表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物転生——最弱ですが魔物生成で効率的に生き延びます  作者: 小麦
転生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/15

7 条件

移動を決めた日ほど、狩りは失敗できない。


腹が減っても、深追いはしない。

喉が渇いても、水場で長居はしない。

循環が崩れ始めた今、事故はそのまま死に繋がる。


だから――“勝てる獲物”じゃなく、“勝てる条件”を作る。


俺は森の地形を選んだ。

倒木が重なってできた細い通路。左右は岩と根で塞がれている。逃げ道は一本。視界も狭い。


ここなら、速さを潰せる。


……問題は、相手が来るかどうかだが。


鼻腔が、冷たく痛んだ。

霧の匂いが濃い。空気が押してくる。獲物が減る。

減った獲物を追う“狩る側”は、逆に寄ってくる。


俺はそれを利用する。


創生容量(C)を確認する。


自分

創生容量(C) 10/12

帯域(B) 余裕:低


今の俺が切れる手札は限られている。

複写牙狐を出せばCが大きく削れる。代わりに索敵と足止めが手に入る。

本体が弱い以上、勝ち筋はそこだ。


俺は息を整えて、複写牙狐を生成した。


影が滲み、四足が立ち上がる。

牙、跳躍、冷たい目。


対象:複写牙狐(生成)

HP 14/14

攻 5 防 2 敏 7

特性:牙/跳躍


自分を見る。


自分

創生容量(C) 4/12

帯域(B) 余裕:低


……重い。残りは少ない。


それでも、ここでケチると死ぬ。


俺はさらに、“道具”を作った。

投げるためじゃない。置くためのものだ。


短い杭を三本。刃のない、ただの尖り。

それを通路の片側、根の影に斜めに突き立てる。


相手の脚を取る角度。

突っ込んだ時に、踏む位置。


最後に短槍を一本。


自分

創生容量(C) 0/12


……これで、余力ゼロ。


つまり、ここからは“失敗=詰み”だ。

だからこそ、最初の一分で決める。


俺は複写牙狐に意図を投げた。


――匂いを探せ。重いのが来たら戻れ。吠えるな。


牙狐が音もなく森へ溶ける。

数十秒。短い。俺の帯域じゃ長く繋げない。


戻ってきた情報は、一つだけで十分だった。


“来る”。


空気が裂けるような気配。

足音が軽い。軽いのに、圧がある。


俺は通路の一番奥、倒木の影に身を伏せた。

視線だけを通す。


影が走った。


速すぎて輪郭が曖昧だが、脚の運びだけで分かる。

四足。跳ぶ。低く、鋭い。


対象:影爪豹(中魔)

HP 22/22

攻 8 防 3 敏 12

特性:影歩/裂爪

危険度:致命(条件付き) 誤差:低


今までの相手とは別格だ。

正面で見失った瞬間に終わる。爪を一度もらったら、たぶん止血が間に合わない。


でも、“条件付き”。


条件は俺が作る。


影爪豹が通路に入った瞬間、俺は槍を突かない。

突いたら外す。外したら終わる。


俺は槍を“置く”。


通路の中央より少し手前、跳躍の着地点に、槍先を置く。

自分は半歩、倒木の影へ滑らせる。


影爪豹が跳んだ。

影のように低い跳躍。速い。


槍先が、肩口を掠めた。


浅い。致命じゃない。

でも、相手の軌道が乱れた。着地がずれる。


――踏め。


影爪豹の前脚が、俺の仕込んだ杭を踏んだ。

完全に刺さったわけじゃない。ただ、体重が乗った瞬間に脚が滑り、踏み込みが止まる。


その一瞬で、複写牙狐が横から跳びついた。


噛むな、じゃない。

噛め、でもない。


俺が投げた命令はこれだ。


――絡め。


牙狐は牙を立てず、肩に体重をぶつける。

豹の首がわずかに逸れた。


その瞬間だけ、敏捷12が“10”に落ちる。


俺はそれを逃さない。


槍を引いて刺し直すんじゃない。

槍先を滑らせて、喉に“当てる”。


当たった。

刺さった。深い。


影爪豹が暴れる。爪が空を裂く。

一撃でもらったら終わる距離だ。俺は踏み込まない。体重を乗せない。


ただ、抜かない。


抜いた瞬間、あの爪が来る。

だから“刺したまま”、豹が自分で動いて傷を広げるのを待つ。


豹の動きが鈍る。

牙狐がさらに体重をぶつけ、通路の壁へ押しつける。


狭い。逃げられない。

速さは、狭さに負ける。


影爪豹が最後に跳ぼうとして――跳べずに崩れた。


息が止まったみたいに静かになったあと、ようやく心臓が鳴る音が戻ってきた。


《討伐:経験値 +9》

魔物生成クリエイト 熟練 +9》

鑑定眼アプレイズ 熟練 +2》

魔物複写リライト 熟練 +2》


……重い報酬。


ギリギリだった。

余力ゼロで勝った。つまり、これ以上強い相手は“勝てても”帰れない可能性が高い。


俺は一秒だけ周囲を見回す。

音が増えた。匂いも増えた。


ここで長居はできない。


死体に視線を落とす。

影爪豹。複写すれば、生成物の質が跳ねる。


だが――完全摂取は無防備になる。

今の俺はCもゼロだ。牙狐を維持しているだけで頭が重い。

この状況で“全部飲み込む”のは、自殺に近い。


結論は早い。


今日は取らない。


俺は影爪豹の腿肉を最小限だけ切り取った。食事分。

血は土に擦り付けて落とし、牙狐に戻れと意図を投げる。


撤退。


森の奥へ、匂いの薄い方向へ。

今の勝ちを“死”に変えないために。


走りながら、鑑定眼だけを開いて自分の表示を確認した。


魔物生成クリエイト 熟練:……》


数字が跳ねた感覚がある。

恐らく次の狩りで、また何かが変わる。


でも――今は休む。


欲張ると死ぬ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ