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機械少女の涙は蒼穹に還る ~メガリマギアの灯火  作者: しきもとえいき
第12章 爪牙の誓い

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第12章 爪牙の誓いⅣ~獣の会議

先ほどの喧騒はなく、静けさが場を覆っている。

 皆、ノビリスの言葉を待っていた。


「陛下は紛うことなき英雄であった。その偉大なお力をもってしても、十二星将の一人を討ち取ることがやっとということだ。帝国の中枢には爪も牙も届かない」


 ノビリスはその場にいる全員に視線を送りながら、言葉をつづけた。


「帝国は強く、我らは弱い」


 その一言に、場が凍りついた。


~本文より

 獣人たちが帝国から逃げ隠れするために、秘密裡に造られた地下空洞。

 天井には粗削りの支柱が立ち、壁面には魔導灯が淡く揺れている。


 そこに、異様な空気が満ちていた。

 様々な獣人たちが集っている。


 大地熊族。

 黒獅子族。

 青狼族。

 赤豹族。

 大狒狒族。

 そして、各地から逃れてきた混成の獣人の戦士たち。

 腕や胸に帝国の紋様が入った軍服を着ている者もいれば、農夫姿、あるいは鎧甲冑の姿など皆バラバラな格好だった。


 当然の如く、まとまりなど無い。

 本来、各種族の氏族の単位で動くことを基本とする、本能で動く獣人種たちに、まとまりを期待するのは、そもそも無理があった。


「ふざけるな!」


 黒獅子族の戦士が、机を叩いた。


「王は死んだ! もう終わりだ! 帝国に逆らえば、種ごと滅ぼされる!」


「だから何だ!」


 青狼族が唸る。


「誇りを奪われ、このまま飼われて生きる方が、よほど死だ!」


「青狼族は、余程死に足りないと見える」


「奴隷とし生きながらえて、何が待つ?」


 牙を剥き出し、毛を逆立てながら、唸り声と怒号が飛び交う。


「反乱だと!! 戦力差を見ろ! 魔導機兵にどう勝つ?」


「神獣の国以外、対抗できる勢力などないのは誰もが知る処だろう」


「もう逃げ場など――どこにもない。危険だとは思わないのかっ」


「どいつもこいつも腑抜け野郎だ。牙無し、角無しどもがっ」


 言葉がぶつかり合い、空気が軋む。

 殺気すら混じり始めた時、大地が震え唸り声をあげた。


 どんっと低い衝撃が、床を、壁を、天井を震わせた。

 併せて、辺り一面に神獣が放つものと酷似した神気が漂い始める

 一瞬で、皆が口をつぐみ、静寂が訪れた。


「皆、待たせた」


 穏やかだが、有無を言わさないその声音の主に、全員が視線を向けた。


 黄金の体毛に覆われた大地熊族の巨体から、あふれ出ている神気。

 そこに立っていたのは—— ベルセクオール部隊総司令となったノビリスだった。


 黄金の瞳で並み居る獣人の戦士たちを射抜いていた

 その存在だけで、空間の重さが変わる。


「ここでの首輪の盗み聞き機能は妨害している。そのことを踏まえて、皆、安心して口をつぐめ。よろしいか?」


 見た目によらず,存外可愛らしい声ではあった。

 だが、一人とて異を挟むものはいない。

 場内はたちまち静けさに覆われた。


「皆も知っての通り、ロド閣下が、いやロド・グリム王狼陛下がお隠れになった」


 ノビリスは皆の前で、わざわざ言い直した。はっきりと全員の耳に聞こえるように。


「表向きは王国の英雄に斃されたとなっているが、実際は帝国の赤の宰相によって殺された。それも、新兵器の実験台となってだ」


 一歩、前に出る。


「陛下は、赤の宰相イザベラと帝国の新兵器の両方をその命と引き換えに征伐為された。この意味が分かるか?」


 先ほどの喧騒はなく、静けさが場を覆っている。

 皆、ノビリスの言葉を待っていた。


「陛下は紛うことなき英雄であった。その偉大なお力をもってしても、十二星将の一人を討ち取ることがやっとということだ。帝国の中枢には爪も牙も届かない」


 ノビリスはその場にいる全員に視線を送りながら、言葉をつづけた。


「帝国は強く、我らは弱い」


 その一言に、場が凍りついた。

 戸惑いや怒りが居並ぶ者たちの表情に渦巻いていた。

 だがノビリスはそのまま続けた。


「まともに戦えば、全滅する。だから我らは今まで通り、帝国に従う」


 はっきりと言い切った。

 場内にどよめきが起こった。

 安堵するもの、怒り心頭なもの、様々な表情が浮かんでいる。


「今回はそのことを告げに来た。一族を守るためだ。皆我慢しろ。我慢できないものはこの場に残れ。個々に話の場を設ける。以外のものは、通達は終わりだ。帝国に疑われる前に解散しろ」


 安堵したもの、あるいは文句を言いながらもその場を後にするものが続々と続き、残ったものは全体の三割程度だった。


「さて、ここに残った者たちは不満分子だ。帝国に対し反逆する可能性の高いものたちだと理解する。其れでよいのか? 反意がないのであれば今すぐこの場から立ち去れっ」


 怒りの神気が溢れ出し、気概のないものは気を失いかねない迫力で、ノビリスは迫った。

 しかし、席を立つ者は誰もおらず、皆黙してノビリスを睨みつけている。


「それでいいんだな? 貴様らは死する覚悟があるのだなっ」


「神人であろうと、帝国に盲従するもの相手に、丸める尻尾など持ち合わせてはおらんっ」

「そうだ。殺さば殺せっ。牙はまだ折れてはいない。お前の肉のひとかけらでも食いちぎってやる」


 青狼族と狒々族の戦士が立ち上がり、ノビリスへと真っすぐに闘志を向けた。

 それ続いて、残ったものも次々に立ち上がった。

 ただでさえ強力な大地熊獣人で、神人に覚醒した戦士相手である。

 周りには大地熊獣人兵が完全武装で取り囲んでいて、居並ぶものはみな丸腰の、死を覚悟しての反抗であった。


「……そうか……皆、よくわかった。真なる同胞たちよ。お前たちの命はもらい受ける。まずは聞け」


 打って変わって穏やかな表情と声色で、ノビリスは全体を見渡した。

 わずかに首を向けて、睨むように言うと、手を拡げて立ちあがった。


「草原の者も岩山の者も、雪原の者も皆等しく話を聴けっ」


 大地が再度唸る。ノビリスの怒りに呼応しているのだ。

 神人は神々の加護をその身と魂に宿すものであり、信仰の対象にすらなりうる存在であった。ノビリスは敢えて口にはしていないが、獣たち本能により、そのことを嗅ぎ分けていた。

 皆、耳を傾けている。


「帝国は強大で巨大だ。だから、鈍い」


 空中に帝国の地図が展開される。 


「全てを守ることはできない」


 地図には帝国の補給網が強調され、浮かび上がっていた。


「これだ。これこそが狙いだ」


 ノビリスは、皆に向かって強く発した。


次回、陰謀が交叉し思惑が絡まります。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

お目にかかり嬉しい限りです。

しっかり描いていきますので、ぜひまたご一読ください。

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