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ヒュルヒュルヒュルという独特の音ととも花火打ち上げられ、パッと花火が開いた。遅れてドンという音がする。


綺麗。

そう思った瞬間、目の前に光が溢れ、真希の体の中を何かが突き抜けた。

「今の…?」

「花火が落ちたんですね。真希さんも、今日だけは見れるようになってますから。」

僕がそうしてあげたかったのにな。榊原はちぇーっと唇を窄めた。


「これが地上の花火…」

そう言っている間に、次の花火が上がったようだ。

「ほらあそこ見てください。花火が開きますよ。」

榊原が指差した方を見ると、グレープフルーツ大の玉がゆっくりと空から落ちてきた。ぽてっと地面に転がること、数秒。ドンという音とともにその玉が開いて、周りに散っていった。

「すごい!」

キラキラとしたものが真希の体を通り抜けて、ドンという音が、真希の体を震えさせた。


「すごい!これが地上に咲く花火なのね。」

「はい。」

「花火はどこから落ちてくるの?」

「あの辺りですよ。」

榊原は花火大会会場の向かい側を指差した。高層ビルが立ち並ぶオフィス街のちょうど天辺あたりに、ふわふわと何かが大量に浮かんでいる。

「…なに?あれ。」

「地上の花火の元ですよ。」

「地上の花火の元?」

「はい。見ててください。あっちにも咲きますよ。」

花火の元の一つが動き出して、真希と榊原の頭上を通り過ぎていく。

花火っていうより、これは…

「花火の元って風船なの?」

そう。ふわふわと浮いているのはどう見ても風船だった。ちょうど子供が膨らませて遊ぶサイズの物で、何の変哲もないどこにでも売っていそうなものだ。

「風船の下に小さい丸いものがついているのは見えますか?あれが花火の元なんですよ。」

「うーん」

薪は目を凝らせて風船の下の紐を見た。確かに風船の紐の下にはピンポン玉ほどの何かがくくりつけられているようだ。

ふわふわと移動していた風船は、ぴたりと止まるとゆっくりと萎みながら下に落ちてきた。風船が萎むにつれて、紐の下のピンポン玉が大きくなっていく。

「あの風船の中に火の魔力が入っているんですよ。それを花火の元に注入して、膨らむと花火の玉の完成です。地上に落ちると風船の部分が着火して、花火が咲きます。」

真希たちには見えないところに落下したようだ。遠くでドンという音がして、キラキラが舞った。

「成功ですね。」

「面白いわね。あそこに浮かんでいる風船が全部落ちるの?」

「はい。その予定です。いろいろなところに散っていって、適当なところで落ちますね。あー…次のはちょっとやばいかもしれません。」


榊原が指差した先では、いくつかの風船がふわふわと動き始めている。その中の一つがどんどんしぼんで、地上に降りてきているのだが。


「何かが乗っかってる?」

「そうです、あれが花火のキラキラを好む魔物ですね。」

真希が目を細めて凝視すると、猿のような形をした黒い物体が風船にしがみついていた。その猿のようなものは、自分の足を膨らみ始めた花火の玉に器用に乗せると、様子を伺っている。

「ああやって花火の玉が大きくなるのを待っているのですよ。小さい玉のままだと渋いらしいんですよね。膨れると熟れた果実のように甘くなります。」

そう言っている間も、花火の玉はどんどん大きくなる。

地上にパタリと玉が落ちた。すると、その魔物は自分の細長い指先と爪を使って、花火の玉の中に爪の先を突っ込んだ。

「ちょっと!あれ!」

真希は榊原の腕を引っ張った。

「ああやって花火の中のキラキラした部分だけを取っちゃうんですよ。」

榊原は情けない声をして言った。

グリグリと花火の玉を手を突っ込んでいたサルだが、やがてお目当てのものを見つけたらしい。キキ!という嬉しそうな声を出すと、中からビー玉ほどの丸いキラキラした球を取り出した。

「あれがキラキラの塊ですね。」

サルは嬉しそうに尻尾をぴんと上げると、キラキラをパックリと食べた。『美味しい〜』とでも言っていそうな顔で身悶えた。

「あれね、初めはシュワシュワするんですよ。それからどんどん甘みが広がっていって、後味はすっきりなものもあれば、さっぱりなものもあるんですけど。色によって味も違うんですよね。魔物が食べたのはピンク色だから、きっとストロベリー味ですね。」

「どうするのよ!?取られちゃってるわよ!」

「しょうがないですね。あれはもう手遅れです。」

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