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機械少女の涙は蒼穹に還る ~メガリマギアの灯火  作者: しきもとえいき


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第5章 隠し砦 シルヴァ・カストラⅣ ~黒牙部隊と長腕部隊、そして魔眼部隊

 魔眼部隊が撒いた情報に釣られてやってきたのは――魔鬼族のみで編成された長腕隊と、黒獅子族と剣牙虎族で構成された獣人部隊・黒牙隊である。


 どちらも、ゼイロス率いる魔眼部隊とは悪い意味で因縁浅からぬ連中であった。

~本文より

 帝国特別招集軍務特務隊――ベルセクオール隊。

 別名『使い捨て部隊』。その編成は、帝国の他の軍とは一線を画していた。


 部隊長に選ばれた者には、構成の自由裁量が与えられる。

 帝国基準を満たし、実験装備の装着に耐えられる者であれば、種族も能力も問われない。

 もともとは、激化し続ける戦況での人的損耗を補うための措置に過ぎなかった。だが、その結果生まれたのは――常識外れの異形と、研ぎ澄まされた強さを併せ持つ混成集団であった。


 それぞれの部隊は、帝国軍の中でもひときわ異彩を放っている。

 曲者揃いの精鋭たちは、無数の戦場で血塗れの戦果を積み上げてきた。


 そのベルセクオール隊の一団が、いま、魂壊の森を抜け、秘密の洞窟を目指して進軍していた。

 魔眼部隊が撒いた情報に釣られてやってきたのは――魔鬼族のみで編成された長腕隊と、黒獅子族と剣牙虎族で構成された獣人部隊・黒牙隊である。


 どちらも、ゼイロス率いる魔眼部隊とは悪い意味で因縁浅からぬ連中であった。


「レナ、どうだ?」


 部隊長ゼイロスの問いかけに応じたのは、水と森の魔人――ニンフ族のレナだ。

 魔に染まった精霊を祖とするニンフ族特有の鋭敏な嗅覚と魔力探知で、ここまで部隊を導いてきた案内役でもある。


「ええと……王城の地下の、独特な魔力を帯びた水の匂い。そこまでは追えたんですけどぉ」


 レナはゼイロスに色気を振りまきながら、谷を指差した。


「剣戟の谷のあたりから、完全に匂いが消えてます。魔力の気配も、全部かき消されてる。やっぱり、あの場所……ヤバいですよ。やだ、こわーい」


 ゼイロスはレナを一瞥もせず、赤い魔眼で、森の切れ目から見える『巨神の剣戟』の谷を凝視していた。

 視界の端に浮かぶ、ごくかすかな痕跡を見逃さず、満足げに頷く。


「そうだな。確かにヤバい場所ではあるが……完全には消しきれていない。僅かだが、足跡は残っている。――見つけたぞ、確かな痕跡だ」


 喉輪の通信機能を用い、ゼイロスは即座に部隊へ告げる。

 同時に、周辺状況を感応能力で探っているメンタリス族のヴァルタへと意識を向けた。


「ヴァルタ、様子はどうだ?」


 ヴァルタは喉輪を通さず、ゼイロスの思考へ直接、澄んだ声を送り込んできた。


『計画通りです。二方向から長腕と黒牙が釣れています。こちらに向かって一直線に接近中。本部の増援許可も降りました』


 ゼイロスは尻尾を楽しげに揺らしながら、幽霊猫族のセリオに指示を飛ばした。


「セリオ、『エーテリア・ロクス』で本部に報告だ。敵の痕跡を発見。場所は『巨神の剣戟』の谷、座標も添えて送れ」


 セリオは耳をぴんと立てて、元気よく答えた。


「了解! 黒腕と長牙にも共有しておきます!」


 ゼイロスは額に手を当て、小さくため息をつく。


「長腕と黒牙だ。間違えるなよ」


 そのやり取りを、巨人族の血を引くギガンシュ獣人――戦闘狂アルーザが、露骨に不機嫌そうな顔で見ていた。


「長腕だの黒牙だの……そんな連中に任せるくらいなら、俺たちでまとめてぶっ潰せば済む話だろうが」


 ゼイロスはアルーザの巨躯を見上げ、肩をすくめてみせる。


「お前の見せ場は、その後だ。罠や伏兵の掃除を長腕と黒牙にやらせてから、我々が美味しいところを頂く。分かったか?」


 アルーザは舌打ちしながらも、一歩引き下がった。


「……見せ場があるなら、まあいい。だが、手柄をあいつらに持っていかれる真似だけはするなよ、隊長さんよ」


 ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に、その瞳には戦いへの渇望が宿っている。

 ゼイロスは背後で片手を軽く上げ、ヴァルタに精神操作の労をねぎらった。

 帝国の実験で変異したアルーザの暴走する感情を安定させるのは、ヴァルタの重要な役目でもある。


「これで――準備は整ったな」


 ゼイロスは、肉食獣が獲物を前にしたような笑みを浮かべた。

 赤い魔眼には、自信と期待、そして狡猾な算盤勘定が宿っている。


「長腕も黒牙も、まとめて痛い目を見てもらおう。王国の誇る兵たちよ――テラ・インペリウス・セクタを破壊した、その実力を存分に見せてくれ。その後で、じっくりと料理してやるさ」


 森を渡る風が、一行の進む先――『巨神の剣戟』の谷の方角から、かすかな気配を運んできた。

 そこには、追う者と追われる者、そして狩人同士の思惑が交差する戦場が、静かに口を開けて待ち構えている。


シルヴァカストラでの囮としての悲しい戦いがこれから始まります。


ここまで読んでいただき有難うございます。物書き(素人ですが)としてとても嬉しいです。

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