した。

…俺の知る王城の方向だ。


「むうっ、なんと邪悪な気だ。

腕が痛む…」


「お父様!!」

この海神の娘、エリアッテというらしい。

治癒の力を使おうと駆け寄っていった。


「そんな…」

聖剣士がうなだれ、両手で地面を叩いた。


「クソっ、クッソっ…!!」


そんな聖剣士に、俺は手を差し伸べた。


「今からできることはする…だろ?」

その金色の瞳がしっかりと俺を見た。

…?妙に中性的だと思ったが、こいつ女か。

声は男だったがな、もしかしたら魔法か?


「…あああ!今は無理だ!

俺は、俺は…」

俺はコイツの肩を持って

軽く抱き寄せた。


多分こいつにも、体温が必要だ。


「俺が何とかする。

俺が魔王を倒す。

そしたら、何の憂いもなく人々を守れ。

それじゃすっきりしないなら、一緒に倒そうぜ。」


鎧越しにも、こいつの心臓の音がした。

それを聞いて俺の感情的にもろい体も反応して

己の業の深さを恨んだ。

もっと無欲になりてぇ…!


「分かった…」

情けない声でこいつは呟いた。

くそ、しおらしくなるな!


「共に戦おう。」

それで良い。


「名前。戦友になるんだ。」

そうして俺の名前を伝えた。

そうしてやつも名乗った。


「アネスト・グランテア…

聖名の方はアテラテラムというが。

本名で構わない。」

やっぱり意識されてる香りしかしねぇ!


「分かった。

グランテアでいいか。

公ではアテラテラムと呼ぶな。」

略し方によってはひどいことになる場合もある。

一応確認が必要だ。


「ええ…ああ。」

二人いるみたいでおもしれえなコイツ。

ま、幼馴染には及ばないけどな。

あいつとは絶対結婚したい。


なんか安心するんだよな、最初からそれが当たり前というか。

人生のゴールとしてそこに居てくれたかというか…


と考え込んでいると怪訝な目。

これは女の勘の香りだ。こわいな、はは。


「よろしく。グランテア。

大丈夫。俺は1から10まで誠実だ。

お前と俺は似た者同士なのかもな。」

同じ中二病さ。


「ああ、よろしくな。」

それを聞いてニヤリと笑うのは

…二人ともか。

グランテアとアテラテラム。


お前らカッコつけたいのが本音なんだなw

共感するぜ。


「行きましょう、皆さん。」

そう言って俺の肩を持ち、隣に引き上げるのはメディだ。


それに引っ張られて立つと、その手を離さないのが

グランテアだ。


…おいおい…


そうして俺とメディは聖剣隊に加入し、

海神には異常事態に備えて祭壇で

待機してもらうことになった。


他の隊員ともすぐに打ち解けられた。

…というかこいつら、男装女子ばっかりだ。

気付いていない純真無垢な男子もいたがな。



そうしてまず俺たちは、村で宿を借りて休みを取り

その後万全の状態で王城に向かうことになった。


そして、王城内部…


「聖剣隊に新たに加入するものを連れて来ました。

アテラテラムです。

新たなる勇者に聖なる教鞭を願いたい。」


アテラテラムの進言で王の前に立った俺は

思わず鎧の下でにやり。

なんだよ。この部屋悪魔しかいねぇじゃねぇか。

マジかよ。お前、こんな奴らの下で働いてたなんて。

許せねぇ。


「慧眼」


俺はそう自然と呟くと

空中から手が伸びて王や兵士たちを掴む。


「嘘偽りを固める能力。

それが慧眼だ。」

香りで能力を本能的に理解し、そう説明した。


逃れるためには、その偽りの姿を剥がすしかない。


「…そういう事か。

我が魔王だとようやく気付いたか。

ふっふっふ。」


黒い霧が立ち上がる。

悪魔たちの中には、いまだに混乱して姿を現さな…

嘘だろ?側近の一部はいまだに自分が人間だと思ってる。

いや…集中しよう。


今は確信犯どもを倒すことが肝心だ。


相手がどれぐらいの知性か分からないし

近付いたら殺される可能性もある。

転移を見せず、慎重に行きたい。


こちらも部屋に聖剣隊が流れ込んできた。

外の監視は人間だった。

だから仲間が前で迎えるため待つことを説得も出来たんだ。


とはいえ今この広い部屋の中央に居るのはメディと俺と

アテラテラムだけ。


「気を付けろ、襲ってくるぞ!」


全方向が危険だ!


「氷塊乱舞!!」

メディが道具で氷塊をばら撒いた。

それは物理的な探知機でもあり目くらましでもある。


氷の形の歪んだ方にアテラテラムが光で伸ばした剣を突き刺す。

俺も四人ほど殴り飛ばした。


「どうやら我直々に出なければ話にならぬようだ。

皆の者、下がっておれ。

一騎打ちをしよう。」

見守っている皆よ、スキを見て不意打ちしろ…

聞こえてるぜ、馬鹿な王様。


とはいえ少し体が重い。

どうやら慧眼はとてつもなく力を消費するらしい。

めちゃくちゃにレベルが下がるってイメージだ。

あの神が、調整したんだろうな。

神…


ーー

あなたへの課題です。

異世界転移

チート能力

神様

ステータス

ギルド←←←←←←←←←←←←←

美少女

魔王

勇者

無双

周囲からの評価


あなたに好きな能力をあげるので、

これを満たす物語をあなたの人生を賭け築いてください。

見たいのです。私が。

ニヤニヤとしながら。

ーー


その時俺の背筋が凍り付いた。


”ギルド行ってねぇ!!!!”

魔王倒したら、大体のゲームエンディングじゃねぇか!


「すまん、ちょっとギルド行ってくる!」


俺は素早くメディとアテラテラム、それに魔王の背中に移動して

一人一人を触ったまま港町に転移した。


「…は?」


ここは冒険者ギルド。

木の床は傷だらけで、酒の匂いが漂っている。

しかしそこにいる猛者どもの目の鋭さは本物だ。

しっかりと、中央に居る紫色で角を持った生物を捉えている。


そして俺は、申し訳ないので端っこに転移した。


「ぐぉぉぉぉぉ!!!!」


悲鳴が響く中、俺は王城に戻る…


そして、暫くして…

俺は現実に転移するため、体を鍛えに鍛えまくった。

苦節数十年。

そこまでしないと、俺の嗅覚が納得しなかったのだ。


そして女性関係は…ひどいことになっている。

この国、多重結婚が認められていたのだ。

幼馴染がいるなど最早言い訳にすらならなかった。


この国は海神が治める海の国になった。


そして皆の合意のうえで、俺は現実に転移する。

昔家のあったところが、まっさらになっていた。

高層ビルが立ち並ぶ近未来だ。


人類の進歩ってこんなに早いのか。

驚愕と感動をしながらも、あいつの家に行ってみた。

匂いは…しなかった。

あいつを探したら、線香の匂いがした。

自殺したらしい。俺だって逆ならそうする。


何となく感覚で、”最愛の時”で戻るのは

この現世の時だけであると理解していた。

そして俺は”最愛の時”で昔に戻った。


そして俺が戻ったのは、高校の教室。

異世界転移する前日じゃないか?


あいつは相変わらず隣の席で

さも当然みたいな顔して

何にもせずに俺の横で座ってた。


黒い髪に黒い目。

これだよなこれこれ。

香りもしねぇ。助かるぜ。


「ねえ、妄想話でもなんでも聞かせてよ~

暇なの暇。ねえ聞いてる?

異世界で砂浜に降り立った話とかさ。」

誰だよ、うぜえな。…ん?

まともに考える間もなく。


「私からの課題。あなたの恋、簡単に成就させてあげないよ。」

耳元でささやいた声が、神のものだと

理解するのに数秒必要だった。


黄色い髪と、胸の温かみを感じる。


でもそんな女のふりしたクソ神様の抱擁なんかより…

幼馴染の驚いた顔がまた可愛くて…

やっぱり俺にはこいつしかいないんだと思った。


やれやれだぜ。


神め。

だがそれなら、メディでも連れてきてほしいもんだ。

来てみたいって言ってたしな。


…今度頼んでみるか。

面白かった?

この作品を書いたのは練習のために

うまくなるきっかけを探してるから。

だから感想やご指摘があれば遠慮なくお願いします。


もし作風や考え方が気に入ったら

他の作品にも滲み出てると思うから

よかったら見てね。


AIは相談と指摘・改善(感想を聞く)に利用してる。

複数のAIからつけられた異名は

 プロットだけ80点の作者

です。


練習でも何だかあんまり手が抜けないんだ。

制作期間は、1.3日ぐらい。

また会おうね。

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