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聖女の代理人  作者: 春香秋灯
王都のエリカ
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王都のエリカ様の引退

 最果てのエリカ様が船で帝国に向かってすぐ、私はお役御免になった。お役御免になると、役人って、態度最悪なの。ほら出ていけ、なんていうのよ、最低ー。

 まあ、成人している立派な女性は、いつまでも居座るわけにはいかないので、私は荷物もそこそこに、小屋を追い出される。

 一応、エリカ様としての重役を頑張った、ということで、生きている限り、生活は国がみてくれることとなった。やだ、さっきの訂正しなきゃ。

 何年ぶりかの外は、雨だった。天気よい時に追い出してよ。本当に身分上の人って、最低だわ。

 前触れもなく追い出されたので、私を見送る人はいない。誰にも言わず、こっそりと出ていけ、と言われた。たぶん、神官長も知らない。

 杖をついて、瓶底眼鏡で、足場の悪いところを頑張て歩いていくと、地味な馬車が待っていた。それに乗っていけ、ということだ。

 生まれて初めて聖域の外に行くし、馬車も初めてだ。何もかも初めてだ。

「行くな!」

 気づいた神官長が教会から走ってきた。しつこい!

「はやく走ってください」

 御者は私の意図をくんでくれたのか、それとも、そう命じられたのか、乗り心地よりも速さ優先で馬を走らせた。

 自堕落な生活をしているくせに、鍛え上げられた体で、神官長は雨の中、追いかけてくる。頑張れ、馬。

「あっ」

 こけた、神官長が。

 それからすぐ、神官長の姿は見えなくなった。





 こうして、私は王都の聖域から解放された。





 本当は、実家に帰ることも考えた。両親にも兄弟姉妹にも、帰っておいで、と面と向かって言われた。

 でも、成人して、右足が動かなくて、目もそのうち見えなくなって、寿命だって、実は削られている。見た目の若さはあるけどね。

 気持ち悪い私を家族におまかせするのは、気が引けた。だから、黙って逃げた。

 だって、逃げたっていいって、最果てのエリカ様に私、いっちゃったんだもの。だったら、私が逃げなきゃ。


 しばらくして、神官長が代わった。次の神官長は、なんと、第二王子のサキト様だ。なあんだ、王位継承権、脱落しちゃったんだ。まあ、他にも兄弟いるんだし、一足先に楽になったっていいのよ。

 落ち着いてから、私は、サキト様に手紙を送った。もちろん、こちらの住処がわからないようにした。




ごきげんよう、サキト様

神官長のお仕事はどうですか?

神官長のお仕事だけでなく、王族のお仕事も頑張っていますか?

もう、尻ぬぐいする人がいないので、頑張ってくださいね。

遠くで応援しています。





 そういえば、婚約者がいたはずだけど、どうなったんだろう? そこはもう、わからない。

 サキト様のお手紙を最後に、私の世界は真っ暗になった。

 もっと、いろんなもの見たかったなー。でも、足も満足に歩けないし、見た目幼いし、そんなに外に行けなかった。

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