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機械少女の涙は蒼穹に還る ~メガリマギアの灯火  作者: しきもとえいき


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第4章 追うものと追われる者Ⅶ ~ 追跡部隊の思惑

「オルクス・フルミニス。王国の守護剣聖にして、敵を切り伏せ、薙ぎ払うもの・・・・・・だったかな」


 ゼイロスはたたポツリと呟いただけだが、その名前の効果は絶大だった。

 セリオは口をあんぐりと開けたまま動かず、ヴァルタは瞬きの回数が異常に多く、アルーザは目の奥をぎらつかせつつ、牙を嚙み鳴らしている。

 そして一斉に、眼を閉じたまま腕を組んでいるゼイロスを見た。

 ゼイロスは皆の視線を受け、顔をゆっくりと上げると、明るい表情でため息を大きくついた。

~本文より抜粋

 ゼイロスは剣猫族特有の細長くしなやかな尻尾を揺らしながら、魂壊の森に逃げ込んだ王国兵を炙り出すため、探査用魔導球儀『エーテリア・ロクス』の投影する地図を眺めていた。

 魂壊の森の一角ではあるが、眼と鼻の先には『巨神の剣戟』の谷が有り、アルーザの戦闘で魔獣は近くにはおらず、毒虫や森の魔物は森と水の魔人であるニンフ族のレナが制御しているため、思いの外快適であった。


「セリオ、影に潜れない範囲の境はどうだ?」


「おおよそですが、こんな感じです」


 セリオは手際よく『エーテリア・ロクス』を使用して確認した阻害されている範囲を光点で示した。

 水と森の魔人ニンフ族のレナが地図を覗き込みながら、


「王城の地下水の匂いはこの方向で不自然に途切れています。あの何もない谷から先です。森では精霊の意思が邪魔しますので、魔法の痕跡は見つけられません」


 厚みのある唇を尖らせて、甘い息をふっと吹きかけると、赤い躰をうねらせた毒羽蟲を使い、水の匂いのしていた後を光点に合わせて線で描く。

 ゼイロスとセリオは、毒虫に目を丸くしながら、レナを見つめた。


「これだから嫌なんだよ。魔法しか使えない魔人はさ。いい加減機械操作を覚えろよ」


 と、セリオは牙を剝き出し悪態をついたが、レナはいつも以上にまじめな緊張の面持ちで、そんな悪口すら耳に入らないまま、言葉を継いだ。


「強力な魔獣の意思に働きかけることが出来て、テラ・インペリウス・セクタの追撃を逃れ、森の精霊が守る存在は・・・・・・エルフ族しかいません。そして、人間種の王城で守りにつき、その退避に帯同して手を貸すほど人間種に肩入れし、守ろうとする腕利きのエルフになると・・・・・・・・・・・・私は・・・・・・一人しか知りません・・・・・・」


 その表情にはありありと緊張と恐怖の色が浮かんでいた。


「名前を出すことすらしたくない、魔人種の仇敵、あの、あの、音のエルフ族の剣士・・・・・・です」


「オルクス・フルミニス。王国の守護剣聖にして、敵を切り伏せ、薙ぎ払うもの・・・・・・だったかな」


 ゼイロスはたたポツリと呟いただけだが、その名前の効果は絶大だった。

 セリオは口をあんぐりと開けたまま動かず、ヴァルタは瞬きの回数が異常に多く、アルーザは目の奥をぎらつかせつつ、牙を嚙み鳴らしている。

 そして一斉に、眼を閉じたまま腕を組んでいるゼイロスを見た。

 ゼイロスは皆の視線を受け、顔をゆっくりと上げると、明るい表情でため息を大きくついた。


「まさかの伝説が相手とは・・・・・・洒落にもならんな。だが、鋼鉄の主蟲が壊されたのもそう考えれば、納得もいく・・・・・・。戦うとやられそうたが、見つけるだけなら何とでもできるし、何よりも大金を生む。いいか、稼ぎ時だぞ。まずは確証だ。ヴァルタ、王都城フェリキタティスで破壊された魔導機兵で、件の大英雄様が破壊したと思われるものを監察官権限で調べられないか?」


「わかりました。英雄に破壊されたと思われる案件への該当情報を探してみます」


 魔導球儀『エーテリア・ロクス』をセリオから受け取るとその表面をぱちぱちと弾きながら、あっという間に目もくらむような相当数の情報を引っ張りだし、照合しては数を絞り込んでいく。


「記録照合で断定された案件数は、戦闘機兵歩兵に重装甲砲兵、拠点制圧用巨大機兵まで、その数五十機以上・・・・・・対象個体が王都制圧戦で単独で撃破したものであるとされています。破壊されたのは全て帝国侵攻軍の最新鋭のアークメック型。その後の対象個体の行方は不明となっています。個体の危険度は赤の領域に指定、優先討伐対象です」


「うそ・・・・・・うそよ。生身のエルフでそこまで・・・・・・例え伝説の殺戮者でも・・・・・・出来るわけないじゃない・・・・・・」


 レナが余りの内容に驚き恐怖で美しい顔を歪めたが、同時に、「くくかか」と不敵な笑い声が響いてきた。


「これは愉快だ。たまらんっ、強敵中の強敵。トーラベルトすらかすむ大物中の大物ではないか。伝説通りの強さを誇るおとぎ話の英雄が相手か。良い、実に良い。良い獲物だっ」


 とアルーザが大きな声でほえ上げ声を上げて笑っている。

 ゼイロスも赤くて大きな剣猫族特有の眼をキラキラさせながら、笑みを浮かべていた。


「流石は我が魔眼部隊随一の戦闘要員。こういう時にこそ頼もしいな。戦う時が来たら、封印を解いて、その能力の全てを使って戦う事を許可する。だからそれまで力を養い、開放戦力をため込んでおけよ」


 ゼイロスも少しばかり嬉しそうでもあり、レナは勿論だが驚きの表情が消えないセリオが、あんぐりと空いていた口をどうにかこうにか動かしながら、意見を飛ばした。


「た、隊長、ちょっと待って下さい。最新鋭のアークメック型戦闘機兵を五十機と、頑丈が売りのテラ・インペリウス・セクタを激流の中で脱出ついでに破壊してのける相手ですよ。戦うだなんて、僕らだけでは戦力不足では・・・・・・」


 ゼイロスはセリオに向き合うと、不敵な笑顔を浮かべた。


「隊長・・・・・・その顔、何か悪だくみしていますね」


「セリオは確か妹を第四等民の予備学校に入れたいのだろう?」


「はい。だからこそお金が要るんです。獣人が第四等民として扱われるためには、隊長みたいに大手柄を何度も上げるか、帝国予備学校にちゃんと入って、そこを出ないと資格を貰えない。第四等民にさえなれたら、まともな生活ができる・・・・・・だから、僕は稼がないといけないんです。生きて稼がないと死んでしまったら元も子もないんですよ」


 ゼイロスはセリオの肩をぽんと叩くと、穏やかに語りかけた。


「前にも言ったろう。見つけることで金を稼ぐ。追跡して追跡して追跡しまくり、疲れ果てたところでとどめを刺せばいい。どんな強い英雄でもな、腹は減るし眠くもなる。たびたび襲われたら隙も生まれるさ。任せろ、大金を稼いでやる」


 レナが見る者を扇情的に蠱惑する匂いを躰から無意識に放ちながら、呆れた目線でセリオをじっとりと見下しながら、


「坊や、少しその足りない頭を使ったらどうかしら? 度々襲うってことは・・・・・・アタシたちじゃあ駒不足でしょ。他の部隊にやらせておいしい所を頂けば、痛い思いは余りしないですむでしょう。体だけじゃなくておつむの中身もちっちゃいのねー」


 目の前で豊満な胸をゆすり見せつけながら嘲笑う。

 セリオは怒りをぐっと噛み殺して、レナを無視するとゼイロスへ向き直った。


「隊長。ということはベルセクオール以外の部隊ってことですか?」


 ゼイロスは首を振ると、笑みを浮かべた。


「いいや、ベルセクオール部隊の黒牙隊と長腕隊に声をかけようと思っている。あいつらには手柄を何度か横取りされているし、貸しがたっぷりとある。凄腕の奴らに俺たちの代わりに戦ってもらおう。もちろん情報手札は隠した上でだがな。第一発見者の報奨金は頂く。後はどれほどの相手かがこれでわかる。この森を踏破装備なしで渡りぬけるような相手だ。さぞかし、面白くなるぞ」


 ヴァルタは魔導球儀『エーテリア・ロクス』を走査して、


『アルーザ、この森での追跡内容は理解完了したか?』 


 喉輪の通信機能を共有化し、アルーザへ通信した。

 アルーザはそのまま喉輪の通信機能を利用し、秘匿回線を使わず、返答した。


『はっ、強敵だが、いい金になるってコトだろ。単純で良いじゃねえか。森のこの地点まで行きゃあ何とかなんだろ』


 ご丁寧に目標座標迄可視化して、広域帯での返答である。

 アルーザは深く考察することは苦手な、戦闘にのみ特化した個体で、だまし合いなど出来ない。戦闘においては抜群のセンスと魔獣トーラベルトすら討ち取れるほどの能力はあるのだが、策略等には不向きであることはベルセクオール部隊では周知の事実でもある。


『アルーザ、不用意すぎだっ・・・・・・』


 とヴァルタは焦った一言をわざわざ放ち、魔導球の通信を切って、ゼイロスと目を合わせニヤリと笑みを交わした。

 セリオはその様子を呆れ顔で見つめながら、


「いくら何でも、今の見え見えな誘いに、凄腕ばかりの長腕と黒牙の部隊が引っ掛かる訳ないでしょ? 何でこんな無駄なことするんですか? 隊長」


 とゼイロスに尋ねる。

 レナが愉快そうに身を乗り出して、セリオの顔を覗き込みながら、


「そっかー、僕ちゃんはまだこの部隊に入って、日が浅いから知らないんでちゅねぇ。お姉さんが教えてあげまちゅよ。ヴァルタは数少ないメンタリス族だからぁ、通信波に思念波をのせて、通信機越しでも対象の精神を少しだけ操れるんでちゅ。わかりまちたかぁ」


 と辛らつに小馬鹿にする。

 黒い影を纏い怒りの表情になりかけたセリオの肩をポンとゼイロスは叩くと、


「まあ、そういう事だ。うちの隊は曲者ばかりだが、信頼できるのは知っているだろ? それにだ。長腕隊と黒牙隊の奴らは戦闘能力だけは上の上だし、邪魔者を片付けてくれて、後々楽できそうだろう?」


 と更に明るく笑いかけた。


次回は 秘密の城塞内での今後の為、ランバートが秘策を打ちます。


読んでいただき有難うございます。


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