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「逆に、例えばすごい悪者のキャラがいたとして、実はその悪者が仲間にはすごく優しかったり、家族思いだったりすると、ちょっとホロッときませんか。」

「そうね、あれでしょう。不良が捨て猫にミルクをあげてるみたいな。」

「そうそう、そんな感じです。人間というのは、100%の善も100%の悪も受け入れられないんですよ。ですから、魔力を込めた花火は基本的にその場にいる人々を浄化するものではありますが、100%浄化の力を込めてしまうと、人間は狂ってしまうんです。」

「狂って…」

真希はゾクリとした。

浄化のせいで狂うなんて…


「ですから、花火の中には必ず穢れも入れます。その穢れがいわゆる割薬ですね。キラキラの浄化を穢れの割薬で飛ばすんです。」

「そうなんだ。でも魔物なら穢れを食べればいいのにね。」

「そうなんですけど…キラキラしたやつってちょっと甘くて美味しいんですよね。」

「食べたことがあるの?」

びっくりして真希は榊原を見た。

チャレンジャー過ぎだろ。


「ちょっと興味本位で。」

えへへと榊原は笑った。

「例年だったら、常連さんというか、ここにはこの魔物が来てっていう縄張りが大体決まってるんですけど、ここ数年めっきり花火大会の数が減ってしまったから、今年はいろいろなところで今までに見たことのないような魔物が出てくるようになりましてね。クマが民家を襲うみたいな感じって思ってもらえればいいんですけど。」

「それ、大惨事じゃない。」

「そうなんです。だから、ちょっと今年はワサワサとしてましてね。」

「ええ。そんな、大丈夫なの榊原さん?」

何かしたほうがいいんじゃ。

真希はキョロキョロと周りを見渡した。


「でも僕には関係のない話です。」

「え?」

「僕、今日は非番なんで。」

ええ。ここまで話を振っておいてか。


「僕、火の関係は全く役立たずなんで。お前がいてもしょうがないって周りの人に蹴り出されちゃったんですよ。」

「…そうなの。」

そんな大事なときに蹴り出されるのってやばくない、この人。

「だから今日は真希さん、二人きりのデートを楽しみましょうね。」

「そんな話を聞いたら、落ち着いて花火なんか見れないわよ。」

真希はまだ周りをキョロキョロと見回している。


「あ、そろそろ花火が上がるようですよ。」

花火大会の開始を知らせるパンパンという花火が連続して上がった。人々は花火会場へ足早に向かっていく。つい立ち止まって話し込んでしまった榊原と真希も、そちらへ向かおうとした。が、二人の元へ反対方向から歩きながら近づいてきた男がいる。

着物を着流した気怠けな様子の男は、後ろに警官のような制服を着た数人を引き連れている。

「あぁ?榊原かよ。こんなところで遊び呆けてるとかいい身分じゃねか。」

「いやあ、あはは。こちら僕の彼女の真希さんです。」

榊原は照れたように笑うと真希を紹介した。

「いえ、違います。顔見知り程度の関係の人間です。」

真希はすかさず否定した。

その男は浴衣姿の真希と榊原を見て、何やってんだこのリア充爆発しろという面で2人を見ている。

「僕は今日は非番ですからねえ。」

「そうだな、この役立たずが。」

けっと男が吐き捨てた。


ちょっと、さすがにそれはないんじゃない。


真希はびっくりして言葉を失った。自分で言うならまだしも、目の前にいる人間に面と向かってそんなことを言うだろうか。だが榊原は全く気にもしていないという風に笑っている。


ちょっとどうなの、榊原さん。大丈夫なのかしら。もしかして…いじめられてたりする?


「榊原さんは役立たずなんかじゃないですけど。」

ずいっと真希が榊原の前に出て、男の前に向かい合った。


男はおもしろそうな顔をして、片方の眉をぐいっと上げた。ヒュウと口笛を吹く。

「お嬢ちゃん、こいつがなんだか知ってるのか。」

「榊原さんのことはよく存じ上げております。」

…知らないけど。でも悪い人じゃないし、こんな扱いを受けるべき人でもない。

何様だ、お前は。そう気持ちを込めて真希はキッと男を睨んだ。男は、真希の睨みなど全く気にしていないようだ。

「面白い。じゃあ今日の花火大会のことも聞いてるんだな。」

「はい、聞いています。」

…さっき聞いたばっかりだけど。

「せっかくだから、このお嬢ちゃんにも地上の花火を見れるようにしてやろうじゃないか。」

男がぱっと手をかざすと、真希の目の前が一瞬暗くなった。真希はぱちパチパチ瞬きをする。

あれ、今の何だったんだろう。


「ちょっとやめてくださいよ、真希さんに魔術をかけるのは僕の専売特許なんですから。これからの楽しみにとっておいたのに。」

榊原が抗議する。

「いや、そんなことないから。」

真希はすかさず否定した。

何を企んでいるんだ、この男は。


「せいぜいで楽しんでいけよ。」

ニヤニヤとしながら真希と榊原を見ると、男性はひらひらと手をかざしながら去っていった。「ちょっと今の何なの、榊原さん、あんな態度とられて。ちゃんとに怒りなさいよ。舐められるわよ。」

「いいんですよ。古くからの付き合いですから。彼はいつもあんな感じです。」

「そんなこと言ったって——」

「それより真希さん、ほら、花火が上がりますよ。」

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