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魔物転生——最弱ですが魔物生成で効率的に生き延びます  作者: 小麦
転生

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1/15

1 転生

――死んだ。


そう結論づけるまでに、数秒かかった。

目の前が白く弾け、次の瞬間には頬が湿った土に押しつけられていた。


土の匂い。腐葉土の甘さ。湿気。

肺に入る空気が重い。熱いわけじゃないのに、息が浅くなる。


俺はゆっくり起き上がり、周囲を見た。


空が見えない。枝と葉が何層にも重なって、薄暗い。森だ。

見慣れた山でも公園でもない。匂いが濃すぎる。音が少なすぎる。


最後の記憶は――車のライト、衝撃、宙に浮く感覚。

事故で死んだ。そこまでは確かだ。


ならここはどこだ。

それ以前に――俺は、俺なのか。


右手を持ち上げて確認する。指は五本。爪もある。形は人間。

けれど肌の色が違う。灰を薄く溶いたような色合いで、光を鈍く返す。触った感触も妙だ。皮膚の下に薄い膜があるみたいに、弾力が不自然に均一。


背筋が冷える。落ち着け。状況整理。


そのとき、視界の端に文字のようなものが滲んだ。

読めるのが気持ち悪い。読めてしまうのがもっと気持ち悪い。


魔物生成クリエイト Lv1》

魔物複写リライト Lv1》

鑑定眼アプレイズ Lv1》

《経験値:0》


……スキル。

ゲームみたいだが、地面の冷たさと匂いは現実すぎる。夢じゃない。


俺は試しに《鑑定眼》を意識した。


視界が一瞬だけ締まる。焦点が合うというより、余計な情報が削ぎ落ちる感じだ。

そして、自分の横に淡い表示が浮いた。


自分

HP 10/10

攻 2 防 2 敏 3

創生容量(C) 7/7

帯域(B) 余裕:低


……弱い。

数字の意味は直感で分かった。攻撃も敏捷も低い。

帯域? 余裕:低。つまり同時に考えたり操ったりする余力が少ないってことか。


本体が弱い。

それはこの状況で致命的だ。


俺は呼吸を整えながら森に目を向けた。

静かすぎる。静かだから、どんな音も目立つ。


遠くで枝が擦れた。


俺は反射的に止まる。視線は動かさない。耳だけで距離を測る。

……近い。軽い足音。小型。


藪の陰に、黒い影が見えた。四足。犬ほどではない。

目が光る。魔物――そう呼ぶのが自然だろう。


鑑定眼を向ける。


対象:小型獣魔

HP 8/8

攻 3 防 1 敏 6

特性:牙

危険度:中 誤差:低


……俺より速い。

逃げれば追いつかれる可能性がある。ここで背中を見せるのは危険だ。


戦う。

理由は単純だ。森で生き残るなら、最初に「狩れる」ことを確認する必要がある。


俺は《魔物生成クリエイト》を意識した。


腹の奥に熱が灯る。喉の奥が乾く。何かを絞り出す感覚。

同時に「作れる形」が浮かんだ。複雑なものは無理。細部が作れない。


なら単純でいい。


――刃。


土の上に影が滲み出て、一気に形になる。短い槍。先端が薄く尖っている。

手に馴染むのが不気味だ。


魔物が飛びかかってきた。速い。

俺の身体は反射で動いたが、戦い慣れていない遅さがある。間に合わない――


その瞬間、魔物の足が根に引っかかった。

一瞬だけ姿勢が崩れる。


俺はその一瞬に槍を突き出した。


刺さった。

柔らかい感触。熱い血が跳ねる。

魔物が短く鳴いた。森の音が、その悲鳴だけを拾った。


俺は槍を引き抜き、距離を取った。二撃目。

狙うのは急所じゃない。動きを止める。終わらせる。


魔物は数回もがき、やがて動かなくなった。


……殺した。


胃の奥がきしんだ。だが吐かない。ここで体力を削るのは最悪だ。

俺は鑑定眼を自分に戻した。


自分

HP 10/10

帯域(B) 余裕:低

創生容量(C) 6/7


創生容量が減っている。槍一本でも消費がある。

無限じゃない。限界を超えれば、たぶん俺は動けなくなる。


視界の端に文字が浮かんだ。


《討伐:経験値 +1》

魔物生成クリエイト 熟練 +1》

《経験値:1》


……倒せば増える。

倒したのが俺でも、俺の作った何かでも増えるなら――運用で伸びる。


だが、考える前にやることがある。


血の匂いは危険だ。

死体は“呼ぶ”。


俺は魔物の死体から離れた。根の上、岩の上、苔の厚い場所を選んで足跡を減らす。

背中が冷える。見られている気がする。


そして――音。


重い。

枝が折れる間隔が広い。体重がある。

さっきの魔物とは格が違う。


俺は息を殺した。


ここで粘る段階じゃない。

本体の俺は弱い。創生容量も有限。帯域も低い。


弱さは死だ。

なら最適化する。


まずは休める場所を確保する。

次に、狩って、経験値を稼ぐ。

同時に、生成の上限と維持の限界を測る。


重い足音が、遠くで葉を揺らした。


俺は森の暗さに紛れるように身を低くし、音のしない方向へ移動を始めた。

まだ――始まったばかりだ。

読んで頂きありがとうございます!

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