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聖女の代理人  作者: 春香秋灯
山のエリカ
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愛しの妖精姫

 お元気でしょうか、旦那様。

 愛しの妖精姫は、無事、見つかりました。隣り町で、持っていたお金を全て、悪い男たちにとられて、裏路地で泣いていました。

 お嬢様を安全な宿屋に置いて、質の悪い男たちの所に行きましたが、すでに遅すぎました。アジトにいた男たちは、生きる肉塊となっていました。唯一、助かったのは、お嬢様をおびき寄せるために使われた兄弟二人です。この手紙と路銀を持たせますので、保護してあげてください。





 お元気でしょうか、旦那様。

 愛しの妖精姫は、男爵領には帰らないというので、僕が保護しています。

 お嬢様に路銀を持たせると、すぐにとられたり、すられたりするので、食べ物を持たせることにしたのですが、すぐにお腹をすかした子どもや老人に与えてしまって、お腹をすかして宿屋に帰ってきました。

 お嬢様から食べ物を受け取った者たちは、本当に困っているなら、問題がありませんが、その者から取り上げた悪者は、食べた途端、食べ物が毒となって死んでしまいました。

 人が多い街は便利ですが、お嬢様を食い物にする悪者が多すぎますので、もう少し、田舎の方へと行きます。




 お元気でしょうか、旦那様。

 愛しの妖精姫は、馬車よりも歩きの旅をとても気に入っています。

 男爵領が元に戻ったと聞きました。戻ったので、帰りましょう、と提案しましたが、お嬢様は「迷惑をかけたので、怒られるから帰らない」と言って、山の聖域のほうへと向かっていきました。何かが呼んでいるような気がする、というので、行くしかありません。

 途中、山賊や盗賊にあいましたが、僕がどうにか対処出来る数でしたが、お嬢様に怪我をさせそうになりました。お嬢様は無事でしたが、恐怖に、妖精憑きの力を暴走させてしまいました。夜、こっそりと、山賊や盗賊がいそうなアジトを見に行きましたが、不幸にも、足がちぎれた男たちで溢れていました。

 歩く旅は楽しいですが、護衛もいないので、危険が多すぎます。






 お元気でしょうか、旦那様。

 男の子が無事、生まれたと聞きました。おめでとうございます。お祝いを送ります。愛しの妖精姫の手作りハンカチですので、きっと、ご利益があります。

 山の麓にはいくつかの村がありますが、「もう人はこりごり」とお嬢様がいいましたので、山奥に小屋を建てて暮らすことにしました。

 愛しの妖精姫の加護のお陰で、打ち捨てられた小屋を発見しましたので、それを改築して、暮らすことになりました。最近では、お嬢様の体調がすぐれず、出歩かせないように、僕が家事全般をこなしていましたが、ありがたいことに、妊娠でした。女の子がいい、とお嬢様が言っているので、女の子でしょう。





 お元気でしょうか、旦那様。

 手紙のほう、随分と時間が空いてしまって、すみません。愛しの妖精姫は、無事、女の子を産みました。母子ともに元気です。

 名前をどうするか、悩んでいると、「エリィ」とお嬢様は決めてしまいました。聖女様の名前に近いので、それがまずいと思いましたが、お嬢様が決めてしまったことは覆されないので、仕方がありませんね。

 たくさんの布を頂きましたので、赤ん坊のものを色々と作ります。ありがとうございます。





 お元気でしょうか、旦那様。

 山の麓が不景気なようで、あまり見慣れない僕が歩くと、囲まれそうになります。男爵領はどうですか? 愛しの妖精姫が今も愛している男爵領ですから、大丈夫だと思います。

 娘のエリィが話すようになりましたが、田舎言葉を使います。僕もお嬢様も、そんな言葉は使いません。どうやら、エリィは妖精が見えて、声が聞こえる妖精憑きのようです。見えない友達と外で遊んでいる姿を何度と見たので、確かでしょう。

 お嬢様は、早速、エリィに妖精憑きの心得を教えていました。お嬢様も妖精の姿を見たり聞いたりしていれば、心得に従ったでしょうね。





 お元気でしょうか、旦那様。

 愛しの妖精姫は、どうしても手伝いたい、というので、山の恵みを探す手伝いをお願いすることとなりました。

 さすがに、危険ですから、僕と一緒に収穫するのですが、お嬢様が行くほう行くほう、どこもかしこも、山の恵みに溢れています。妖精憑きの力は本当にすごいです。

 途中、麓の村の子どもが、お腹を空かせて泣いていました。お嬢様は可哀想だと、持っている食べ物全てを子どもに与えてしまいました。

 それから、味をしめたのか、幾度か子どもに会いました。大人を連れてきていないようなので、お嬢様の好きなようにさせています。話を聞くと、麓の村だけでなく、近隣の村全てが、食料不足になっているそうです。お嬢様はそれを聞いて、可哀想だと思ったのでしょう。突然、小屋の食べ物を村に持っていく、と言い出しました。

 子どもを通してみる村は、貧しいのだと思います。しかし、たくさんの食べ物を持って行って、大人がどう反応するのか、想像が出来ません。

 妖精憑きのお嬢様の願いは叶えなければなりません。この手紙を送ってから、お嬢様と一緒に、麓の村に作ってある保存食を持っていきます。

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