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機械少女の涙は蒼穹に還る ~メガリマギアの灯火  作者: しきもとえいき
第12章 爪牙の誓い

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第12章 爪牙の誓いⅥ ~ 闇に紛れて襲うものと覗くもの

 山間に築かれたその施設は、それは、落ちるはずのない拠点だった。攻略難度は極めて高く、補給基地というより、拠点要塞であった。

 監視用魔導機械が休むことなく動いており、文字通り蟲一匹侵入を許さない。


 だが、今夜は違った。

 ゴルデンオスト商会の大規模納入があるのだ。

 警報装置のいくつかは停止しており、なおかつ監視魔動機が意図的に停止されていた。


~本文より

 帝国補給中継拠点——第七補給塔。

 夜の帳が辺りを覆い、強い雨の降りしきる音に包まれている。


 山間に築かれたその施設は、それは、落ちるはずのない拠点だった。攻略難度は極めて高く、補給基地というより、拠点要塞であった。

 監視用魔導機械が休むことなく動いており、文字通り蟲一匹侵入を許さない。


 だが、今夜は違った。

 ゴルデンオスト商会の大規模納入があるのだ。

 警報装置のいくつかは停止しており、なおかつ監視魔動機が意図的に停止されていた。


 金の枝を咥えた小鳥の紋章が書かれた魔導車両が、大蛇のように車列を作っている。

 弾薬、食料などの定期大規模搬入だ。


 ゴルデンオスト輸送部隊には、帝国軍に次いで、勇猛で鳴らした傭兵部門である武装交易執行局の護衛部隊が専従している。


 武装交易執行局局長ガルザン・レオヴァは獣人種の剣牙虎族の高名な士族長であり、その意を組んで作られた傭兵部門は、獣人種を中心に、亡国の騎士の人間種やエルフ族の魔導士など様々な戦闘職のものたちで構成されている。

 輸送護衛の専門である「渡り鳥の羽」が脇を固めており、部隊長は白狼族のミレイア・セルトゥナ、という野心あふれる獣人種であった。


「……セラフィナも、ずいぶんとまあ、思い切ったものだね。しくじったら……って考えないのが、怖いところか。全部あの子の手のひらの上だね」


 ミレイアは鼻にしわを寄せて笑った。

 同僚の副部隊長で弟のリュガが念押しで返答した。


「姉さん。弟として言わせてもらうけど、本当に責任はないんだよね?」


「ああ。帝国の正式命令書もある。要は帝国のやらかしってヤツさ。うちらは部隊編成を帝国に捻じ曲げられたってことで、内政流動の契約部門の証明書まで取り付けてある。あとはうまく逃げ出すだけだ。帝国兵の獣人の皆さんにお任せしてね。中身は大丈夫かい?」


「半分は積み込み確認時に別のところに移送している。今回はその分がうちの部隊の儲けになるかな。そこそこな金額だけど……危険手当としてはやや物足りない」


「セラフィナからも、金は入る。それにあいつに貸しを作っておけば、これからも美味しい思いができるってもんだ」


 リュガは辺りの気配を窺いながら、ため息を一つついた。


「地獄行の片道切符にだけはしないでください。隊長」


 きびきびとした動きで礼をするとリュガは配置に戻っていった。

 ミレイアはにやりと笑って呟いた。


「任せておきなよ。損したことは一度もないだろ? 副官」


 ミレイアは近くにいた青狼族の帝国兵に合図した。


「ここからは、アンタらの仕事だ。あとは任せたよ」


 青狼族の帝国兵は黙ってうなずくと、正門前の警備兵に何やら話をした。

 激しく雨が降りそそぐ。

 その雨に紛れながら、数人の獣人兵たちが中へと進むが、門の警備兵はわざわざ目を逸らした。

 門衛の魔導機兵は動きを停止している。


 輸送隊の車列が、ゆっくりと補給塔へと吸い込まれていく。

 門は開いている。

 影が、雨の揺らぎに紛れて動いた。。


 通常ならば、厳重な確認が入るはずが—— 車の積み荷を誰も見ていない。

 魔導車両が、内部へと進入する。

 車から飛び出す影が、建物の陰に次々と滑り込む。


 音もなく、気配もなく、内部へと。


「……入った」


 低い囁き。それが合図だった。


 ——カチ。どこかで、小さな音がした。


 鉄壁の魔導障壁が、一部だけ消えた。

 見張りの人間種の帝国兵がすぐさま気付いた。


「何だ? 注意警報を——」


 音もなく現れた赤豹族の兵士が、首を捩じり沈黙させた。

 警報は——鳴らない。


「……行け」


 青狼族の声とともに、帝国の柔らかい喉笛に、闇が噛みついた。


「突撃ッ!!」


 黒獅子族が率いる獣人兵たちが、一気に雪崩れ込む。

 魔導機兵は、動いていない。

 軍事訓練につき、戦闘参加禁止の指示がでていた。


「いいかっ、爆発、炎上を使うなっ。機械が起きるっ。静かに人間種どもを狩りつくせ」


 徹底的に訓練された帝国兵とはいえ、隙を突かれかつ混乱している状況では、戦闘にたけた獣人兵の敵にはならなかった。


 帝国兵佐官の声が響いた。


「な、なぜだ!? 警報は——魔導機兵は何をして——」


「うるさい」


 赤豹族の兵士が、背後から音もなく現れ、短剣で喉を切り裂いた。


「……始まったか」


 ミレイアは、振り返らなかった。


「戦いたがりの奴らは、どいつもこいつも、良い顧客だ」


 すでに車列は、反転している。

 仕事は終わった。


「行くよ。ここから先は、あいつらの戦争だ」


 軽く言うと、頭の中で今回儲けた金額をはじき出し、分配をどうするかを考え始めていた。


「——まあまあの稼ぎだね」


 雨の中、車列は、闇へと消えた。


3000PV到達感謝です。

私にとってはとても大きな一歩です。

またお目にかかれるよう、しっかりと描いていきます。

ありがとうございました。

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