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魔物転生——最弱ですが魔物生成で効率的に生き延びます  作者: 小麦
転生

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2/15

2 魔物生成

重い足音は、近づいてきている。


俺は走らない。

走れば音が出る。音が出れば追われる。追われたら、この身体能力じゃ終わる。


苔の厚い場所を選んで後退し、倒木の影に身体を滑り込ませた。

呼吸を薄くする。肩を上下させない。視線を動かさない。耳だけで距離を測る。


――でかい。

枝が折れる間隔が広い。踏み込みが重い。


でも一直線には来ない。匂いを拾いながら動いている。

さっきの血の匂いに反応した可能性が高い。


なら、死体を捨てた判断は正しい。


数十秒。足音は徐々に遠ざかった。完全に消えたわけじゃないが、俺の方向からは外れた。

そこでようやく息を吐く。


次は情報だ。

感情の整理は後回し。生き残るために必要なのは、手持ちの札の性能把握。


まず――休める場所。


森の真ん中で寝るのは自殺に近い。

俺は足元を選びながら移動した。柔らかい土は踏み跡が残る。根の上、岩の上を優先。苔は滑るが、跡は残りにくい。


しばらく進むと、倒木が二本、斜めに重なって空洞を作っている場所があった。

入口は狭いが、身体は入る。


内部に身を滑り込ませ、匂いを確かめる。

獣臭が薄い。糞もない。使われていない。


――仮の寝床。


ただし寝る前にやることがある。


上限測定。

魔物生成クリエイト》がどれだけ使えるか分からないまま動くのは、死にに行くのと同じだ。


俺は膝をつき、鑑定眼で自分を見た。


自分

HP 10/10

攻 2 防 2 敏 3

創生容量(C) 6/7

帯域(B) 余裕:低


創生容量が減っている。槍一本で1消費。

帯域は低い。つまり、操る数や複雑さに制限がある。


なら優先は――目と耳。


俺は《魔物生成》を意識し、小さな形を思い描いた。

この森にいて違和感がない。狭い場所を通れる。数を増やせる。


鼠。


影が滲み、床の土の上に小さな四足が現れた。黒っぽい毛並み。小さな目。

動く。呼吸もする。生き物だ。


気持ち悪いくらい自然だ。


鑑定眼を向ける。


対象:鼠型(生成)

HP 4/4

攻 1 防 1 敏 6

特性:夜目

危険度:低 誤差:低

所属:生成 生成補正:+0


……俺より速い。

攻防は低いが、斥候としては十分。


問題は維持コストと、帯域への負荷だ。


俺は命令を“言葉”じゃなく“意図”で投げた。


――周囲を見てこい。戻れ。


鼠が倒木の腹から出ていく。

同時に、頭の中に薄い情報が流れ込んだ。視界そのものが増えるわけじゃない。匂いと音と暗い輪郭が、距離感と一緒に混ざってくる。


粗い。でも役に立つ。


二体目。

同じように生成する。


腹の奥の熱がはっきり減った。創生容量が削れる感覚がある。

さらに、頭が少し重くなる。


鑑定眼で自分を見る。


自分

創生容量(C) 4/7

帯域(B) 余裕:低


……容量が2減った。

鼠一体で2消費? いや、違う。槍を維持していないのに、減り方が大きい。

たぶん「生物生成」は武器より重い。


帯域は相変わらず低。だけど、情報が二本になったことで処理が遅れる気配がある。

表示が変わらなくても、実感があるなら、それが制限だ。


三体目。


生成した瞬間、頭の奥が熱くなった。視界の端が薄く霞む。

吐き気ではない。集中が削ぎ落ちる感覚。手のひらがじっとり汗ばむ。


鑑定眼。


自分

創生容量(C) 2/7

帯域(B) 余裕:低


……危ない。

これ以上は、いざというときに槍も出せなくなる可能性がある。


俺は四体目を作らない。

限界を超える実験は、危機の時にやればいい。平時にやるのは愚かだ。


俺は三体の鼠に命令を揃えた。


――見ろ。匂いを拾え。音を拾え。戻れ。


意図を短くする。複雑にすると、俺の頭が焼ける。


鼠たちが散っていく。

俺は倒木の腹の中で、流れ込む情報だけを拾った。


左奥――水の音。沢。

右前――小型の気配が複数。

背後――さっきの重い足音、まだ近い。ゆっくり巡回している。


……寝られない。


仮の寝床が安全かどうか確定できない。

確定できない場所で眠るのは、死ぬ確率が高い。


俺は結論を置く。


寝床は一つじゃ足りない。

候補を複数持って、危険度で使い分ける。


鼠を呼び戻し、消した。

意識を切ると影が滲んで溶けるように消える。

同時に頭が軽くなった。呼吸が深くなる。


帯域の負荷は、体感の方が大きい。

戦闘前に斥候を維持するのは危険だ。使うなら短時間。


次。

経験値を稼ぐ方法。


さっきの小型魔物で《経験値 +1》。

獲物が強いほど増えるとしても、いきなり格上に挑むのは自殺だ。


俺が狙う獲物の条件はこれだ。

•単独

•逃げ道がある

•罠や地形で動きを制限できる

•音が出にくい


つまり、小型。

そして、こちらが主導権を取れる状況。


俺は槍を作った。

腹の熱が少し減る。創生容量の表示が気になって鑑定眼を向ける。


自分

創生容量(C) 1/7


……ギリギリだ。

槍一本でこの状態なら、生物生成は当面封印した方がいい。斥候を出す余裕がない。


俺は槍を手に、岩場の影で待った。

風下を取る。匂いを流さない。動かない。


しばらくして、小型が現れた。蜥蜴に似た魔物。舌が長い。

鑑定。


対象:蜥蜴型小魔

HP 10/10

攻 4 防 2 敏 5

特性:毒(微)

危険度:中 誤差:低


さっきの獣より硬い。毒持ち。

でも敏捷は俺より少し上程度。槍なら届く。


俺は地面の根を使って動線を限定し、槍を低く構えた。

前へ出ない。突っ込ませる。


蜥蜴が跳ねた。


そこで俺は一歩だけ引き、根に踏ませる。

わずかに姿勢が乱れた瞬間、槍を突く。


刺さった。

短い悲鳴。反射で距離を取る。毒が怖い。かすりでも後が面倒になる。


二撃目。動きを止める。

蜥蜴が痙攣し、動かなくなった。


表示が浮かぶ。


《討伐:経験値 +1》

魔物生成クリエイト 熟練 +1》

《経験値:2》


同じか。

獲物の格を少し上げても、今の段階じゃ差が出ないのかもしれない。


それより――創生容量。


鑑定眼。


自分

創生容量(C) 1/7


増えていない。

討伐で回復するわけじゃない。回復は休息か、別の条件か。


……今日の狩りはここまでだ。


俺は蜥蜴の死体を置いて離れた。血の匂いは危険。

今は“稼ぐ”より“生きる”。


沢の方向へ移動し、岩が割れてできた隙間を見つけた。入口が二つ。風が抜ける。匂いが溜まりにくい。

ここを第二の寝床にする。


岩陰に身を寄せ、目を閉じる。


創生容量が少ない。帯域も低い。

本体が弱いまま、この森で生き残るには――


無理をしない。

勝てる相手だけを選ぶ。

そして、確実に積み上げる。


森の音が、薄く俺の意識を撫でた。




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