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機械少女の涙は蒼穹に還る ~メガリマギアの灯火  作者: しきもとえいき
第11章 星が堕ちる日

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第11章  星が堕ちる日Ⅺ ~ 星たちへ捧げる祈り

 己の魂をアリアに載せて、爆ぜるのだ。

 魂核の連鎖崩壊を引き起こせ。

 そうすれば、全ては無に帰すことができる。

 早くしないと、終わりがくるぞ。

 多少の犠牲は目を瞑ればいい。幾千幾万の死が皇帝の偉業を輝かせる。

 さあ。始めよう。滅びの焔を今こそ上げるのだ。


~本文より

 イザベラは光に貫かれ、大地に倒れこんでいた。

 匂いも感触も音も、何も感じない。

 自分の躰を構成していたアリアの連結が崩れ、躰が崩壊していく。

 その様子をただ感じ取っていた。


 わたくしは、しくじった。陛下の御為に敵を屠るはずだったのに。

 なぜこうなったのだろう。

 わたくしは何処でまちがったのだろう。


 深い後悔があふれる中、再び暗い声が心の中に響く。


 お前の敵、あの美しい娘となったお前の美を奪った敵は、健在だ。


 ルミナリスが杖を片手に起き上がると、ルルリアの生存状態を確認し笑顔を浮かべていた。


 あのままでいいのか? お前の敵はあの通り、笑っているぞ。

 お前はお前を愛しぬいた男をその手にかけた。


 血に塗れた腕を抱きかかえたまま、息を引き取ったグランの顔が思い浮かぶ。


 そこまでしたのに、今はどうだ?


 オルクスが剣を収めると、倒れているゼイロスを担ぎ起こす。

 ゼイロスは大樹を背もたれにして息を吹き返し、安らかな顔で倒れているロドの亡骸を見て、哀惜と安堵の色を浮かべていた。


 のさばらせていいのか? あいつらを。


 否。絶対に否。

 あいつらを残してはいけない。

 あいつらだけは何としてでも——


 声が嗤った。静かに、そして邪悪に。


 まだ一つだけ、できることがある。

 己の魂をアリアに載せて、爆ぜるのだ。

 魂核の連鎖崩壊を引き起こせ。

 そうすれば、全ては無に帰すことができる。

 早くしないと、終わりがくるぞ。

 多少の犠牲は目を瞑ればいい。幾千幾万の死が皇帝の偉業を輝かせる。

 さあ。始めよう。滅びの焔を今こそ上げるのだ。


 私は、私は——。


 首筋から、小さな星の徴が浮かびあがり、イザベラの魂に触れる。


 ミゼア・・・・・・。お前はよくやった。

 全てを犠牲にして、他人のために尽くした。

 もういい。もういいんだ。


 イザベラの中にある黒い影は姿を消し、声も何時しか消えてなくなっていた。

 イザベラは気が付くと、かつて自分が生まれ育った貧民街だった街の一角に立っていた。

 かつては腐臭と血の匂いに溢れ、飢えた獣のような眼をした自分が居たところ。

 今はごみ一つなく、通りも建物も整えられ、道に倒れこんでいるものはなく、身なりの整った人々が笑顔で行きかっている。


「どうだ。お前は此処に戻ってきたことがなかっただろ?」


 振り返ると笑顔のグランがいた。


「お前に見せたかったんだよ。この風景を。さ、あれを見ろ」


 グランが指さした先には道路の標識があった。

 紅玉の星の道と銘打たれた標識が。


「お前は、俺の自慢だよ。ミゼア。俺の自慢の娘さ。ずっとな」


「グラン……おじちゃん……ありがとう……ごめんね」


 何時しか子供の姿になっていたイザベラの手をグランがそっと繋ぐ。


「謝らなくていい。な」


 泣きじゃくるイザベラを、グランの巨漢が抱え上げる。


「おう。ちゃんと泣いたな。偉いぞ」


 地に横たわるイザベラは、涙を一粒こぼすと、その姿は崩れ、壊れたアラクノイド・ナノスの山がそこにあるだけであった。

 戦場はその痕跡を残し、風が樹々の枝葉をそよがせ、静かに奏でていた。


 ルミナリスは、力の揺らぎを感じ、イザベラだったものの残骸を見つめたが、何もとらえられるものはなかった。

 脅威判定、青の領域。警戒必要なし。

 ルミナリスの百眼には、そう分析結果が表示されていた。



 港町ヴェスペリアのふ頭で、天に向けて手のひらをかざしていた男、ヴァルドが呟いた。


「レヴィが望まない終わりは、俺も認めん」


 ヴァルドの手にはリミナ・マキナ【アリア】の女王機体が握られていた。

 黒い霧がまとわりついているその機体を、目を細めて握りつぶすと、全てを砂に変え投げ捨てた。

 その背には、金の天秤をかたどった印章を身に着けた部隊が、複数名控え見守っている。


「英雄オルクス……ソラデアの関係者ルミナリス……帝国の闇が捉えつつある。奴らには捕らわれないようそれとなく手助けしろ」


 控えていた数名の内の一人が、静かにうなずくと姿を消した。


 ヴァルドが居た埠頭の沖合には、巨大な海竜の千切れた頭や胴体部分が浮かんでいた。

 その死骸に、冷たい目線を投げると、毅然と命を下す。


「神獣の死体を悪用されると困る。すぐさますべてを始末したのち、ヴェスペリアを活気ある街に復興する。最優先だ」


 控えていた者たちもうなずくと声もなく同じく姿を消した。


「アラン卿。好き勝手にはさせん」


 ヴァルドは灰色の瞳で空を見上げて呟いていた。


次回、新たな火種が思いを載せてくすぶり始めます。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

世界観の導入部分がおわり、物語がさらに深まっていきます。

またお目にかかれるようしっかりと書いていきますので、ご一読のお付き合いお願いします。

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