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機械少女の涙は蒼穹に還る ~メガリマギアの灯火  作者: しきもとえいき


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第5章 隠し砦 シルヴァ・カストラⅤ ~ 新たな旅の扉

洞窟中に輝き溢れる様々な魔法陣にうっかり影響を与えないよう、ルミナリスもオルクスも慎重に慎重を重ねて、旅の扉の魔法陣を書き換えている。

 ランバートは、その様子をオルクスから借りた魔視眼鏡を通して魔法陣を眺めていた。

 縦横無尽に光る魔法陣に、時折浮かび上がる文字や、常に蠢き形を変える紋様。魔法を使えない者として、普段は決して見られない神秘と漂う緊張感に、言葉もでない。

~本文より

 無数の魔法陣が輝きを放ち、その放つ光が岩壁に反射して幻想的な光景を作り出しているアルカヌム・カストルムに至る秘密の洞窟。古代の大魔導が作り上げたこれらの魔法陣は、互いに複雑に絡み合いながら、全体に影響を及ぼしている。

 何かきっかけがあれば、すぐさま防御機能が作動し、凄まじい何かが洞窟に居るものを一掃するだろう。


 そんな危険な魔法陣の中心に立つオルクスは、魔剣アシュラムを握りしめ、魔法陣を書き換えるべく、干渉していた。長年の経験と積み上げた知識から生まれる冷静さと集中をもってしても、終始強張った表情を隠せない程、古代の大魔導は手強いようだ。

 そんなオルクスが、魔法陣のいくつかの紋様を置き換えると、ふうとため息を一つつき、明るい表情で顔をあげた。


「ルミナ嬢、これで大丈夫そうかの?」


 ルミナリスは、膨大な魔法紋様の情報を瞬時に解析する〝百眼″を使用し、並列思考で検算しながら、魔法陣の効果を検証していた。


「はい。これでこの浄玻璃結晶に、ランバート様の指定場所の座標を書き込んで転写すれば、何とかなるかと思います」


 洞窟中に輝き溢れる様々な魔法陣にうっかり影響を与えないよう、ルミナリスもオルクスも慎重に慎重を重ねて、旅の扉の魔法陣を書き換えている。

 ランバートは、その様子をオルクスから借りた魔視眼鏡を通して魔法陣を眺めていた。

 縦横無尽に光る魔法陣に、時折浮かび上がる文字や、常に蠢き形を変える紋様。魔法を使えない者として、普段は決して見られない神秘と漂う緊張感に、言葉もでない。


 ルミナリスは視線を外すと、杖を地面にトンっと一つ突いた。


「指定の座標、シルヴァ隠し砦に繋がりました。このまま進めば、向こうへ行けます」


 旅の扉の魔法陣が空間を震わせ、水面が泡立つように起動すると、深い森の中にある苔と岩にまみれた小高い丘が現れた。

 オルクスはニヤリと笑みを浮かべて、誰に向けたのかわからない言葉を放った。


「流石よな。うまく隠しておるわい。ただの丘のようじゃの」


 ルミナリスの百眼は、エーテルの流れがあからさまにおかしいのを見て取っていた。


「地下が本来の機能のようです。上の丘の部分は要塞と囮として、敵を惹きつけるための機能だと思われます」


 ランバートは自分にはただの丘としか見えておらず、もう少しで場所を間違えてはいないか? と尋ねるところだった。慌てて口をつぐみ、言いかけた言葉を飲み込んで、改めてルミナリスとオルクスに告げた。


「有難うございます。ここからは僕の役目ですね。この旅の扉は向こう側からでも開けますか?」


 ルミナリスは杖を再びトンっと一つ突くと、頷いた。


「はい。鍵である侯爵様の腕輪とあの石板の両方が有れば、こちら側でも向こう側でも開きます。ですので、ランバート様、オルクス様、そして私がまとめて移動しないと、残った者が秘密の洞窟の罠の餌食となります。それに—— ランバート様のみではあちら側も危険だと判断します」


「・・・・・・という事は何か罠が展開されている—— という解釈であっていますよね?」


「はい。対応が難しい精霊魔法が隅々に展開されています。恐らくは森の精霊魔法でしょうから、オルクス様がいらっしゃれば何とかなるかと」


「そうですか。いやあ、御二方とも流石ですね。魔法がからきしで、すいません」


 恐縮し小さくなるランバートの肩を、オルクスがバンバンと力強く叩いて、


「役回りは人それぞれじゃ。一つのことで気に病むなんぞ、不要じゃ」


 と明るく告げる。

 ランバートは少しばかり表情を立て直すと、背筋を伸ばした。


「彼らの説得は—— 僕がしてみますが、皆さんもご一緒にお願いします」


「では、さっさと参ろう」


 オルクスは躊躇いなどなく、旅の扉に足を踏み入れ、向こう側へ渡った。

 ルミナリスはランバートへ先に進むように促す。


「お先に進んでください。鍵を持つ私が最後でなければ、ここの罠が発動してしまいますので」


「わかりました。ではお先に」


 先に進むランバートの表情は硬く、口は真一文字で、拳も強く握られて、呼吸も深く荒かった。 強い緊張の色がありありと浮かんでいる。命を犠牲に囮になれと生存本能を真っ向から否定する説得なのだ。そうなってしまうのだろう。

 ルミナリスは、論理領域で思考を組み立てながら、推測していたが、思考領域に謎の乱れが入るため、その推論を遮断した。

 思考領域の故障の箇所を再度見直さなければならない。魔導結晶から浄玻璃結晶石に交換したので、抽出する魔力波はかなり増幅されている。故障個所の自動修復機能も期待できる。

 何かあっても、何とかなるだろう。


シルヴァカストラでの旧友との再会。それは—— 


読んで下さり、ありがとうございます。

読んで下さる方が居るからこその物語です。

しっかりと書いていきます。

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