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魔物転生——最弱ですが魔物生成で効率的に生き延びます  作者: 小麦
転生

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4/15

4 スキルレベル

腹が鳴った。


音にしては小さかったが、この森じゃ十分うるさい気がして、反射で呼吸を止めた。

……静かだ。俺以外は何も反応しない。


空腹は厄介だ。

判断が遅れる。慎重さが削れる。削れた分だけ死に近づく。


だから、俺はもう「食えるかどうか分からない木の実」を片っ端から試すのをやめた。

鑑定眼があるとはいえ、誤差がある。腹を壊すのは自殺だ。


必要なのは、確実性。


狩りだ。


だが狩りにも優先順位がある。

獲物を狩っても、その場で食えば匂いが残る。血の匂いは呼ぶ。

火を焚けば光と煙で呼ぶ。

つまり――食事は「食える」だけじゃ足りない。「食って生き残れる」必要がある。


まずは獲物を選ぶ。


斥候を出す余裕はある。だが創生容量(C)は潤沢じゃない。

鼠を出すなら短時間、一体だけ。情報を抱え込みすぎれば帯域が焼ける。 


自分

HP 10/10

攻 2 防 2 敏 3

創生容量(C) 5/7

帯域(B) 余裕:低


帯域が低いなら、不確定な戦闘は事故る。

事故は死に繋がる。


――先に確定する。


俺は槍を作らない。先に鼠だ。

戦闘の直前に槍を作ればいい。今は情報。


鼠型を一体、生成した。影が滲み、足元に小さな黒い個体が現れる。


対象:鼠型(生成)

HP 4/4

攻 1 防 1 敏 6

特性:夜目

危険度:低 誤差:低

所属:生成 生成補正:+0


命令は短く。


――近くを見ろ。敵の数だけ。戻れ。


鼠が走り出す。

頭の中に粗い情報が流れ込む。音、匂い、輪郭。


右:単独。小型。

左:複数。距離近い。

前:気配薄い。


右の単独。これだ。


鼠を戻し、即座に消す。頭が軽くなる。

この切り替えが遅れると判断が鈍る。俺はそれを許せない。


次に槍。


短槍を生成する。腹の奥の熱が削られる感覚。


自分

創生容量(C) 4/7


……失敗したら次がない。だから失敗しない。


俺は風下から回り込み、音を殺して距離を詰めた。


獲物は黒い狸に似た魔物だった。目が小さく、動きが忙しい。地面を掘り返し、何かを探っている。


対象:狸型小魔

HP 11/11

攻 4 防 2 敏 4

特性:嗅覚

危険度:中 誤差:低


敏捷は俺より上。

問題は嗅覚。風向きが変われば一発でバレる。


なら、長く待たない。

“待ち伏せ”じゃなく、“先手”。


俺は地形を選ぶ。倒木と岩の隙間。動線が狭い場所。

狭ければ回避幅が減る。逃げ道も限定できる。


距離を詰める。

五歩。四歩。三歩。


風が僅かに揺れた。


――バレる。


俺は迷わず踏み込んだ。


短槍を低く突き出す。

狸型が横に跳ねる。速い。だが狭い。跳べる幅が足りない。


槍先が肩口を掠めた。血が出る。


魔物が甲高い声を上げ、逃げようとする。

逃げる個体を追うのは危険だ。追えば音が出る。別の何かを呼ぶ。


だから追わない。逃げ道を潰す。


俺は一歩、進路に入った。相手の体重移動を読んで角度を奪う。

二撃目。今度は深く刺す。


刺さった。

魔物が暴れる。柄を叩く。

俺は引かない。引けば抜ける。抜ければ噛まれる。


押し込む。体重を乗せる。

相手の動きが鈍る。足が滑る。


数秒の抵抗のあと、狸型は震え、やがて動かなくなった。


表示が浮かぶ。


《討伐:経験値 +2》

魔物生成クリエイト 熟練 +2》

《経験値:4》


……伸びが違う。


危険度は同じ“中”。

でもHPが高い。特性もある。評価軸が複数あるか、個体差がある。


今は理由を詰めなくていい。

事実だけ拾う。――強い獲物ほど伸びる可能性が高い。


問題は次だ。


食うか。捨てるか。


空腹は深い。だが、その場で食えば死ぬ確率が上がる。

匂いも、音も、時間も増える。


だから折衷にする。


俺は腹を裂かない。内臓は危険だ。毒や寄生もあり得る。

鑑定眼で肉を見ても、誤差がある。信じ切れない。


必要なのは、最低限。


俺は腿の肉だけを薄く切り取った。匂いが出にくいよう、血を土に擦り付けて落とす。

そして死体は、その場に置かない。寝床から離れた方へ引きずる。


匂いの筋を散らす。

完全じゃない。だが俺が“一直線に追跡される”確率は下がる。


食べるのは、さらに離れた場所だ。


沢の近く、風の抜ける岩陰に移動し、切り取った肉を口に入れる。

生だ。気持ち悪い。だが火は使わない。使えば目立つ。


噛む。ゆっくり。

身体の反応を見ながら、必要な分だけ。


……吐き気はある。

でも、腹の底の焦りが薄れる。視界が少しだけクリアになる。


生き残るための摂取。

それ以上でも、それ以下でもない。


俺は残りを捨てた。持ち運ぶ量を増やすと匂いが増える。

効率が上がるようで、死の確率が上がる。割に合わない。


岩の隙間の寝床へ戻る。


今日は成功した。

成功した日に欲張ると死ぬ。ここで止める。


鑑定眼でスキル表示を開いた。


魔物生成クリエイト Lv1》

《熟練:5/5》


……満ちてる。


腹の奥が熱を持った。

次の瞬間、その熱が内側を押し広げる。胸の奥まで空間が増えたみたいな感覚。痛みはない。けれど、確実に“器”が変わった。


魔物生成クリエイト Lv2》


反射で、自分を鑑定する。


自分

HP 10/10

攻 2 防 2 敏 3

創生容量(C) 4/9

帯域(B) 余裕:低


最大が増えてる。

数が増える余地ができた。


……なら、やることは一つ。


狩れる相手だけを狩る。

死なない範囲で積む。


それだけが、ここで生きる方法だ。


俺は目を閉じた。

眠りが浅くてもいい。休息で創生容量(C)が戻るなら、それで回る。

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