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面白い!面白い!でも…
目の端にチラチラと大物が浮かんでいるのが見えるのだ。
象に、サイに、ライオンなんてものまでいる。
捕まえたい。
チャレンジしたい。
このまま負けっぱなしなんて悔しすぎる。
「しょうがないですね」
榊原が苦笑しながら真希を見ている。
「いいですよ。象さんにチャレンジしても」
「でも…」
「一つの輪投げだと難しいかもしれないですから、さっきみたいに何本か束にしてまとめても大丈夫です。」
「でも羽をつけると危ないんでしょう?」
真希だって一般人の安全を犠牲にしてまで輪投げをしたいとは思わない。
真希はチラリと象を見た。象は『パオォォォォォン』と鳴いた。さしずめ、やれるものならやってみろというところか。
ピキッ
真希の頬が引き攣った。
「今の真希さんなら大丈夫だと思います。勢いよく投げれば、最悪ミスしても宇宙に飛んでいくだけですから」
…それは…大丈夫なんだろうか。
真希は一応、榊原に遠慮して5本ほど輪投げを重ねると、天使の羽をつけて象に向かって飛ばした。羽が勢いよく羽ばたいて象に接近する。
いけるか。と思ったが、輪投げが象の大きさまで広がる間に、象が鼻先からふんっと息を噴き出して輪投げを弾き飛ばしてしまった。
「象さんは鼻息が荒いですからね。お水を吸っていたらこの辺りが水びだしになっているところでしたね」
弾かれた輪投げはうまい具合に木に引っかかったようだ。するすると木の根元まで下がると、地面がぽかりと開いて輪投げを飲み込んでしまった。
「え!?」
「あの木は栄養が足りていなかったようですね。でも大丈夫。これで100年は寿命が伸びましたよ」
「えええ」
「それよりも、真希さん。象さんを見てください」
真希が象を見上げると、ドヤ顔をした象がふん、ふんと鼻息を荒げている。
「きぃ!やっぱり10本必要ね」
真希は輪投げを10本重ねると、ぐいっと引き伸ばした。フラフープほどの大きさになった輪投げに天使の羽をつけると、真希は両足で大地を踏み締めると象を見据えた。
天使の羽が早く飛び立ちたいとばかりに羽をばたばたさせている。
「ちょっと待って!今考えるから!」
さっき火をつけて投げた時よりも早く飛ばさないといけない。
でないとまた弾き飛ばされてしまう。
と言うことはただ投げるだけじゃだめだ。
円盤投のようにくるっと回って投げられたらベストだが、流石にそれだとコントロールが崩れる。でも半回転くらいならいけるだろう。
真希は象に向かって両足を縦に並べて踏みしめると、体を捻って輪投げを飛ばした。
「いけ!」
さすがにちょっと重いからコントロールはどうか。
不安がよぎる真希をよそに、天使の羽は勢いよく羽ばたくと象の体にピタリとはまった。そのままぎゅっと巨体を締め付ける。
『バォォォォォーン!!』
像が悔しそうに鳴いた。
「やった!」
「特大な獲物が捕れましたね」
地上に落ちてきた象は悔しそうな顔をして、真希の方を見ている。
「ふふ。人間様を馬鹿にしようなんて100万年早いのよ」
真希は腕を組んで象を見下ろした。
「きっとこの魔物の方が真希さんより長生きしてると思いますよ」
榊原がのほほんと言った。
「榊原さん、次はあのライオンよ!」
真希はぴしっと遠くに浮かんでいるライオンを指差した。
真希の視線に気がついたのか、ライオンは真希の方を向いて『ガォォォォ!』と威嚇した。
「輪投げよし。翼よし」
真希は、フラフープの大きさの輪投げを体の回転を使って放り投げた。
足腰の強さって本当に大事だわ。
ライオンは勢いよく飛んできた輪投げを牙で受け止めると、ガリッと噛み砕いた。その残骸を真希の方へ勢いよく投げ返してきた。
「危ない!真希さん!」
——ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!
榊原が前に出て、水の膜を張って輪投げを受け止めた。
勢いを殺しきれなかった輪投げの破片が水の膜に次々と突き刺さる。
「はっ」
真希は短く息を吸うとその光景を瞬きもせず見た。
とっさのことに体が動かなかった。
背中からどくどくと汗が流れ出てくる。
「大丈夫ですか、真希さん」
「…うん、ごめん。また調子に乗っちゃった」
榊原は両手で真希の頬を包んだ。その手の温かさに安心すると同時に震えが遅れてやってきた。
「怖い思いをしましたから、今日はもうやめ…ないですね真希さん」
仕方がないなという顔をして榊原は笑った。真希の目からはまだ闘争心が消えていないことを見抜いたのだ。
今も真希の目はチラチラとライオンの方を見ている、
怖かった。榊原さんが庇ってくれなかったら怪我…どころか死んでいたかもしれない。
でも…
「うん反省した。ちょっといい気になってた。象を捕まえられたから」
あの瞬間。分かってしまったのだ。
榊原さんがいれば大丈夫。
真希の直感がそう告げてている。




