私が王都のエリカ様に選ばれました
王都の孤児院はそこそこの孤児がいる。王都は人の出入りも激しいし、商売の競争も激しい。なので、落ちぶれて子どもを孤児院に、なんていうことはよくある話である。
そんな孤児院に私がいる理由は、なんと、エリカ様にするためである。
ある豪商が、エリカ様の血縁になるのは名誉なことじゃないか、なんて言って、子どもをぽんぽん作っては、孤児院にいれていた。もちろん、いっぱいお金も寄付した。
選定の年ではなかったら、孤児だった我が子を引き取っているが、寄付したお金は取り上げたりしなかった。
そうして、六人目の私がエリカ様に選ばれた。
これ、お金でエリカ様にしたんじゃないか、なんて言われるけど、とんでもない話である。エリカ様って、そういうのじゃない。
王都のエリカ様は、代々、短命だった。
私を次代のエリカ様に、て選んでくれたエリカ様は、とても若くに亡くなった。それだけ、エリカ様の世代交代は激しかった。
孤児院に子どもが残るのはなかなかない。赤ん坊でも、跡取りがいなかったり、跡取りの将来の相手に、とか、体のいい使いに、なんて理由で、すぐに引き取られた。
そのため、赤ん坊がなかなかいなかった。
とってもいい話に聞こえるけど、孤児院から引き取られる子たちの未来って、そんなにいいものではない。
そういうわけで、赤ん坊が私しかいなかったので、仕方なく、私がエリカ様に選ばれた。崇高なものなんてあったものじゃない。
エリカ様に選ばれると、教会横にあるちっぽけな小屋で一生過ごすことになる。先代エリカ様にエリカ様たる心得を教わり、一通りの家事も身に着けた。
先代エリカ様は、私が8歳の頃に亡くなってしまった。確か、30歳にいくかいかないか、とても若い身空である。
先代のエリカ様は、ほとんど表に出ることはなかった。孤児院に行くこともない。ひっそりと、小屋の中で過ごし、お勤めを果たして、私にだけ見守られて亡くなった。
とても寂しい最後だった。
私はエリカ様に選ばれたけど、豪商の両親は、私を見捨てたりなんかしない。足りないものは与えてくれて、教育も施してくれた。先代エリカ様のことをとても尊敬して、寄付寄贈いっぱいしてくれた。
そして、先代エリカ様の亡くなった姿を見て、真実を知ってしまい、泣いた。
「もう、こんなとこ、出よう!」
「ダメだよ。私、選ばれちゃったから。それより、このことは、絶対に言っちゃダメだよ。もし言ったら、王様に何されるかわからないから」
王都の聖域は、王家直轄である。エリカ様の役割は、たぶん、他の聖域とは違う。