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聖女の代理人  作者: 春香秋灯
中央都市のエリカ
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中央都市は、試験制

 エリカ様は、だいたい、赤ん坊から選ばれる。そこはどこでも同じ。ただ、中央都市は法の番人の役割を与えられているため、ただ、赤ん坊を一人選ぶわけにはいかない。

 エリカ様がもうそろそろ、というと、その頃から、集まった赤ん坊は容赦なくエリカ様教育をされる。

 エリカ様教育は、エリカ様だけではなく、神官やシスターの手をかりることとなる。だいたい、マニュアルが出来ているのだが、子育てとは戦争だ、と常にエリカ様は遠い目で言っていた。

 だいたい、1~3年くらいの歳の差の子どもたいは、5歳になると、試験を受けさせられる。この試験なかなか難しい5歳の子どもに、人生とはなんぞや、みたいなことを口頭で聞いてくるのだから。

 だいたいの子どもは、5歳の試験を通らない。だから、数年分の赤ん坊を常に教育しないといけない。いっそのこと、優秀な子どもをエリカ様にすればいいのに、と今の私は思う。

 そうして、ふるいにかけられて、まあまあ優秀な子が残る。残っている子たちをまた、ふるいにかけるのだ。



 それで選ばれるエリカ様は、本当の天才だ。時々、王侯貴族が困った問題をエリカ様に解決してもらおう、と来ることがある。




 実は、私は一度、不合格だった。5歳の子どもに、この人生とはなんぞや、なんて、よくもまあ聞くものだ。呆れて、仕方がなかった。

 エリカ様不合格だと、即、名前を与えられる。それまでは、番号で呼ばれるなんて、人権ゼロの世界だ。

 私は、5歳で不合格だった。番号は20番。だから、名前をニド、と呼ばれた。なんとなく、番号に近そう。

 そうして、二年の月日が経ち、エリカ様候補が全て不合格となった。


 これには、エリカ様も頭を抱えた。もう、かなり高齢なので、次のエリカ様にバトンタッチしたい。でも、生半可なエリカ様を選ぶわけにはいかない。


 気の毒に、と図書館を日参している私は遠くから見て、そう思った。


「ニドや、何て本を読んでるんだい」

 ある日、エリカ様が、私の読んでいる本のタイトルを見て、驚いた。

 それは、一年の国で起こった出来事をまとめた本だった。孤児院という狭い世界で生きている私にとって、外の世界は憧れであった。なので、こういう外の情報を取り入れていた。いつか、孤児院の外で生活するのだから、情報はあって困るものではない。

 エリカ様はどっこいしょ、と私の近くに座った。

「ニドは、将来、何になりたいんだい?」

「うーん、私は手が不器用ですし、この通り、視力もよくありません。だから、頭を使う仕事につきたいですね。文官とか、本を書く人とか、そういうのです。でも、旅人もいいですね。海を見てみたいです」

 恵まれた中央都市だが、外のほうがもっと良いように思えた。海の向こうには帝国がある。

 王国よりも、もっと栄えた帝国。残念ながら、本でしか得られない情報は古い。憧れはあった。

 エリカ様は私の肩を力いっぱいつんだ。

「ニドや、すまんな。お前は外には出られんよ」

 遅れて賢さを示してしまった私は、膝をかかえて泣くしかなかった。

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