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聖女の代理人  作者: 春香秋灯
王都のエリカ
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外れエリカ様

 ある日、どこそこの公爵夫妻が、養女を迎えたい、とあちこちの孤児院に慰問に行っていた。もちろん、王都のほうも来たが、お眼鏡にかなわないということだった。

 とても気さくで、神官長とも親しい公爵夫妻が選んだのは、最果ての聖域にある孤児院の女の子だった。

 公爵夫妻が報告にきたので、それは良かったですねー、と私は喜んだ。とても良い貴族なので、選ばれた子は幸せになるだろう。

 ところが、その選ばれた女の子がエリカ様になってしまった。

 エリカ様は、普通、赤ん坊から選ばれる。ところが、最果てのエリカ様は、何か予知のようなものを受けたのか、8歳の女の子を次代のエリカ様に選んだ。

 この前例のないことに、国王まで動いたのだが、くだんの不正事件が発覚してしまい、それどころではなくなってしまった。

 そして、王都の神官長が代替わりしてしまったのだが、この話にはイヤな続きがある。





 どこそこの公爵夫人は、お茶会で、最果てのエリカ様をベタ誉めした。ともかくいい子、ともかく優しい子、ともかく可愛い子、とベタ誉め。

「そういえば、皆さん、孤児院への慰問はされていますか? なんと、アインズ王子は、最果ての聖域に度々、慰問に行っているのですよ。あんなに遠いのに、月に二度も、最果てのエリカ様とお話しているのですって」

 それを聞いてしまったご婦人方は、戦々恐々とした。

 王族でさえ、片道まあまあの距離の最果ての聖域に行っているという。では、近い王都の聖域なんか、毎日だって通えるよね、みたいに言われたようなものである。





 ちょうど、私の右足が使えなくなった頃の話である。どんどんと、高貴なお客様が来るわ来るわ。

 せっかくなので、孤児を養子にしよう、なんて言い出すものだから、神官長が頑張ってお断りをしていた。

 その頃は、さすがに神官長も忙しくて、悪い遊びはしなかった。良かったのだけど、良くないこともあった。

 教会や孤児院の慰問ついでに、エリカ様にご挨拶を、と私が呼ばれる。

 右足が不自由になってしまった私は、杖をついて、頑張ってお手伝いをしているが、ともかく足手まといである。

 結果、神官長に片腕で抱き上げられて、高貴なお客様と面談することとなる。

「このような醜態で、申し訳ございません」

 何度やられても、慣れない。顔が真っ赤になる。

「いえいえ、右足が使えないことは神官長様から聞いていますので。わざわざありがとうございます」

「だから言っただろう。エリカ様の面談は、負担が大きいって」

「かまいませんよ。教会のことも、孤児院のことも、見ていってください」

 口が悪いのは相変わらずだが、それが許されるのは王族の血筋である。

 私は、国王よりも偉いけど、所詮は商人の娘、と少し侮られているのが見え見えだった。


 当たり障りのない話をして、やっと帰ってもらえた。

 といっても、ちょっと離れただけである。離れた所で、知り合いとでも会ったのか、世間話が始まる。

「あれが噂の外れエリカ様か」

「五人のエリカ様を見たが、王都のエリカ様はぱっとしないな」

「まともに歩くことも出来ないとは、王弟殿下も、とんだ外れをひいたな」

 言いたい放題である。

 他のエリカ様に会ったことはない。会えないし、この聖域から離れることは出来ないのでわからないが、会ったことがある人がいうので、私はぱっとしない外れなのだろう。

「さあ、エリカ様もお勤めがあるでしょう。今日もお手伝いしますよ」

 周りに聞こえるように、大きな声で神官長がいう。すると、慌てて走り去っていく足音が遠のいていった。

 私の右足がダメになってから、聖域のお勤めを神官長が手伝ってくれるようになった。別に、一人で出来る、大した事ではないのだけど、責任を感じているので、手伝ってもらっている。

「神官長、私より先に死んではいけませんよ。お勤め、大変なんですから」

「わかってるから、もう言うな」

「はいはい」

 死にたいなんて言うので、私は忘れたころに、言うようにしている。

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