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聖女の代理人  作者: 春香秋灯
最果てのエリカ
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貴族になれないサラ

 よい話で終わればよいのだが、こんな面倒臭い茶会を催したのは、このためではない。よい話で始まったところで、私は目的としていた事をきくことにした。


「以前から思っていたのですが、どうして、サラは貴族に戻れないのですか? サラの叔父家族だけでなく、親族も処刑されてしまいましたが、サラが暮らしていた家も、治めるべき領地も、そのまま残っています。血筋的にも問題ありませんし、後見人をつけて、サラを貴族に戻ればよいではありませんか」

 貴族に戻りたいサラ。別に、戻ろうと思えば、戻れそうな気がする。

 しかし、サラは貴族には戻れなかった。エリカ様も口添えまでしたというのにだ。


 ここで、私が口添えしたので、サラは貴族に戻れる、と期待して、アインズ王子とリスキスお父様を期待をこめて見つめた。

 二人は、お互いに困ったように苦笑する。

「その話は、なかなか複雑なんだよ。エリカ様は、先代エリカ様から、何か聞いているかな?」

「貴族は足の引っ張り合いをする、とエリカ様はおっしゃっていました」

「それは、正しい。貴族だけではない。人は皆、弱者に対しては酷いこともする」

「でも、権利は主張した者勝ち、とも言います。サラは権利を主張しています。それを却下するのはどうしてですか?」

「あの横領事件は、わかっていると思うけど、エリカ様の予算に手をつけたことが問題なんだ。エリカ様は、王国を守るための、人身御供のような存在。そんな人の物を盗むことは、この国ではあってはいけないことなんだよ」

 貴族である、リスキスお父様ですら、エリカ様を尊ぶ。その根底にあるのは、国の安寧らしい。

「と、表向きの話はここでおしまいだ。ここからは、裏の話になるが、サラ嬢は、聞きたいかい?」

 孤児院の子どもたちすら、この話は知っている。

 だけど、違う側面の話がある。それは、リスキスお父様だけでなく、アインズ王子も知っているようだった。アインズ王子は、サラにも私にも視線を合わせないようにしている。

「教えてください」

 何かの陰謀でもあるのだろう。納得できる理由を知りたくて、サラは頷く。

「さて、ここからは裏の話だ。

 エリカ様がいう通り、後見人をつければ、サラ嬢が、まあ、一つ下がって子爵くらいになって再出発することは可能だった。この後見人が見つからなかった」

「そんなっ! リスキス公爵様はなってくださらないのですか!?」

「私は裁く側だ。身内でもない君の後見人にはならない。

 これは、言い方が悪いが、日頃の行いが出た結果だ。君の両親は、横領だけでなく、下位の貴族には態度が横柄だった。領地のほうでも、評判が良くなかった。まあ、君の叔父家族も評判が悪かったので、誰がなっても、領民には関係なかったんだろう。

 私は冷たい人間でね。君のことは気の毒とは思っていない。よくある話だからだ。だが、エリカ様に頼まれたので、後見人を探したよ。君が貴族時代に仲良くしていたという子爵家や男爵家にも頼んでみたよ。

 結果、誰も後見人にはならなかった。口を揃えて言っていたよ。酷い目にあわされてばかりだった。二度と関わりたくない、と。

 これが、君が貴族になれない、本当の理由だ」

 サラは真っ青になって、フォークもつけていないアップルパイを見下ろした。



 お茶会はしばらくして、お開きとなった。サラは、すっかり落ち込んで、椅子から立てなくなった。

 私は、サラにはそれ以上、話しかけず、リスキスお父様たちを見送りにいった。

「すみません、イヤな役をさせてしまって」

 私はリスキスお父様に謝った。実は、裏の話は亡くなったエリカ様から聞いていた。でも、私からサラにいうことが出来なかった。

 馬車に先にアインズ王子とロベルトお兄様を乗せてから、リスキスお父様は私を抱きしめた。

「いいんだよ。可愛い娘のためなら、憎まれ役だってしよう」

「今度来る時までには、リスキスお母様宛のお手紙を書きます。今日から、毎日、お祈りします」

「ありがとう」

 そうして、やっと、リスキスお父様は馬車に乗って、帰っていった。


 いつもの小屋に戻れば、顔をぐしゃぐしゃにしたサラがまだ椅子に座っていた。せっかく焼いたアップルパイをフォークで何度も何度も刺して、ぐしゃぐしゃにしていた。

「ざまあみろ、って思ってるでしょ」

「サラが貴族に戻れば、面倒事が減ったのに、とは思ってる」

 それは本心だ。サラは、元貴族、といって、手伝いもしない、面倒事を押し付ける、孤児院の子どもたちを顎で使う、村の人たちをバカにしている、とともかく酷い。

 それが、今、仇となっていることに、サラは気づかされた。悔しくて、でも、今更、自分を曲げたくない。

 私みたいに、赤ん坊の頃から孤児院にいれば、そんなことはないのだろう。それが普通。でも、サラは貴族として七年くらいは生きていた。まだ、孤児よりも、貴族としてのほうが長く生きている。

 私は、サラの向かいに座って、食べかけのアップルパイを食べた。時間がたっても、やっぱり最高に美味しい。

「サラはまだ、エリカ様代理になりたいの?」

「なんで、あんたばっかり。王子様も、リスキス公爵様も、あんたばっかり!」

「でも、私は一生、貴族になれないわ。私は一生、結婚もできない。ずっと、ここで生きて、ここで死ぬの」

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