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聖女の代理人  作者: 春香秋灯
王都のエリカ
19/67

新しい神官長が来ました

 エリカ様が代替わりして間もなく、しわくちゃおじいちゃん神官長が引退することとなった。とてもいい人だったんだけど、もう、耳は遠いし、ヨボヨボだし、大変。

 その頃は、私はまだ、右足が健在だったので、よく、神官長のお手伝いをしていた。

 エリカ様の仕事は毎日の聖域をお守りするだけで、特にやることがない。他の聖域のことは知らないけど、王都の聖域は、困ることはない。服も、食べ物も、日用品も、全て寄付寄進によって成り立っている。

 王都なので孤児院にも教育が行き届いているので、困ったことはなかった。


 この、神官長の代替わり、表向きは、おじいちゃんだから引退、となっている。

 しかし、実は、孤児院やエリカ様の予算の横領が貴族や役人だけでなく、神官やシスターまで行っていることが発覚し、責任をとって神官長を辞職することとなったのだ。

 全く、汚職に無縁な清廉潔白な神官長なのに、本当に可哀想。


 そして、厳しくいこう、と今回は王族が神官長に降下してきたわけである。


 さぞや立派な人が来るだろう、と待って待って待って、西の空が茜色になっても真っ暗な教会を蝋燭で照らして待っていると、とうとう、やってきた。



 酔っ払いが。



「あ、飲んだ飲んだー。おやー、こんなトコに、聖女様がいるとは、俺は死んだかなー?」

 神官長の服を来た酔っ払いが。

 酒に酔っているとはいえ、私が聖女に見えるとは、気分悪くはない。


「神官長、お待ちしておりました。ほら、お部屋に案内します!」

 こういうの、本当は神官やシスターの仕事なのだけど、汚職で全て、処刑されてしまったので、いないのだ。嘆かわしい。

 大の大人を支えることなど、不可能である。でも、何もしないわけにはいかない。

 頑張って腕をとって、持ち上げようとするも、重い。王族だから、痩せて細いか、太って重いか、と想像していたが、まさか、筋肉ムキムキの重い人が来るとは、予想外だった。


 神官長は、非力な私に向き合い、両ひざをついて、私に抱きついてきた。


「聖女様ー、胸がないー」

「あるわけないでしょう!!」

 おもいっきり、神官長の脳天に肘を降り下ろした。




 最低最悪な神官長は、初日から、教会の冷たい床で一夜を過ごすのだった。



 私を道連れにして。



 最悪だ。脳天に肘を降り下ろして、見事に意識を刈り取ったのだが、神官長は私を離してくれなかった。それどころか、私を押し倒し、そのまま寝てしまったのだ。

 不正腐敗がいっぱいだった教会には、誰も来ない。ついでに、孤児院の子どもたちも、来ない。

 頑張って、どうにか神官長の腕から抜け出そうとしたのだが、これがびくともしない。

 一体、どういう経緯で王族が神官長に降下したのかやら。

 酔っぱらってはいるが、顔立ちは良い。体全体は引き締まっている。腕とかに、古傷がいっぱいある。こういうのを名誉の勲章というらしい。


 そうして、諦めて、一晩を過ぎて、朝になると、面倒見のよい近所のおばさんが教会にやってきて、

「エリカ様になんてことするんだい!!」

 また、神官長は殴られたのだった。

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