第12章 爪牙の誓いⅦ ~ 勝利と暗い嗤い
地下空洞—— 獣たちの避難所ネステルの一角。
会議所として使われている広場のその中心に、ノビリスは立っていた。
黄金の体毛が、輝いて、金の瞳は、炎のように強い意志に燃えていた。
「……やっと落ちたな」
低く、呟く。
~本文より
まずはお詫びを。同じ話を投稿するという過ちをしてしまいました。
申し訳ありません。訂正更新しました。
——轟音とともに魔動機司令塔が崩れ落ちた。
大地がうねり、石壁が砕け、魔導機構が、悲鳴のような音を上げて崩壊する。
帝国の小規模ではあるが、駐留前哨基地が獣人反乱軍の手により攻略された様子であった。
補給線を断たれた前哨基地に犠牲を払いながらも、多段攻撃を仕掛けた結果だ。
斃れて散乱している骸の多くは、獣人兵のものであった。
腕が、牙が転がり、酸鼻な戦場を物語っていた。
宙に投げられた映像を獣人たちが食い入るように見つめていた。
地下空洞—— 獣たちの避難所ネステルの一角。
会議所として使われている広場のその中心に、ノビリスは立っていた。
黄金の体毛が、輝いて、金の瞳は、炎のように強い意志に燃えていた。
「……やっと落ちたな」
低く、呟く。
「やった……」
誰かが、息を漏らす。
「本当に……やったぞ……!」
声が震える。
信じられないものを見るように、崩れた司令塔を見つめている。
「おおおおおおおおおおッ!!」
黒獅子族が拳を叩きつけ咆哮をあげた。
青狼族が牙を鳴らし、赤豹族が空を裂くように吼えた。
その場にいた獣人の戦士たちは皆、歓喜に包まれていた。
「やれる!!」
「帝国に……勝てる!!」
誰もが、そう信じた。
初めてだった。
帝国に対して、“勝利”を掴んだのは。
魔人種でも精霊人種でもない。獣人種が勝ち取ったのだ。
ノビリスは、その光景を見ていた。
黙って、静かに拳を、握る。
少しばかりの違和感が過ったが、その考えを締め出した。
今だけは、この瞬間だけは—— 勝利に酔いたかったのだ。
この戦いは、ただの反乱ではない。
自分の思いを似せた葬送なのだ。
胸の奥で、ロドの姿が過る。
あの瞳が、あの背中が、あの誇り高き王の姿が。
ノビリスは目を閉じて想った。
遠く星の静謐の彼方に眠るロドヘと届くように。
「……閣下……ご覧いただいたでしょうか……」
短く、息を吐く。
「貴方の牙は——まだ折れていません。爪もまたこの通り鋭く研ぎ澄まされております」
ノビリスの思いに大地が応え、震えた。
ロドに頭を撫でられたような気がして、ノビリスは少しだけ頬を緩めた。
そして、気を引き締めると、そこにロドが居るかのように報告する。
「ここから始めます。我らの牙が敵を食い破り、爪で引き裂いて、閣下の思いを獣人種の全てに与える戦いを」
その声は、低く、だが、確かに全員に届いた。
獣人たちのざわめきが静まり、視線が、集まる。
皆、ノビリスを見ていた。
ノビリスは思いのたけを載せて皆を見渡した。
「我らは、戦う」
はっきりと、皆の前で宣言した。
「正面からではなく、誇りに溺れてでもない」
ノビリスの神気が躰から立ち昇る。
「帝国の血を、喰らい、削り、奪い取るのだ。巨人の力を削り取って、動けなくなった巨人の喉をかみ砕く。幾年幾代かかろうとも必ずだ」
全員の獣人種の顔を見つめながら、力強く言い切った。
「そして、失われた我らの誇りを、取り戻す」
その瞬間、再び、咆哮が上がった。
「おおおおおおおおおおおおッ!!」
今度は、先ほどよりも深い。
それは歓喜も混じっていたが、それよりも強い決意に溢れていた。
間違いなくその中心に、ノビリスは立っていた。
まとまることを知らなかった獣人種は、今、氏族の垣根を越えて、団結をした。
ノビリスは女王として、戦いを始めた者として、崇敬を集めていた。
だが——
その熱狂の外側、遠くで静かに覗いているものがいた。
誰にも気づかれず。誰にも触れられず。ただ——観ている。
そして、ほんのわずかに……
嗤った。
次回、陰謀をめぐり、再びルミナリスの話に戻ります。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
色々うっかりですが、またお目にかかれるようしっかりと描いていきます。




