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機械少女の涙は蒼穹に還る ~メガリマギアの灯火  作者: しきもとえいき
第11章 星が堕ちる日

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第11章  星が堕ちる日Ⅸ ~ 呪いの歌姫の絶唱

「……来るぞ」


 森の風が止まり、揺れていた枝葉が凍り付いたように静まり返る。


 死してなお屈せぬ、恐るべき暴威。

 神獣ルーンの力が、ロドの体の奥底から唸りを上げて溢れ出す。

 屍の王は、静かに息を吸い込んだ。

 世界が息を止め、神獣の力に沈黙する。


~本文より

 怒り。拒絶。

 そして——王の誇り。

 それらすべてが、ロドの骸の中で渦巻いていた。

 その魂の渦巻きが、神獣の力を顕現させ、暴走させている。


 イザベラ【アリア】は冷徹な眼差しで状況を分析し、屍王ロドへの有効な攻略を考察していた。

 八重構造の防御魔法陣を破壊した神獣ルーンの力は、ナノスの制御中枢にまで浸食。

 ナノスの防御と攻撃手段について、神獣の結合により、再構築強化されていると判断。


「なるほど……英雄種はやはりしぶとい。でも、まだナノスの影響下にもあるのよね?」


 狂気の色を纏っているとはいえ、紅玉の知恵者と讃えられていたことは事実であり、その能力は消え去ったわけではない。


 ルミナリスは、そのことを察知していた。


「オルクス様。あのイザベラは、もう一方の魔導機械獣の力を奪うか利用するつもりです。周辺警戒をお願いしま——」


 ルミナリスの発言が終わる前に、青銀の焔がロドの背後に渦を巻き、巨大な光の輪を形作る。

 屍の獣王に従う青い炎を纏う屍の軍団は、一斉にイザベラ【アリア】へ突撃を開始した。

 何が何でもイザベラ【アリア】を破壊するつもりだ。


 空気が重く、森の樹々が、根元から軋み始めた。


 オルクスが低く呟く。


「……来るぞ」


 森の風が止まり、揺れていた枝葉が凍り付いたように静まり返る。


 死してなお屈せぬ、恐るべき暴威。

 神獣ルーンの力が、ロドの体の奥底から唸りを上げて溢れ出す。

 屍の王は、静かに息を吸い込んだ。

 世界が息を止め、神獣の力に沈黙する。


 青い焔が天へと昇り、巨大な光輪を描いた。

 ロドの瞳はただ一つの存在を見据えている。


 赤の兵器。魂を喰らう歌姫。イザベラ【アリア】。


 獣王の咆哮が、世界を震わせた。


 青白い閃光が、神獣の怒りそのものとなり、遮るものを全て破壊消滅させながら、イザベラ【アリア】へと突き進んだ。


 神獣の閃光が、赤の歌姫を呑み込み、しばし、世界は白い光に包まれていた。

 そして轟音と衝撃が遅れて押し寄せる。


 光は消え、煙が晴れた。


 そこにあった光景は、地面は溶け、森は焼き払われ、巨大な溝が戦場を横切る、破壊された空間だった。

 存在など許されないはずのその中心で、赤い光が、ゆっくりと灯った。


 砕けた無数の機械片が、地面から浮かび上がる。

 ナノスが赤い光を放ちながら、その機械片を吸収し、繭と化して生き物のように、蠢いている。

 やがて繭の中心に、赤い光が強く輝き、イザベラ【アリア】が姿を現した。


「凄まじい破壊の力ね。……これが神に至るものの力——」


 背中が裂け、その裂け目から、赤い光が翼のように広がっている。

 躰のあちこちには裂け目があり、むき出しになった赤い結晶から、黒い光が脈打っていた。


 イザベラ【アリア】は笑っていた。

 しかし、その瞳は狂気に満ちている。


「神獣の力……素晴らしいわ。ホント……手ごわいのは当然ね」


 声は穏やかだった。


 屍の獣王ロドが、ガクリと膝をつき、青銀の焔が揺らめき小さくなり、併せて屍王の軍団が次々に崩れ、ただの骸に戻っていく。


 赤いアラクノイド・ナノスが、青い炎を上げていたアラクノイド・ナノスを食っていた。青い炎を引き裂いて魂を取り込んでいるのだ。


「ロド殿。わたくしの方が新式なのよ。より強固に、強力に作られた兵器。あなたの力いただくくらいは造作もない」


 赤い色が辺りを満たし、アリアの歌がさらに色濃くなっていく。

 魂を奪う音色がさらに強くなって辺りを覆いつくす。


「むう。これはいかん。皆、儂の後ろにっ」


 オルクスは自分とアシュラムを盾に、ルミナリスとルルリアを守るべく、剣を掲げた。


「アシュラムっ、守れっ」


 剣からエーテルの風が吹き上がり、三人を守るべく包み込んだ。

 だが、歌が濃くなり、赤い光がさらに強まると、ルルリアが倒れ、オルクスが膝をつき、ルミナリスも地面に手をついた。


 ルミナリスは、リミナ・マキナは魂核に作用する兵器であり、魔導機兵である自分には何の影響も与えないと結論付けていた。


 しかし、今実際に影響を受けている。

 内部機能に何らかの強い障害を与えているのだ。

 何が作用しているのかが不明だ。

 だが確実に攻撃による障害で、体を起こしていることすら難しくなってきた。


 ルミナリスは防御結界を展開しながら、周辺状況を確認した。

 屍の獣王ロドが、膝をついたまま、青銀の焔がすっかりと弱まっていた。

 反して、イザベラ【アリア】は、赤い光を紫に変え、次々に亀裂が入り、紫の焔を噴き上げていた。


「これで、ようやく、真の力が発揮できる」


 赤い結晶が黒くなり、激しく脈動する。

 悲鳴と祈りと絶叫。そして怨嗟。

 それらが混ざり合った、魂を削る調べがさらに強くなる。


「……陛下、全ての敵の骸を並べて御覧に入れます。今少し、お待ちください」


 イザベラは恍惚の表情を浮かべた。


「神獣すら取り込んだ、この力を使い、覇道の邪魔をする者たちを、この世から消し去って差し上げますわ」


 黒い霧が、結晶の奥で蠢いた。

 甘く、歪んだ声が囁く。


(もっと壊せ。すべて滅ぼせ。魂を喰らえ)


 イザベラの笑みが広がる。


「障害は全て、滅びなさい」


 赤い翼が大きく広がって、歌がさらに強くなる。

 森の樹々が崩れ落ち、魂が軋む。

 屍の獣王ロドの躰から、青銀の焔はすっかりと掻き消え、紫の焔を上げているアラクノイド・ナノスが覆いつくしていた。


 オルクスは片膝をつき苦悶の表情を浮かべ、ルルリアは意識を失い昏倒している。

 ルミナリスはうずくまりながらも、百眼で状況をとらえ、思考領域で状況打破のための有効な手立てを演算していた。

 エーテルはすさまじい勢いで消費しており、残り一刻ももたない。

 アラクノイド・ナノスには将官機の命令機能も効果がなく、操作不能と表示されるばかりであった。


 イザベラは、勝ち誇り、ゆっくりと両腕を広げた。


「第二段階安全制御解除」


 紫の焔を噴き上げる赤い結晶が、完全に露出した。


「真式リミナ・マキナ【アリア】」


 紫の焔が空へ噴き上がり森の影が溶けた。 

 森の精霊たちが千々に砕かれ消えていく。


「——再定義の時間よ。全ての命は、陛下に従うの。そうでないなら滅びなさい」


 宙に浮かんだイザベラは微笑みを浮べてそう告げた。


次回、この戦いの決着を描きます。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

またお目にかかれるよう頑張ります。

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