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魔物転生——最弱ですが魔物生成で効率的に生き延びます  作者: 小麦
転生

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6/15

6 牙狐

胃の底に残った嫌な重さは、寝ても完全には消えなかった。


目を覚ますたびに、喉の奥が酸っぱくなる。

吐けば楽になるのは分かっている。けれど吐いたところで、昨日飲み込んだものが戻るわけじゃない。むしろ体力が削れる。


……無駄だ。


沢の水を少しずつ飲み、腹の中を冷ましてから、鑑定眼を開いた。


自分

HP 10/10

創生容量(C) 10/12

帯域(B) 余裕:低

状態:軽度疲労(精神)→ 低


“精神”の疲労表示が薄れている。

完全には消えていないが、動ける。


昨日の成果を確認する。


意識を向けると、視界の端に保存枠が浮かんだ。


《複写:牙狐(保存)》

《複写枠:1/1》


枠が一つ。

今はこれしか持てない。入れ替えるには、また完全摂取。

つまりリライトは乱用できない。使うたびに代償がある。


次は検証だ。


リライトは「俺自身」を強くしない。

“生成物”に適用される、と表示されていた。


なら、やることは単純。


牙狐を作る。


俺は《魔物生成クリエイト》を意識した。


腹の奥に熱が灯る。

形を思い描く。だが今回は、昨日までと違う。俺が決めるのは“骨格と大きさ”だけで、その上に“保存した情報”を載せる感覚がある。


――複写を適用。


短い眩暈。

熱が、いつもより一段深いところから削れる。


影が滲み、土の上に四足の輪郭が立ち上がった。


狐に似た体格。

肩が厚い。牙が長い。目が冷たい。


生々しい。


俺は一歩だけ距離を取って鑑定眼を向けた。


対象:複写牙狐(生成)

HP 14/14

攻 5 防 2 敏 7

特性:牙/跳躍

危険度:中 誤差:低

所属:生成 生成補正:+1(クリエイトLv3)


……同じだ。


少なくとも基礎性能は牙狐と同等。

生成補正が+1。つまり“元より少し良い”。ここはクリエイトLvが効いている。


俺は喉の奥が乾くのを感じた。


槍一本の自分と、敏捷7の牙狐。

戦い方の幅が変わる。明確に。


だが、ここで浮かれるのは危険だ。

生成した瞬間の消費が重い。今の俺の余力を確認する。


自分

創生容量(C) 4/12

帯域(B) 余裕:低


……一体で6消費。


鼠よりはるかに重い。

当然だ。性能が違う。


帯域の負荷も体感で重い。頭の後ろが熱い。視界がわずかに狭まる。

今の帯域“低”で、牙狐を複数運用するのは無理だ。


つまり――


現時点の最適解は「一体を確実に運用して、確実に勝つ」だ。


俺は牙狐に意図を投げた。


――周囲を嗅げ。敵を探せ。見つけたら止まれ。俺を待て。


牙狐は静かに動き出した。

鼠と違う。足音が小さい。動きが滑らかで、森の中に溶ける。


そして、情報が戻ってくる。


匂い。

距離。

小さな輪郭。


鼠の粗い情報とは質が違う。

これは斥候というより、狩人の感覚だ。


……便利すぎる。


便利すぎるものは、必ず代償がある。

代償はもう分かっている。消費と、精神の削れ。


俺は牙狐から意識を切り離すように、強く瞬きをした。

帯域が低いと、繋がっているだけで鈍る。必要なときだけでいい。


牙狐が止まった。


前方、藪の影。

そこに獲物がいる。


俺は息を殺し、ゆっくり近づく。


対象:角兎(小魔)

HP 9/9

攻 3 防 1 敏 8

特性:突進

危険度:中 誤差:低


速い。敏捷8。俺より遥かに上。

でも攻防は低い。単独。狩れる。


……牙狐で。


俺は牙狐に意図を投げた。


――噛め。脚を。


牙狐が跳んだ。

角兎が突進する。速い。

だが牙狐の方が“戦い慣れている”動きだ。真正面に受けない。斜めから入る。


牙が脚に刺さる。

角兎が転ぶ。


そこに俺は槍を作る――と言いたいが、今のCは4。槍一本で1。問題はない。

ただし生成中の一瞬が危険だ。


俺は角兎がもがく間に短槍を生成し、二歩で距離を詰めた。


刺す。

急所を狙わない。動きを止める。終わらせる。


角兎の動きが止まった。


《討伐:経験値 +2》

魔物生成クリエイト 熟練 +2》

魔物複写リライト 熟練 +1》


……リライトにも入るのか。


いや、当然か。

牙狐を使って倒した。なら“複写の運用”にも熟練が入っていい。


俺は角兎の死体から離れた。血は呼ぶ。

食事は必要最低限だけ切り取る。内臓は触らない。


その作業をしながら、俺は改めて理解する。


俺は弱い。

本体は弱いままだ。


だが、弱いままでも勝ちを作れる。


作れるだけの数――創生容量。

扱えるだけの幅――帯域。

そして、作る質を変える――リライト。


全部が揃えば、俺はこの森で“狩る側”に立てる。


……問題は。


この先も、同じ難易度で続くわけじゃないことだ。


奥には、あの腐蝕する霧がある。

その向こうには、鑑定が埋まる“致命”がいる。


そこへ行くかどうかは、今決めない。

決める材料が足りない。


俺は牙狐に戻れと命じ、繋がった意識を切った。

頭が少しだけ軽くなる。


今日の狩りは、まだできる。

だが欲張らない。





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