9 奴隷の少女
それから、しばらく。
対象は「狩れる」「狩れない」で区切った。生き残るには、その方が正確だ。
負けない相手を狩って、勝てる相手の幅を増やして、――勝てるギリギリに触れる。
結果。
自分
HP 12/12
攻 2 防 2 敏 3
魔物生成 Lv5
創生容量(C) 18/18
魔物複写 Lv2
複写枠:2/2
鑑定眼 Lv2
帯域(B) 余裕:中
本体は弱いまま。
だが成長はしている。
その日の匂いは違った。
血の匂い。
新しい。量が多い。風下から流れてくる。
合理的には無視が正解。
だが“多い”は情報だ。今後の生存率に直結する。
見る。距離を取る。危険なら捨てる。
開けた場所が見えた。
そこに、人がいた。
少女。十六前後。細い。痩せている。
両手を背で縛られ、木杭に固定されていた。
檻はない。
簡素で効率的な拘束。
周囲の草が踏み固められている。
獣道じゃない。誘導だ。
……囮。
魔物を呼び、別の何かを獲るやり方。
俺は引くべきだった。
引けば生存率は上がる。
でも、足が止まった。
少女は生きている。
生きているが長くはない。
そのとき、獣の匂いが乗った。
来る。
――複写:硬甲蜥蜴。盾役。
――複写:牙狐。足止め役。
短槍を一本。
裂ける音。重い足。
対象:裂牙熊(中魔)
HP 28/28
攻 9 防 6 敏 4
特性:裂牙/突進/耐痛
危険度:致命(条件付き) 誤差:低
削り合いは無理。長引けば終わる。
条件を作る。
硬甲蜥蜴に――正面で受けろ。止めろ。
牙狐に――横。脚。体重で角度を奪え。
踏み込みが止まった一瞬に、槍を関節へ“置く”。
抜かない。捻る。骨に響く音。
片脚が落ち、突進が鈍る。
視線が逸れた瞬間、胸の柔らかいところへ刺し込む。
耐痛でも臓器は無視できない。
裂牙熊が崩れた。
《討伐:経験値 +11》
《魔物生成 熟練 +11》
《魔物複写 熟練 +3》
《鑑定眼 熟練 +2》
すぐ周囲を見る。
血と音で次が来る。
生成物を消す。帯域を軽くする。
それから少女へ。
縄を見る。深い。食い込んでいる。
刃はない。だが影はある。
小刀を作り、縄を切った。
少女が崩れ落ちる。受け止める余裕はない。
地面に落ちたまま、小さく息を吐いた。
「名前」
かすれた音が返る。
「……リ……シア……」
リシア。
守るとは決めない。だが放置も決めない。
「歩けるか」
リシアは動けなかった。
……運ぶ。
合理じゃない。
でも選んだ以上、責任は発生する。
影で布を作り、蔓で縛り、簡易担架を作った。
軽い。軽すぎる。
そして、茂みに細い金属の光――“待ち”の痕跡を見つけた。
ここに長居はできない。
囮を仕掛けた人間が近い。
俺は森へ入った。




